ふと鏡を見たときに気になる、目の下のたるみ。「疲れているように見える」「老けて見える」といった悩みの種になりがちです。
なんとか自力でこのたるみを解消したいと考え、筋トレやマッサージを試そうとしている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、目の下のたるみがなぜできるのか、その原因から詳しく解説し、自力でできる改善方法として注目される筋トレやマッサージの具体的なやり方、そして期待できる効果と向き合うべき限界について、専門的な視点から丁寧にお伝えします。
あなたの悩みに寄り添い、正しい知識で若々しい目元を取り戻すための一歩をサポートします。
そもそも目の下のたるみは何が原因で起こるのか
目の下のたるみと一言でいっても、その原因は一つではありません。複数の要因が複雑に絡み合って、目元の印象を変化させます。
まずは、なぜたるみが発生するのか、その根本的な原因を理解することが、正しいケアへの第一歩となります。
加齢による皮膚と筋肉の衰え
目の下のたるみの最も大きな原因は、加齢による自然な変化です。私たちの肌のハリや弾力は、真皮層にあるコラーゲンやエラスチンといった成分によって支えられています。
しかし、年齢とともにこれらの成分は減少し、質も低下するため、皮膚は薄くなり、ハリを失います。
さらに、目の周りには「眼輪筋(がんりんきん)」というドーナツ状の筋肉があり、眼球を支えるクッションの役割を持つ「眼窩脂肪(がんかしぼう)」を正しい位置に保持しています。
この眼輪筋も加齢によって衰えると、眼窩脂肪を支えきれなくなり、前に押し出されてふくらみ(たるみ)となって現れます。
眼窩脂肪の突出と皮膚のゆるみ
若い頃は靭帯や筋肉が眼窩脂肪をしっかりと支えていますが、加齢でこれらがゆるむと、脂肪が前方にせり出してきます。これが、目の下の「ふくらみ」の正体です。
このふくらみによって影ができ、疲れた印象や老けた印象を与える「黒クマ」の原因にもなります。皮膚自体のハリが失われていると、このふくらみがさらに目立ちやすくなり、たるみとして認識されます。
生活習慣が招くコラーゲンの減少
紫外線ダメージも皮膚の老化を加速させる大きな要因です。紫外線は肌の奥深く、真皮層にまで到達し、コラーゲンやエラスチンを破壊します。
目の下の皮膚は特に薄くデリケートなため、紫外線の影響を受けやすい部位です。日々の紫外線対策を怠ると、肌の弾力が失われ、たるみが進行しやすくなります。
また、睡眠不足や栄養バランスの乱れ、喫煙なども、肌のターンオーバーを乱し、コラーゲン生成を妨げるため、たるみの間接的な原因となります。
たるみの主な原因比較
原因のタイプ | 特徴 | 主な対策 |
---|---|---|
加齢による衰え | 皮膚のハリ低下、眼輪筋の筋力低下 | エイジングケア、筋トレ |
脂肪の突出 | 目の下がふくらんで見える | 美容医療が有効な場合も |
生活習慣 | 紫外線、乾燥、血行不良 | 紫外線対策、保湿、生活改善 |
要注意!目の下のたるみを悪化させるNG習慣
良かれと思ってやっていることや、無意識の癖が、実は目の下のたるみを助長している可能性があります。
セルフケアの効果を最大限に引き出すためにも、まずはたるみを悪化させるNG習慣を見直すことが重要です。
PC・スマホの長時間利用と眼精疲労
パソコンやスマートフォンを長時間見続けると、まばたきの回数が減少し、目の周りの筋肉が緊張したままになります。これにより血行が悪化し、筋肉が凝り固まってしまいます。
血行不良は肌の新陳代謝を滞らせ、ハリを失う原因になるだけでなく、むくみやクマを悪化させ、たるみがより目立つ原因にもなります。定期的に休憩を取り、遠くを見るなどして目を休ませる意識が大切です。
目をこする・強くこするクレンジング
花粉症やアレルギーで目がかゆい時、無意識にゴシゴシとこすっていませんか。また、アイメイクを落とす際に、強い力でこすり洗いをするのも禁物です。
目の周りの皮膚は非常に薄く、ティッシュペーパー1枚程度の厚さしかありません。摩擦などの物理的な刺激は、皮膚を支えるコラーゲン線維にダメージを与え、皮膚を伸びさせてしまう原因になります。
クレンジングは専用のリムーバーを使い、優しくなじませて浮かせるように落としましょう。
うつ伏せ寝や高い枕の使用
うつ伏せで寝ると、顔の片側に長時間圧力がかかり、シワやたるみの原因になります。また、高すぎる枕は首の血行を妨げ、顔全体のむくみにつながることがあります。
むくみが慢性化すると、皮膚が伸びたたるみにつながる可能性も否定できません。自分に合った高さの枕を選び、できるだけ仰向けで寝ることを心がけると良いでしょう。
たるみにつながる日常の行動
NG習慣 | たるみへの影響 | 改善策 |
---|---|---|
目を強くこする | 皮膚への物理的ダメージ、色素沈着 | 優しく触れる、専用リムーバー使用 |
長時間のデジタル作業 | 眼精疲労、血行不良 | 定期的な休憩、目を温める |
うつ伏せ寝 | 顔への圧力、むくみ | 仰向けで寝る、適切な枕を選ぶ |
自力で改善を目指す!目の下の筋トレ(眼輪筋トレーニング)
目の周りを囲む「眼輪筋」は、意識的に鍛えることができる筋肉です。眼輪筋を鍛えることで、目の下の脂肪を支える力を高め、たるみの進行を緩やかにする効果が期待できます。
特別な道具は不要で、毎日のすきま時間に取り組めます。
眼輪筋を意識する基本のトレーニング
まず、眼輪筋がどこにあるのかを意識することが大切です。
目をぎゅっとつむった時に、目の周りで力が入る部分が眼輪筋です。この筋肉を動かすトレーニングをいくつか紹介します。
トレーニング1. 目の開閉運動
目をゆっくりと、できるだけ大きく見開きます。眉毛が上がらないように、おでこにシワが寄らないように注意しながら、目の力だけで開くのがポイントです。
その状態を5秒キープしたら、今度はゆっくりと目を閉じ、ぎゅっと力を入れて5秒キープします。これを5回ほど繰り返しましょう。
トレーニング2. 下まぶたの筋トレ
人差し指を目尻に、中指を目頭に軽く添えます。眩しいものを見るように下まぶたに力を入れて目を細め、指で皮膚が動くのを感じます。
この時、上まぶたには力を入れないように意識します。下まぶたの筋肉がぴくぴくと動くのを感じながら、10秒キープ。これを3セット行います。
下まぶたの筋肉を意識的に動かすことで、たるみを内側から引き締める効果を目指します。
トレーニングを行う頻度と注意点
眼輪筋トレーニングは、毎日継続することが重要です。1日にまとめて長時間行うよりも、朝晩のスキンケアの時など、時間を決めて短時間でも毎日続ける方が効果的です。
ただし、やりすぎは禁物です。力を入れすぎると、かえって目元のシワを深くしてしまう可能性があります。気持ちいいと感じる程度の強さで行い、痛みや違和感がある場合は中止してください。
眼輪筋トレーニングのメニュー例
トレーニング名 | 1回あたりの時間 | 推奨セット数 |
---|---|---|
目の開閉運動 | 10秒(開5秒、閉5秒) | 5回 |
下まぶたの筋トレ | 10秒 | 3セット |
眼球ストレッチ | 各方向5秒 | 上下左右 各2回 |
血行促進でハリを取り戻す!セルフマッサージ
目の周りの血行を促進することは、むくみやクマを改善し、肌に必要な栄養を届ける上で非常に大切です。優しいマッサージで血の巡りを良くし、すっきりとした目元を目指しましょう。
ただし、誤ったマッサージはたるみを悪化させるため、正しい方法で行うことが絶対条件です。
マッサージ前の準備と基本姿勢
マッサージを行う前には、必ずクリームやオイルを使い、指の滑りを良くしてください。乾いた肌を直接こすると摩擦が起きてしまい、逆効果です。
アイクリームや、肌への刺激が少ないホホバオイル、アルガンオイルなどがおすすめです。リラックスした状態で行うために、お風呂上がりなどの血行が良いタイミングが効果的です。
目の周りのツボを優しく刺激
強い力で揉むのではなく、ツボを優しく押して血行を促します。指の腹を使い、「痛気持ちいい」と感じる程度の力加減で行いましょう。
- 攅竹(さんちく)眉頭の内側にあるくぼみ
- 晴明(せいめい)目頭のやや内側にあるくぼみ
- 承泣(しょうきゅう)黒目の真下、骨の縁にあるくぼみ
- 太陽(たいよう)こめかみのくぼんだ部分
これらのツボを、息を吐きながらゆっくりと3秒ほど押し、息を吸いながらゆっくりと離します。これを数回繰り返します。
リンパの流れを意識したマッサージ法
老廃物を流すリンパマッサージも効果的です。目頭から目の下を通り、目尻、こめかみへと、ごくごく優しい力で指を滑らせます。絶対に皮膚を引っ張らないように注意してください。
最後にこめかみから耳の前を通り、首筋、鎖骨へとリンパを流すイメージで指を移動させます。これを左右3回ずつ行います。
マッサージ用オイル・クリームの選び方
種類 | 特徴 | ポイント |
---|---|---|
アイクリーム | 目元専用で保湿・ハリ成分配合が多い | 自分の肌悩みに合ったものを選ぶ |
植物性オイル | 肌なじみが良く、滑りが持続しやすい | 酸化しにくいホホバオイルなどがおすすめ |
乳液・クリーム | 手持ちのものが使えるが、乾きやすい | 途中で付け足しながら行う |
筋トレとマッサージの効果を高める生活習慣
筋トレやマッサージといった外側からのアプローチと並行して、内側からのケア、つまり生活習慣の見直しを行うことで、相乗効果が期待できます。
健康な体と肌は、若々しい目元を作る土台となります。
バランスの取れた食事と摂取したい栄養素
肌を作る基本は食事です。特に、タンパク質、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは、健やかな肌を保つために積極的に摂取したい栄養素です。
タンパク質は肌の材料となり、ビタミン類はコラーゲンの生成を助けたり、抗酸化作用で肌の老化を防いだりする働きがあります。
たるみ改善に役立つ栄養素
栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 肌や筋肉の材料になる | 肉、魚、卵、大豆製品 |
ビタミンC | コラーゲンの生成を助ける | パプリカ、ブロッコリー、柑橘類 |
ビタミンA | 皮膚や粘膜の健康を維持する | レバー、うなぎ、緑黄色野菜 |
質の良い睡眠で成長ホルモンを分泌
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、日中に受けた肌ダメージの修復や、細胞の新陳代謝を促します。特に、眠り始めの深い眠りの間に最も多く分泌されるため、睡眠の「質」が重要です。
寝る前にスマートフォンを見るのをやめる、リラックスできる音楽を聴くなど、質の良い睡眠をとるための工夫を取り入れましょう。
紫外線対策と保湿ケアの徹底
たるみケアにおいて、紫外線対策と保湿は基本中の基本です。
紫外線は季節や天候に関わらず一年中降り注いでいます。日焼け止めやUVカット機能のある下地、サングラスなどを活用し、日常的に紫外線を防ぐ習慣をつけましょう。
また、肌が乾燥するとバリア機能が低下し、あらゆる肌トラブルの原因になります。セラミドやヒアルロン酸などが配合された保湿化粧品で、目の周りを優しく丁寧に保湿し、うるおいを保つことが大切です。
自力ケアの限界と知っておくべき注意点
筋トレやマッサージは、たるみの予防や進行を緩やかにする効果、むくみや血行不良による一時的な悩みの改善には有効です。しかし、自力でのケアには限界があることも理解しておく必要があります。
過度な期待は、間違ったケアや精神的なストレスにつながりかねません。
骨格や遺伝によるたるみは改善が難しい
生まれつきの骨格によって、目の下の脂肪が目立ちやすい人や、頬の骨が低いことでたるんで見えやすい人もいます。このような構造的な問題は、筋トレやマッサージだけで根本的に解決することは困難です。
遺伝的な要因も関わるため、セルフケアで変化が見えにくい場合もあります。
すでに突出してしまった脂肪はなくならない
一度、眼輪筋の衰えなどによって前に押し出されてしまった眼窩脂肪を、筋トレやマッサージで元の位置に戻したり、なくしたりすることはできません。
セルフケアはあくまで「筋肉を鍛えてこれ以上脂肪が出にくくする」「血行を良くしてむくみを取る」といった対症療法的なアプローチであり、たるみの根本原因である脂肪そのものを取り除くものではないことを認識しておくことが重要です。
間違ったケアはシワやたるみを悪化させる
最も注意したいのが、間違ったケアによる症状の悪化です。
力を入れすぎたマッサージや、皮膚を強く引っ張るようなトレーニングは、薄い目の下の皮膚にダメージを与え、かえってたるみやシワを深刻化させるリスクがあります。
効果を焦るあまり自己流の強いケアを行うことは絶対に避けましょう。
セルフケアと美容医療の比較
比較項目 | セルフケア | 美容医療 |
---|---|---|
アプローチ | 血行促進、筋力維持(予防・現状維持) | 原因の根本的除去(改善・治療) |
即効性 | ほとんどない(継続が必要) | 施術によっては高い効果を実感 |
費用 | 低い | 高い |
セルフケアで改善しない場合は美容医療も選択肢に
セルフケアを続けても一向に改善が見られない、あるいは根本的にたるみを解消したいと考えるなら、美容医療に頼るのも一つの有効な選択肢です。
専門のクリニックでは、医師がたるみの原因を正確に診断し、一人ひとりに合った治療法を提案してくれます。
クリニックでの主な治療法
目の下のたるみ治療には、様々な方法があります。原因や症状の程度によって適した施術が異なります。
- 脱脂術(経結膜脱脂法)
- ヒアルロン酸注入
- レーザー治療(HIFUなど)
- 脂肪注入
例えば「経結膜脱脂法」は、下まぶたの裏側から余分な眼窩脂肪を取り除く手術で、たるみの原因であるふくらみを根本から解消する方法です。皮膚表面に傷が残らないのが特徴です。
また、たるみによってできた凹みにヒアルロン酸を注入し、段差を滑らかにする方法もあります。
まずは専門医へのカウンセリングから
どの治療法が自分に合っているのかは、自己判断できません。まずは信頼できるクリニックで専門の医師によるカウンセリングを受けることが大切です。
カウンセリングでは、自分の悩みを詳しく伝え、治療法のメリットだけでなく、デメリットやリスク、費用についてもしっかりと説明を受けましょう。
その上で、納得して治療に進むかどうかを判断することが重要です。
クリニック選びで後悔しないために
クリニックを選ぶ際は、価格の安さだけで決めず、医師の実績や経験、カウンセリングの丁寧さ、アフターケアの体制などを総合的に見て判断しましょう。
複数のクリニックでカウンセリングを受けて比較検討することも、後悔しないための良い方法です。
目の下のたるみに関するよくある質問
最後に、目の下のたるみに関する自力ケアについて、多くの方が抱く疑問にお答えします。正しい知識で、効果的なケアを続けましょう。
- 筋トレやマッサージはどれくらいで効果が出ますか?
-
筋トレやマッサージの効果の現れ方には個人差が大きく、一概に「これくらい」とは言えません。
これらは即効性のあるものではなく、あくまでも現状維持や将来のたるみ予防、むくみの改善を目的として、数ヶ月から年単位でコツコツと続けるものです。
まずは3ヶ月を目安に、変化があるかどうかを観察してみましょう。
- アイクリームを塗るだけでたるみは改善しますか?
-
高機能なアイクリームは、保湿によって乾燥小じわを目立たなくしたり、ハリを与える成分によって肌に弾力感を与えたりする効果が期待できます。
これにより、たるみが浅く見えることはありますが、クリームだけで眼窩脂肪の突出や筋肉の衰えといった根本原因を解消することはできません。
筋トレや生活習慣の改善と組み合わせることで、より高い効果を実感しやすくなります。
- 一度できてしまったたるみを完全になくすことはできますか
-
残念ながら、セルフケアだけで一度顕著になったたるみ(特に脂肪の突出が原因のもの)を完全になくすことは極めて困難です。
セルフケアの役割は、たるみの進行を遅らせ、血行不良やむくみなど、改善可能な要因にアプローチすることです。
根本的な解決を目指す場合は、前述したような美容医療が現実的な選択肢となります。自分の目指すゴールと、セルフケアで可能な範囲を正しく理解し、上手に付き合っていくことが大切です。
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