鏡や窓に映った自分の横顔を見て、「なんだかフェイスラインがぼやけている」「顎と首の境目がはっきりしない」と感じた経験のある方もいるのではないでしょうか。
正面からは気づきにくい横顔の印象は、年齢を感じさせやすい部分です。特に、鼻先・唇・顎先を結んだ「Eライン」が崩れると、全体的に締まりのない印象を与えてしまいます。
この記事では、横顔のフェイスラインがなくなる原因を掘り下げ、美しいEラインを取り戻すためのセルフケア、そして美容皮膚科で受けられる効果的な治療法まで詳しく解説します。
横顔の印象を決める「Eライン」とは?
横顔の美しさを評価する際に、一つの指標となるのが「Eライン」です。このラインが整っているかどうかで、顔全体のバランスや印象が大きく変わります。
Eラインの基本的な定義
Eラインは「エステティックライン(Esthetic Line)」の略称で、横顔の鼻先と顎の先端を直線で結んだラインです。
このラインの内側に唇が収まっている、あるいはライン上に唇の先が軽く触れる程度が、理想的なバランスとされています。
日本人の平均的なEライン
欧米人と比較して鼻が低く、顎が小さい傾向にある日本人の場合、Eライン上に唇が位置する方が多いです。
必ずしも「ラインの内側に唇がなければならない」というわけではなく、全体のバランスが取れていることが重要です。
Eラインのバランス簡易評価
評価 | 唇の位置 | 一般的な印象 |
---|---|---|
理想的 | ライン上、またはわずかに内側 | 知的で洗練された印象 |
ラインより突出 | ラインを越えて前に出ている | 口元が前に出ている印象 |
ラインより内側 | ラインよりもかなり内側にある | 口元が下がっている印象 |
Eラインが崩れるとどう見えるか
フェイスラインのたるみによって顎のラインが不鮮明になると、Eラインの終点である顎先が曖昧になります。
その結果、Eラインそのものが形成しにくくなり、顔が大きく見えたり老けた印象を与えたりします。二重顎も、このEラインの崩れを助長する大きな要因です。
セルフチェックで自分のEラインを確認する方法
定規や指を使って、簡単に自分のEラインを確認できます。人差し指を鼻先と顎先に当てて、まっすぐなラインを作ります。その際に、唇が指にどの程度触れるかを見てみましょう。
強く押し付けられる感覚があれば、口元が出ている可能性があります。逆に、全く触れない場合は、フェイスラインがたるんでいるサインかもしれません。
なぜフェイスラインはたるむのか?横顔のたるみの原因
フェイスラインのたるみは加齢による肌の弾力低下が主な原因ですが、紫外線、表情筋の衰え、生活習慣の乱れといった複数の要因が重なって起こります。
加齢によるコラーゲン・エラスチンの減少
肌のハリや弾力を支えているのは、真皮層に存在するコラーゲンやエラスチンといった成分です。
これらは年齢とともに生成量が減少し、質も低下します。肌の土台が弱くなるため重力に負けて皮膚が下がり、たるみとして現れます。
特に皮膚の薄いフェイスラインは影響を受けやすい部分です。
紫外線が肌の弾力に与える影響
紫外線のなかでもUVA(紫外線A波)は肌の奥深く、真皮層まで到達します。そして、ハリを保つために重要なコラーゲンやエラスチンを破壊したり、変性させたりします(光老化)。
日常的に紫外線を浴び続けると、加齢によるたるみをさらに加速させる大きな原因となります。
たるみを引き起こす主な要因
要因 | 主な作用 | 肌への結果 |
---|---|---|
加齢 | コラーゲン・エラスチンの生成減少 | ハリ・弾力の低下 |
紫外線 | コラーゲン・エラスチンの破壊・変性 | 弾力線維の質の低下 |
筋力低下 | 表情筋や深層筋の衰え | 皮膚や脂肪を支えきれない |
筋力の低下と表情筋の衰え
顔には多くの「表情筋」があり、皮膚や脂肪を支える役割を担っています。しかし、普段の生活で使われる表情筋は全体の3割程度とも言われ、意識して動かさないと衰えやすいのです。
また、顔のさらに深層にある筋肉(深層筋)が衰えることも、たるみの根本的な原因になります。
生活習慣の乱れがたるみを加速させる
睡眠不足や栄養バランスの偏り、喫煙や過度なストレスなどは肌のターンオーバーを乱し、血行を悪化させます。
血行が悪くなると肌に必要な栄養素が行き渡りにくくなり、コラーゲンの生成も妨げられます。結果として肌の老化が進み、たるみやすい状態を作ってしまいます。
その習慣、大丈夫?フェイスラインを崩す意外な落とし穴
たるみの原因は加齢や紫外線だけではありません。スマートフォン操作中のうつむき姿勢や食いしばり、偏った咀嚼癖など、普段の何気ない習慣によっても引き起こされます。
自分に当てはまるものがないか、一度見直してみましょう。
スマートフォン操作中のうつむき姿勢
長時間スマートフォンを操作する際、多くの人が頭を下げたうつむき姿勢になります。この姿勢は、首の前面にある広頸筋(こうけいきん)を縮こまらせ、顎下の皮膚をたるませる原因になります。
また、重い頭を支えるために首や肩に負担がかかり、血行不良を引き起こして顔のむくみやたるみにつながる場合もあります。
食いしばりや歯ぎしりによる影響
日中無意識に行っている食いしばりや、就寝中の歯ぎしりは、顎周りの筋肉(咬筋)を過度に緊張させます。
この咬筋が発達しすぎるとエラが張ったように見え、フェイスラインが横に広がってしまいます。
さらに、緊張状態が続くため血行が悪くなり、肌のハリが失われ、たるみを助長するのです。
フェイスラインに影響する生活習慣チェック
習慣 | 主な影響部位 | 引き起こされる問題 |
---|---|---|
長時間のスマホ操作 | 首、顎下 | 二重顎、首のシワ |
食いしばり・歯ぎしり | 咬筋(エラ) | エラの張り、フェイスラインのたるみ |
片側での咀嚼 | 顔の片側の筋肉 | 顔の歪み、ほうれい線 |
片側だけで噛む癖の危険性
食事の際にいつも同じ側で噛む癖があると片側の筋肉ばかりが使われ、もう片方の筋肉は衰えていきます。そのために顔の左右のバランスが崩れ、歪みが生じます。
使われない側の頬はたるみやすくなり、ほうれい線が深くなるなど、フェイスラインの非対称性を招く原因となります。
睡眠時の姿勢と枕の高さ
高すぎる枕を使用していると首が不自然に曲がり、顎下の皮膚が圧迫されてたるみや二重顎の原因になります。
また、毎日同じ方向を向いて横向きで寝る癖も、下になっている側の顔に圧力がかかり続け、シワやたるみにつながるケースがあります。
自分に合った高さの枕を選び、時々寝る向きを変える意識が大切です。
自宅でできるフェイスラインのセルフケア
美容医療に頼る前に、まずは日々の生活の中でできるケアから始めてみましょう。
継続すると、たるみの進行を緩やかにし、フェイスラインをすっきりと見せる助けになります。
表情筋を鍛えるエクササイズ
普段使わない表情筋を意識的に動かすと、筋力の低下を防ぎ、リフトアップ効果を期待できます。
「あ・い・う・え・お」と口を大きく動かす、舌を上顎につけたまま口を大きく開け閉めする、などの簡単なエクササイズを毎日数分間続けると良いです。
- 口角を上げる運動
- 舌回し運動
- 頬を膨らませる運動
正しい姿勢を意識した生活
特にデスクワークやスマホ操作中は背筋を伸ばし、顎を軽く引く姿勢を心がけましょう。猫背やうつむき姿勢は、フェイスラインのたるみを直接的に引き起こします。
定期的に立ち上がってストレッチをするなど、同じ姿勢を続けない工夫も大切です。
スキンケアによるハリの維持
日々のスキンケアでは、保湿を徹底するのが基本です。肌が乾燥するとバリア機能が低下し、ハリが失われやすくなります。
レチノールやビタミンC誘導体、ナイアシンアミドなど、コラーゲンの生成をサポートする成分が配合された化粧品を取り入れるのも良いでしょう。
バランスの取れた食事と栄養素
美しい肌は体の内側から作られます。肌の細胞の元となるタンパク質や、コラーゲンの生成を助けるビタミンC、抗酸化作用のあるビタミンEなどをバランス良く摂取する工夫が大切です。
特定の食品に偏らず、多様な食材から栄養を摂るように意識しましょう。
ハリのある肌を目指すための栄養素
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 肌や筋肉の材料になる | 肉、魚、卵、大豆製品 |
ビタミンC | コラーゲンの生成を助ける | パプリカ、ブロッコリー、果物 |
ビタミンA | 肌のターンオーバーを整える | レバー、うなぎ、緑黄色野菜 |
美容皮膚科でできるフェイスラインのたるみ治療
セルフケアだけでは改善が難しいと感じる場合や、より確実な効果を求める場合には、美容皮膚科での治療が有効な選択肢となります。
HIFU(ハイフ)や糸リフト、ヒアルロン酸注入など、たるみの原因や状態に合わせて様々な働きかけが可能です。
HIFU(ハイフ)によるリフトアップ
HIFUは、高密度の超音波エネルギーを皮膚の深層にあるSMAS筋膜(表情筋膜)にピンポイントで照射する治療です。
熱エネルギーによってSMAS筋膜が収縮し、根本からたるみを引き上げます。メスを使わずにリフトアップ効果を得られるため、人気の高い治療法の一つです。
HIFUと糸リフトの主な違い
項目 | HIFU(ハイフ) | 糸リフト |
---|---|---|
アプローチ | 超音波でSMAS筋膜を引き締める | 糸で物理的に皮膚を引き上げる |
ダウンタイム | ほとんどない | 数日〜1週間程度の腫れや内出血 |
効果の現れ方 | 直後から実感し、1〜3ヶ月で最大化 | 直後から高いリフトアップ効果 |
糸リフト(スレッドリフト)の特徴
医療用の溶ける糸を皮下に挿入し、たるんだ皮膚を物理的に引き上げる治療法です。コグと呼ばれるトゲのついた糸が皮下組織にしっかりと引っかかり、強力なリフトアップ効果を発揮します。
また、糸が挿入された刺激で周囲のコラーゲン生成が促進され、肌のハリ感アップも期待できます。
ヒアルロン酸注入による輪郭形成
ヒアルロン酸は、もともと体内に存在する保湿成分です。これを顎先やフェイスラインに注入して輪郭をシャープに整え、美しいEラインを形成します。
たるみによって失われたボリュームを補い、若々しい印象を取り戻せます。比較的短時間で終わり、効果をすぐに実感しやすいのが特徴です。
ヒアルロン酸注入と高周波治療の比較
項目 | ヒアルロン酸注入 | 高周波(RF)治療 |
---|---|---|
目的 | ボリュームを補い輪郭を形成 | 熱で皮膚を引き締め、ハリを出す |
即効性 | 高い(直後から効果を実感) | 緩やか(徐々に引き締まる) |
持続期間の目安 | 半年〜2年程度 | 半年〜1年程度 |
高周波(RF)治療の作用
高周波(ラジオ波)の熱エネルギーを皮膚の真皮層に与えてコラーゲン線維を収縮させ、皮膚を引き締める治療です。また、熱刺激によって線維芽細胞が活性化し、新たなコラーゲンの生成を促します。
皮膚表面のタイトニング効果を実感しやすく、小じわや毛穴の開きにも効果を期待できます。
自分に合った治療法の選び方
たるみ治療には様々な選択肢があるため、たるみの進行度合い、許容できるダウンタイムの期間、期待する効果と持続期間という3つのポイントから総合的に判断して選びます。
たるみの進行度合いで選ぶ
たるみが軽度で、肌の引き締めや予防を目的とする場合は、高周波治療やHIFUが適しています。
中程度以上のたるみがあり、しっかりとリフトアップしたい場合は、物理的に引き上げる糸リフトや、輪郭を整えるヒアルロン酸注入を組み合わせるなどより積極的な治療を検討します。
たるみの度合いと推奨される治療法
たるみの度合い | 主な状態 | 推奨される治療法の例 |
---|---|---|
軽度 | フェイスラインが少しぼやけてきた | HIFU、高周波治療 |
中等度 | マリオネットラインが目立つ | 糸リフト、HIFU+ヒアルロン酸 |
重度 | 顎下のたるみが大きい | 糸リフト、外科手術も視野に |
ダウンタイムの有無で選ぶ
仕事やプライベートの予定で、まとまった休みが取れない方も多いでしょう。HIFUや高周波治療は、施術後の腫れや赤みがほとんどなく、ダウンタイムが気になる方でも受けやすい治療です。
一方、糸リフトやヒアルロン酸注入は内出血や腫れが数日間続く可能性があるため、スケジュールを考慮して選ぶ必要があります。
各治療の痛みとダウンタイムの目安
治療法 | 痛みの目安 | 主なダウンタイム |
---|---|---|
HIFU | チクチクした熱感、響くような感覚 | 赤みや筋肉痛のような鈍痛が数日 |
糸リフト | 麻酔をするため施術中は少ない | 腫れ、内出血、引きつれ感が1〜2週間 |
ヒアルロン酸注入 | 針を刺す痛み(麻酔クリーム等で緩和) | 内出血や腫れが数日〜1週間 |
期待する効果と持続期間で選ぶ
すぐに変化を実感したい場合は、ヒアルロン酸注入や糸リフトが向いています。時間をかけて自然に引き締めたい場合は、HIFUや高周波治療が良いでしょう。
効果の持続期間も治療法によって異なるため、どのくらいの頻度でメンテナンスを考えているかも、治療法を選ぶ上での重要な判断材料になります。
治療後の効果を長持ちさせるためのポイント
治療で得た効果を長持ちさせるには、治療後も継続的なスキンケアと徹底した紫外線対策、そして医師と相談の上での定期的なメンテナンスが重要になります。
ポイントを押さえて、美しいフェイスラインをキープしましょう。
継続的なスキンケアの重要性
治療後も、保湿とエイジングケアを意識したスキンケアを続けましょう。肌の土台が健康であることは、たるみの再発を防ぐ上で基本となります。
肌の状態に合った化粧品を選び、丁寧にケアを続けていくと良いです。
紫外線対策を徹底する
紫外線はたるみの最大の外的要因です。季節や天候に関わらず、一年を通して日焼け止めの使用を習慣にしましょう。
日傘や帽子なども活用し、紫外線から肌を守る意識を持つと、治療効果の維持につながります。
- 日焼け止めの使用
- 日傘や帽子の活用
- UVカット機能のある衣類
定期的なメンテナンス治療
一度の治療で永久的な効果が得られるわけではありません。効果を持続させるためには、医師と相談の上、適切なタイミングでのメンテナンス治療を検討しましょう。
例えば、HIFUや高周波治療を定期的に受ければ、たるみにくい状態を維持しやすくなります。
横顔のフェイスラインに関するよくある質問
洗顔やメイクのときは正面から顔を見ますが、ふとした瞬間に自分の横顔が目に入り、「フェイスラインがない」「正面よりも横顔のほうがたるみが目立つ」とショックを受ける方も多いようです。
横顔のフェイスラインを引き締める方法として、生活習慣の見直しや姿勢の改善、保湿や紫外線対策などのケアが挙げられます。
ただ、セルフケアには限界があり、効果を実感できるまでには時間がかかりますので、本格的にフェイスラインを改善したいとお考えの方は美容医療を検討してみても良いでしょう。
- 治療は痛いですか?
-
治療法によって痛みの感じ方は異なります。HIFUは骨に近い部分で熱感や響くような軽い痛みを感じる場合があります。糸リフトやヒアルロン酸注入は、局所麻酔を使用するため、施術中の痛みは大幅に軽減されます。
痛みが心配なときは、カウンセリング時に遠慮なく医師に相談してください。
- 効果はいつから実感できますか?
-
糸リフトやヒアルロン酸注入は、施術直後から変化を実感しやすい治療です。HIFUや高周波治療は、施術直後にも引き締まりを感じるケースがありますが、コラーゲンの再構築が進む1〜3ヶ月後に効果が最大化します。
ただ、どの治療法も効果の現れ方には個人差があります。
- 治療後、すぐにメイクはできますか?
-
HIFUや高周波治療の場合は、施術当日からメイクが可能です。
糸リフトやヒアルロン酸注入の場合は針を刺した部分を避ければ当日からメイクできますが、感染のリスクを避けるため、翌日以降からを推奨するクリニックが多いです。詳細は治療を受けるクリニックの指示に従ってください。
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