口元の両脇に深く刻まれるほうれい線は、見た目年齢を大きく左右する悩みのひとつです。
このほうれい線を目立たなくさせる治療として、ヒアルロン酸注入が多くの方に選ばれています。メスを使わずに、短時間で変化を実感しやすい手軽さが魅力です。
この記事では、ほうれい線に対するヒアルロン酸注入の効果や持続期間、気になる費用やダウンタイム、考えられるリスクまで詳しく解説します。
ほうれい線が目立つ主な原因とは?
ほうれい線は単なる「シワ」ではなく、頬の構造的な変化によってできる「溝」です。
その原因は一つではなく、複数の要因が絡み合って年齢とともに目立つようになります。
加齢による肌のたるみ
肌のハリや弾力を支えるコラーゲンやエラスチンは年齢とともに減少し、質も変化します。
これによって皮膚の土台が緩み、重力に負けて頬全体が下がる「たるみ」が生じます。
このたるんだ頬の脂肪が、ほうれい線の上にかぶさることで溝が深くなります。
骨格の構造と変化
加齢は皮膚だけでなく、顔の骨にも影響を与えます。
特に頬骨や上顎の骨が痩せてくると、その上の皮膚や脂肪を支えきれなくなり、ほうれい線部分がへこんでしまいます。
若い方でも、もともとの骨格によってはほうれい線が目立ちやすい場合があります。
ほうれい線を目立たせる要因
要因 | 主な変化 | ほうれい線への影響 |
---|---|---|
皮膚 | コラーゲン・エラスチンの減少 | ハリ・弾力が失われ、たるむ |
脂肪 | 脂肪の増減・下垂 | 頬が下がり、溝が深くなる |
骨格 | 骨の萎縮 | 土台が痩せ、皮膚がへこむ |
乾燥や紫外線によるダメージ
肌が乾燥すると、表面のキメが乱れて細かいシワ(ちりめんジワ)ができやすくなります。
これがほうれい線とつながると、より深く見えてしまうケースがあります。
また、長年にわたって紫外線を浴び続けるとコラーゲンやエラスチンが破壊され、肌の老化が加速します。
この「光老化」は、たるみを引き起こす大きな原因のひとつです。
生活習慣の影響
急激なダイエットによる体重の増減は、皮膚が変化に対応できずにたるみの原因となります。
また、頬杖をつく癖や、片側ばかりで物を噛む習慣、うつ伏せで寝る姿勢なども顔に不均一な圧力をかけ続け、ほうれい線を深くする一因と考えられています。
ほうれい線治療におけるヒアルロン酸注入の役割
数あるほうれい線治療の中で、ヒアルロン酸注入は非常に重要な選択肢です。
その役割は、単に溝を埋めるだけではありません。肌の内側から若々しい印象を取り戻すための働きをします。
へこんだ部分を内側から持ち上げる
ヒアルロン酸注入の最も直接的な役割は、皮膚の下に注入して、へこんだ部分や溝を物理的に持ち上げることです。
ほうれい線の溝に沿って適切に注入すると、皮膚が内側から押し上げられ、線が浅く目立たなくなります。
地面のくぼみを土で埋めるようなイメージを持つと分かりやすいでしょう。
肌の保水力を高める
ヒアルロン酸は、1グラムで約6リットルもの水分を保持する高い保水力を持つ物質です。
注入されたヒアルロン酸は周辺の水分を引き寄せて保持するため、注入部位の肌がみずみずしくなり、ハリや潤いが向上します。
この保湿効果により、乾燥による小ジワの改善も期待できます。
ヒアルロン酸の主な働き
働き | 内容 |
---|---|
ボリュームアップ | 物理的に皮膚を持ち上げ、溝を浅くする |
保水力向上 | 周辺の水分を保持し、肌に潤いとハリを与える |
コラーゲン生成を促す可能性
ヒアルロン酸を注入した際の物理的な刺激が、線維芽細胞を活性化させ、自身のコラーゲン生成を促す可能性があるという研究報告もあります。
長期的に見ると、注入による直接的な効果だけでなく、肌質の改善にもつながることが期待されます。
ヒアルロン酸注入の具体的な効果と持続期間
ヒアルロン酸注入を検討する上で、どのくらいの効果がどのくらいの期間続くのかは最も気になる点でしょう。
ここでは、効果の発現時期と持続性について解説します。
施術直後から実感できる変化
ヒアルロン酸注入の大きなメリットは、施術直後からほうれい線が浅くなったのを実感できる点です。
注入されたヒアルロン酸がすぐに皮膚を持ち上げるため、鏡を見てその変化を確認できます。
この即時性の高さが、多くの方に選ばれる理由のひとつです。
効果の持続期間と個人差
効果の持続期間は、使用するヒアルロン酸製剤の種類や注入量、注入部位、そして個人の体質(代謝の速さなど)によって異なります。
一般的には6ヶ月から2年程度持続しますが、初めての注入よりも繰り返し注入するほうが持続期間が長くなる傾向があります。
持続期間に影響する要素
要素 | 説明 |
---|---|
製剤の種類 | 硬さや架橋技術により、吸収速度が異なる |
注入部位・量 | よく動かす部位は吸収が早い傾向がある |
個人の体質 | 代謝が活発な方は、吸収が早い場合がある |
繰り返し注入するメリット
ヒアルロン酸は時間とともに体内に吸収されますが、効果が完全になくなる前に再度注入を行うと、より良い状態を維持しやすくなります。
また、先述の通りコラーゲン生成が促されるため、注入を繰り返すごとに肌の土台そのものがしっかりしてくる効果も期待できます。
ほうれい線ヒアルロン酸治療を成功させる「深さ」と「硬さ」の秘密
「ほうれい線にヒアルロン酸をたくさん入れれば消える」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、ほうれい線治療の満足度は、単なる注入量だけで決まるわけではありません。
むしろ、「どの深さに」「どの硬さの」ヒアルロン酸を注入するかという、医師の技術と判断が仕上がりを大きく左右します。
この点を理解することが、自然で美しい結果を得るための鍵です。
なぜ「注入する深さ」が重要なのか
ほうれい線の原因は皮膚表面のシワだけでなく、その下の脂肪や骨格のへこみなど、複数の層にわたります。
そのため、原因に応じて注入する深さ(層)を変える必要があります。
例えば、皮膚の浅い層にできた細かいシワには柔らかいヒアルロン酸を浅く、骨の萎縮による深いへこみには硬いヒアルロン酸を骨のすぐ上に深く注入するなど、立体的なアプローチが大切です。
この見極めが不正確だと表面が凸凹したり、不自然な膨らみになったりします。
ヒアルロン酸の「硬さ」選びが仕上がりを左右する
ヒアルロン酸製剤には、非常に柔らかいものから、形をしっかり保つ硬いものまで様々な種類があります。
この「硬さ」の選択も極めて重要です。
ヒアルロン酸製剤の硬さ別用途
製剤の硬さ | 主な注入層 | 適した用途 |
---|---|---|
柔らかい | 皮膚の浅い層 | 表面の細かいシワ、肌の潤いアップ |
中程度 | 皮下脂肪層 | 中程度の深さのほうれい線 |
硬い | 骨膜上(深い層) | 骨のへこみを補い、土台からリフトアップ |
自分に合った製剤選びのポイント
適した製剤は、ほうれい線の状態や原因、そして目指す仕上がりによって決まります。
ただ、製剤選びは患者さん自身では難しいものです。
カウンセリングの際に医師が顔をしっかり診察し、どの層にどの製剤を使うかという治療計画を丁寧に説明してくれるかどうかが、信頼できるクリニックを見分けるポイントです。
経験豊富な医師選びの重要性
注入する「深さ」と「硬さ」を的確に判断し、顔の解剖学を熟知した上で安全に注入するには、医師の豊富な経験と技術が必要です。
価格の安さだけで選ぶのではなく、医師の経歴や症例実績などを確認して安心して任せられる医師を選ぶのが、ほうれい線治療を成功させる上で最も重要です。
ヒアルロン酸注入のダウンタイムと過ごし方
ヒアルロン酸注入はダウンタイムが比較的短い治療ですが、いくつかの症状が現れる場合があります。
施術後の適切な過ごし方を知っておくと、回復を早められて、より良い結果につながります。
ダウンタイムの主な症状
注入部位に、以下のような症状が出るときがあります。
症状 | 主な原因 | 持続期間の目安 |
---|---|---|
赤み・腫れ | 注入による炎症反応 | 2~3日 |
内出血 | 注射針が血管に触れたため | 1~2週間 |
痛み・違和感 | 注入による圧迫や知覚神経への刺激 | 数日 |
このような症状は通常、数日から1週間程度で自然に落ち着きます。
施術後の注意点
ダウンタイムを長引かせず、きれいに仕上げるために、施術後しばらくは以下の点に注意してください。
- 激しい運動
- 長時間の入浴やサウナ
- 過度な飲酒
- 注入部位の強いマッサージ
これらの行為は血行を促進し、腫れや内出血を悪化させる可能性があるため、施術当日から数日間は控えるのを推奨します。
いつから通常の生活に戻れるか
多くの場合、施術当日からメイクをして帰宅できます。内出血が出た場合も、コンシーラーでカバーできる程度です。
デスクワークなどの日常生活に大きな支障はありませんが、大切な予定がある場合は1〜2週間ほどの余裕を持っておくと安心です。
ほうれい線へのヒアルロン酸注入|費用の目安
ヒアルロン酸注入の費用は、自由診療のためクリニックによって異なります。また、注入量や使用する製剤によっても変動します。
注入量による費用の変動
費用は、ヒアルロン酸1本(通常1.0cc)あたりの価格で設定しているクリニックが多く、ほうれい線の深さや範囲に応じて必要な注入量が変わります。
一般的に、両側のほうれい線で1〜2cc程度を使用するケースが多いです。
注入量と費用の目安
注入量(両側) | 一般的な費用相場 | 適応の目安 |
---|---|---|
1.0cc | 6万円~10万円 | 浅めのほうれい線、初めての方 |
2.0cc | 12万円~20万円 | 中程度~深めのほうれい線 |
上記はあくまで目安であり、実際の費用はクリニックの料金設定によります。
製剤の種類と価格の関係
ヒアルロン酸製剤には厚生労働省の承認を受けたものや、海外で広く使用されているものなど、様々な種類があります。
一般的に持続期間が長い製剤や、特殊な技術で作られた製剤は価格が高くなる傾向があります。
安全性や効果の持続性を考慮して、医師と相談の上で製剤を選びましょう。
クリニック選びと費用
費用だけでクリニックを選ぶのは推奨しません。安価な料金設定の場合、経験の浅い医師が担当したり、質の低い製剤を使用したりする可能性も考えられます。
カウンセリングで費用に関する説明が明確か、施術を担当する医師の技術力は確かかなど、総合的に判断することが重要です。
ヒアルロン酸注入のリスクと副作用
ヒアルロン酸注入は比較的安全性の高い治療ですが、医療行為である以上、リスクや副作用の可能性はゼロではありません。
事前に正しく理解し、納得した上で治療を受けましょう。
一般的な副作用
ダウンタイム中の症状(赤み、腫れ、内出血、痛み)は、ほとんどの場合一時的なものです。
その他、触ったときにしこりのように感じたり、左右差が生じたりするケースがありますが、多くは時間とともになじんでいきます。
まれに起こる重篤なリスク
頻度は非常にまれですが、注意すべきリスクとして以下のものがあります。
ヒアルロン酸注入の主なリスク・副作用
リスク・副作用 | 内容 | 主な対策・対応 |
---|---|---|
アレルギー反応 | 赤み、腫れ、かゆみなどが強く出る | ヒアルロン酸分解酵素で溶かす、抗アレルギー薬の投与 |
感染 | 注入部位が熱を持ち、赤く腫れて痛む | 抗生物質の投与 |
血管閉塞 | 注入物が血管に詰まり、血流が途絶える | 緊急の対応が必要。ヒアルロン酸分解酵素での溶解など |
安全な治療を受けるための注意点
重篤なリスクを避けるためには、顔の解剖学を熟知し、万が一の事態にも迅速に対応できる経験豊富な医師のもとで治療を受けるのが何よりも重要です。
ヒアルロン酸を注入するだけで簡単そうに思えるかもしれませんが、リスクを回避するためには知識と技術が必要です。
クリニックを選ぶ際には、緊急時の対応体制についても確認しておくと良いでしょう。
ヒアルロン酸注入が向いている人と他の治療法との比較
ほうれい線治療には、ヒアルロン酸注入以外にも様々な選択肢があります。
ご自身のほうれい線の状態や、求める効果によって適した治療法が異なります。
ヒアルロン酸注入がおすすめな方
以下のような方には、ヒアルロン酸注入が向いています。
- ほうれい線の溝(へこみ)が主たる悩みの方
- メスを使う治療には抵抗がある方
- ダウンタイムを短く済ませたい方
- 施術後すぐに効果を実感したい方
糸リフト(スレッドリフト)との違い
糸リフトは、コグ(とげ)の付いた糸を皮下に挿入し、たるんだ組織を物理的に引き上げる治療です。
頬全体のたるみが強く、ほうれい線が目立つ場合に有効です。
- たるみを強力に引き上げたい方
- フェイスラインのもたつきも改善したい方
HIFU(ハイフ)との違い
HIFUは、高密度の超音波をSMAS(筋膜)に照射し、熱エネルギーで組織を引き締める治療です。
たるみの予防や、初期段階のたるみに効果を発揮します。
- 将来のたるみを予防したい方
- 肌全体の引き締め効果を求める方
- ダウンタイムがほぼない治療を希望する方
どの治療法を選ぶべきか
ほうれい線の原因は複合的であるため、これらの治療を組み合わせると、より効果が実感できるケースも多くあります。
例えば、HIFUや糸リフトでたるみを引き締めた上で、残った溝にヒアルロン酸を少量注入すると非常に自然で美しい仕上がりになります。
まずは専門の医師によるカウンセリングで、ご自身の状態に合った治療計画を相談すると良いでしょう。
ほうれい線治療法の比較
治療法 | 主な効果 | 適した悩み |
---|---|---|
ヒアルロン酸注入 | 溝を埋める(ボリュームアップ) | ほうれい線のへこみ・シワ |
糸リフト | 組織を引き上げる(リフトアップ) | 頬全体のたるみ |
HIFU(ハイフ) | 組織を引き締める(タイトニング) | たるみ予防・軽度のたるみ |
ほうれい線のヒアルロン酸注入に関するよくある質問
年齢とともに気になってくるほうれい線を鏡を見る度に落ち込んでしまう方もいらっしゃいます。
多くの方が経験する変化ではありますが、「仕方ない」と諦める必要はなく、ヒアルロン酸を注入すると改善効果が期待できます。
無料でカウンセリングを行うクリニックも多いので、気になる方はいちど相談してみるのがおすすめです。
- 痛みはありますか?
-
注射針を刺す際にチクッとした痛みを感じます。痛みを軽減するため、多くのクリニックでは麻酔クリームや冷却、極細の注射針を使用します。
また、ヒアルロン酸製剤自体に麻酔成分が含まれているものもあり、注入中の痛みは緩和されます。
痛みの感じ方には個人差がありますが、ほとんどの方が我慢できる程度の痛みです。
- 注入後、不自然な顔になりませんか?
-
経験豊富な医師が、適切な量と種類のヒアルロン酸を適切な深さに注入すれば、不自然な仕上がりになるケースはほとんどありません。
顔全体のバランスを見ながら、自然な変化を目指すのが重要です。カウンセリングで仕上がりのイメージを医師としっかり共有すると、満足のいく結果につながります。
- ヒアルロン酸は体に吸収されても安全ですか?
-
治療に使用されるヒアルロン酸は、もともと体内に存在する成分を基に作られています。そのため、アレルギー反応を起こしにくく、安全性の高い物質です。
注入されたヒアルロン酸は時間とともにゆっくりと分解・吸収されて体外に排出されるため、体内に異物として永久に残ることはありません。
- 施術当日にメイクはできますか?
-
施術当日からメイクが可能です。ただし、注入部位の針穴は非常に小さいですが傷口ですので、強くこすったりせず、清潔な手や道具で優しくメイクをしてください。
クレンジングの際も同様に、注入部位を強く刺激しないよう注意が必要です。
参考文献
JOO, Hong Jin, et al. A randomized clinical trial to evaluate the efficacy and safety of lidocaine-containing monophasic hyaluronic acid filler for nasolabial folds. Plastic and Reconstructive Surgery, 2016, 137.3: 799-808.
RHEE, Do Young, et al. Efficacy and safety of a new monophasic hyaluronic acid filler in the correction of nasolabial folds: a randomized, evaluator-blinded, split-face study. Journal of dermatological treatment, 2014, 25.5: 448-452.
CHEON, Hye In, et al. Efficacy and safety of a new hyaluronic acid filler for nasolabial folds: A 52‐week, multicenter, randomized, evaluator/subject‐blind, split‐face study. Journal of Cosmetic Dermatology, 2021, 20.5: 1467-1473.
LIU, Huasheng, et al. Efficacy and safety of hyaluronic acid fillers with or without lidocaine in the treatment of nasolabial folds: an updated systematic review and meta-analysis. Aesthetic Plastic Surgery, 2024, 48.21: 4466-4484.
DAI, Xia, et al. Safety and effectiveness of hyaluronic acid dermal filler in correction of moderate-to-severe nasolabial folds in Chinese subjects. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 2019, 57-62.
CHUNG, Changho; LEE, Jong Hun. A single-center, randomized, double-blind clinical trial to compare the efficacy and safety of a new monophasic hyaluronic acid filler and biphasic filler in correcting nasolabial fold. Aesthetic plastic surgery, 2021, 1-7.
HONG, Ji Yeon, et al. Randomized, patient/evaluator-blinded, intraindividual comparison study to evaluate the efficacy and safety of a novel hyaluronic acid dermal filler in the treatment of nasolabial folds. Dermatologic Surgery, 2018, 44.4: 542-548.
LI, Xing-Zhou, et al. Safety and efficacy of hyaluronic acid injectable filler in the treatment of nasolabial fold wrinkle: a randomized, double-blind, self-controlled clinical trial. Journal of Dermatological treatment, 2023, 34.1: 2190829.