ほっぺのたるみは、見た目年齢を大きく左右する深刻なサインです。
加齢だけでなく、紫外線や生活習慣など、様々な要因が絡み合って進行します。
この記事では、なぜたるみが起きるのかという科学的根拠に基づき、その原因を徹底解説します。さらに、今日から実践できる効果的なエクササイズやスキンケア、セルフケアの限界を感じたときの美容医療に至るまでまとめます。
ほっぺのたるみが起こる原因
ほっぺのたるみは単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。
なぜ自分のほほがたるんでしまったのか、その原因を正しく理解することが、効果的な対策への第一歩です。
加齢によるコラーゲン・エラスチンの減少
肌のハリや弾力を支えているのは、皮膚の真皮層に存在するコラーゲンやエラスチンといった線維状のタンパク質です。これらは、肌を内側から支えるバネのような役割を果たしています。
しかし、20代をピークにこれらの生成量は減少し始め、質も低下していきます。
これによって肌の土台が弱くなり、重力に逆らえずに皮膚が下垂し、ほっぺのたるみとして現れます。
紫外線ダメージの蓄積
紫外線は、肌の老化を促進する最大の外的要因です。
なかでも波長の長いUVA(紫外線A波)は、肌の奥深くにある真皮層にまで到達し、ハリを保つために重要なコラーゲンやエラスチンを変性させたり破壊したりします。
日々の紫外線対策を怠るとダメージが少しずつ蓄積し、肌の弾力低下を招き、結果としてほっぺのたるみを引き起こします。
たるみの主な原因とその特徴
原因 | 特徴 | 対策の方向性 |
---|---|---|
加齢 | 肌全体のハリ・弾力が失われる。乾燥しやすくなる。 | エイジングケア成分配合の化粧品、保湿、インナーケア |
紫外線 | シミやシワも同時に現れやすい。ゴワつきを感じる。 | 年間を通じた紫外線対策、ビタミンCなどの成分補給 |
表情筋の衰え | 口角が下がり、ほうれい線が目立つ。無表情でいるときが多い。 | 顔のエクササイズ、意識的に表情を動かす |
表情筋の衰えと脂肪の増加・下垂
顔には多くの表情筋があり、これらの筋肉が皮膚や皮下脂肪を支えています。
しかし、日常生活であまり表情を動かさない、人と話す機会が少ないなどの理由で表情筋が使われないと徐々に衰えていきます。
支える力が弱まると、その上にある脂肪や皮膚を支えきれなくなり、雪崩のように下へ落ちてきてしまいます。
これが、ブルドッグラインとも呼ばれるフェイスラインのたるみや、ほうれい線を深くする原因となります。
生活習慣の乱れがたるみを加速させる
日々の何気ない習慣も、ほっぺのたるみに大きく影響します。
栄養バランスの偏った食事は肌の再生に必要な栄養素の不足を招き、睡眠不足は肌のターンオーバーを乱す原因です。また、喫煙は血行を悪化させ、肌の老化を早めます。
たるみを招く生活習慣の例
- 睡眠不足
- 栄養の偏った食事
- 喫煙習慣
- 過度な飲酒
これらの生活習慣の乱れは肌本来の修復機能やバリア機能を低下させ、たるみやすい状態を作り出してしまいます。
ほっぺのたるみセルフチェック
たるみは、ある日突然現れるわけではありません。少しずつ進行していくため、初期のサインに気づくことが重要です。
以下の項目に心当たりがないか、鏡の前で確認してみましょう。
ほうれい線が深くなった
ほうれい線は、小鼻の横から口角にかけて伸びる線です。
以前よりもこの線がくっきりと目立つようになった、あるいはファンデーションが溜まるようになったと感じる場合、それはほっぺの皮膚や脂肪が下垂し始めているサインかもしれません。
頬の位置が下がると、ほうれい線の溝がより深くなります。
マリオネットラインの出現
マリオネットラインとは、口角からあごに向かって伸びる線です。まるで腹話術の人形(マリオネット)の口元のように見えるため、この名前がつきました。
この線が見え始めたら、口周りの脂肪の下垂や、口角を下げる筋肉の拘縮が進んでいる証拠です。
不機嫌そうな印象を与える原因にもなります。
フェイスラインがぼやけてきた
顔と首の境界線がはっきりしなくなった、二重あごが気になるようになった、というのもたるみのサインです。
頬から顎にかけての脂肪が下がりフェイスラインに蓄積するため、シャープさが失われてしまいます。
手でフェイスラインを触ってみて、以前のような骨格の感触が薄れているなら注意が必要です。
たるみセルフチェックのポイント
- 正面から見たときの頬のトップの位置
- 笑顔を作ったときの口角の上がり方
- 少しうつむいたときのフェイスラインの変化
「たるみ顔」が与える印象と心理的影響 – 見た目だけの問題ではない
ほっぺのたるみは、単に「老けて見える」という美容上の問題だけにとどまりません。
たるみが進行することで、周囲に与える印象が変わり、ご自身の心理状態にまで影響を及ぼす場合があります。
「疲れてる?」「不機嫌そう」と誤解されやすい
頬が下がり口角が下がってくると、自分ではそんなつもりがなくても、周囲から「疲れているの?」「何か怒っているの?」と声をかけられるときが増えるかもしれません。
たるみによって生まれる影や線のせいで、表情が乏しく見えたり、不機嫌に見えたりしてしまうのです。
このような誤解が続くと、人と会うのが億劫になることさえあります。
実年齢より上に見られてしまう悩み
同窓会や久しぶりに会った知人から、実年齢よりも年上に見られてショックを受けた経験がある方もいるでしょう。
ほっぺのたるみは顔全体の印象を大きく左右し、「年齢を感じさせる」最も大きな要因の一つです。
若々しいファッションやヘアスタイルを心がけても、顔のたるみがそれを打ち消してしまい、自信を失う原因になり得ます。
自信の低下と内向的な性格への変化
外見の変化は人の内面に深く影響します。
たるみを気にするあまり、人と目を合わせるのが怖くなったり、写真を撮られるのを避けるようになったりする方もいます。
このような行動が続くと徐々に自己肯定感が下がり、社交的な場を避けるなど、性格まで内向的になってしまう可能性があります。
たるみの悩みは、見た目以上に深刻な心の負担となるのです。
今日から始める!ほっぺのたるみを防ぐ生活習慣
たるみの進行を食い止め、若々しい印象を保つためには、日々の生活習慣の見直しがとても大切です。
特別なことではなく、毎日の少しの心がけが未来のあなたの顔を作ります。
バランスの取れた食事で内側からケア
私たちの体は、食べたもので作られています。
肌のハリを保つコラーゲンの材料となるタンパク質や、その生成を助けるビタミンC、抗酸化作用で肌の老化を防ぐビタミンEなどを意識的に摂取しましょう。
特定の食品に偏るのではなく、肉や魚、大豆製品や野菜、果物などをバランス良く食べる工夫が重要です。この食生活により、肌の健康を内側からサポートします。
たるみケアにおすすめの栄養素と食材
栄養素 | 主な働き | 多く含む食材 |
---|---|---|
タンパク質 | 肌や筋肉の材料となる | 肉、魚、卵、大豆製品 |
ビタミンC | コラーゲンの生成を助ける、抗酸化作用 | パプリカ、ブロッコリー、キウイ、柑橘類 |
ビタミンA/E | 血行促進、抗酸化作用 | ナッツ類、アボカド、かぼちゃ |
質の良い睡眠で成長ホルモンを味方に
睡眠中には、肌の修復や再生を促す成長ホルモンが分泌されます。
入眠後の最初の3時間は「肌のゴールデンタイム」とも呼ばれ、この時間帯に深い眠りについていることが大切です。
寝る前のスマートフォン操作は避け、リラックスできる環境を整えて、毎日6〜8時間の質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。
正しい姿勢とスマホ利用の見直し
長時間うつむいた姿勢でスマートフォンを操作していると首や顔の筋肉に負担がかかり、重力の影響も相まってたるみを助長します。いわゆる「スマホ顔」です。
意識的に背筋を伸ばし、スマートフォンは目線の高さで操作するようにしましょう。
また、頬杖をつく癖も片側の顔にだけ圧力をかけてしまい、たるみの原因となるため注意が必要です。
自宅で簡単!ほっぺを引き締める顔のエクササイズ
衰えてしまった表情筋は、トレーニングによって鍛え直すことが可能です。
毎日の習慣にして、ほっぺのたるみを内側から引き上げ、すっきりとしたフェイスラインを目指しましょう。
口輪筋を鍛える「あいうえお」体操
口の周りを囲む口輪筋は、多くの表情筋と繋がっている重要な筋肉です。この筋肉を鍛えると、頬全体の引き締めに繋がります。
- 口を大きく開けて「あー」と5秒キープ
- 口を横に大きく引いて「いー」と5秒キープ
- 唇を前に突き出して「うー」と5秒キープ
- 口角をしっかり上げて「えー」と5秒キープ
- 口を縦に大きく開けて「おー」と5秒キープ
これを1セットとして、1日に3セット行うのが目安です。
頬の筋肉を刺激する「風船ふくらまし」
頬の大きな筋肉である頬筋(きょうきん)を効果的に刺激するエクササイズです。
- 口を閉じて、右の頬に空気を目一杯溜めます。
- その状態を5秒キープします。
- 次に、空気を左の頬に移動させ、同じく5秒キープします。
- 最後に、上唇と歯茎の間に空気を溜めて5秒キープします。
左右交互に5回ずつ繰り返しましょう。実際に風船を膨らませるのも良いトレーニングになります。
舌を使ったリフトアップ運動
舌を動かすと、顔の深層部にある筋肉にも働きかけられます。
- 口を閉じたまま、舌先で歯茎の表面をなぞるように、ゆっくりと右回りに10周します。
- 同様に、左回りにも10周します。
ほうれい線の内側から舌で押し出すように刺激するのも効果的です。テレビを見ながらでもできる簡単なエクササイズなので、ぜひ取り入れてみてください。
エクササイズを行う際の注意点
- 肌を強くこすらない
- 痛みを感じたら中止する
- 毎日少しずつでも継続する
スキンケアを見直してたるみにアプローチ
毎日のスキンケアも、たるみ対策には欠かせません。
保湿を基本としながら、ハリや弾力をサポートする成分を積極的に取り入れると、しなやかでたるみにくい肌を育てられます。
たるみケアに有効な化粧品成分
たるみ対策を謳う化粧品は数多くありますが、どのような成分が有効なのかを知っておきましょう。
レチノールやビタミンC誘導体はコラーゲンの生成をサポートする働きが期待できます。
また、ペプチドやナイアシンアミドなども、肌のハリ感アップに貢献する成分として注目されています。
たるみケア化粧品の主な有効成分
成分名 | 期待できる効果 | 選び方のポイント |
---|---|---|
レチノール | ターンオーバー促進、コラーゲン生成サポート | 刺激を感じる場合があるため、低濃度のものから試す |
ビタミンC誘導体 | コラーゲン生成サポート、抗酸化作用、美白 | 様々な種類があるため、肌質に合ったものを選ぶ |
ナイアシンアミド | シワ改善、バリア機能サポート | 比較的刺激が少なく、他の成分と併用しやすい |
保湿の徹底がハリを保つ鍵
肌が乾燥するとバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなるだけでなく、キメが乱れて小じわやたるみが目立ちやすくなります。
化粧水で水分をたっぷり与えた後は、必ず乳液やクリームなどの油分で蓋をして、水分が蒸発するのを防ぎましょう。
セラミドやヒアルロン酸など、保湿効果の高い成分が配合された製品を選ぶのがおすすめです。
正しいクレンジングと洗顔方法
肌をゴシゴシと強くこする洗顔は肌にダメージを与え、たるみを悪化させる原因になります。
クレンジング剤や洗顔料はたっぷりと使い、肌の上で指を滑らせるように優しく洗いましょう。
熱いお湯は肌の潤いを奪ってしまうため、32~34℃程度のぬるま湯ですすぐのが基本です。
正しい洗顔のポイント
ポイント | 理由 | 注意点 |
---|---|---|
たっぷりの泡で洗う | 摩擦による肌への負担を減らすため | 泡立てネットなどを使うと簡単に濃密な泡が作れる |
ぬるま湯ですすぐ | 熱いお湯は必要な皮脂まで奪ってしまうため | 32〜34℃程度が目安。体温より少し低いくらい。 |
優しく水分を拭き取る | ゴシゴシこすると肌を傷つけ、たるみの原因になる | 清潔なタオルを顔に押し当てるようにして水分を吸わせる |
セルフケアの限界を感じたら|美容クリニックでのたるみ治療
生活習慣の改善やセルフケアはたるみの予防や進行を遅らせる上で非常に重要ですが、すでに深く刻まれてしまったたるみを劇的に改善するのは難しい場合もあります。
そのようなときは、美容皮膚科や美容整形クリニックでの治療も有効な選択肢です。専門家の診断のもと、ご自身のたるみの状態に合った治療法を検討しましょう。
HIFU(ハイフ)によるリフトアップ
HIFU(高密度焦点式超音波)は、超音波の熱エネルギーを皮膚の深層部にあるSMAS(スマス)筋膜にピンポイントで照射する治療です。
SMAS筋膜は皮膚の土台ともいえる組織で、ここに熱を加えると組織が収縮し、リフトアップ効果をもたらします。
メスを使わずにたるみの根本原因に働きかけられるのが大きな特徴です。
HIFU(ハイフ)治療の概要
特徴 | 期待できる効果 | ダウンタイム |
---|---|---|
超音波でSMAS筋膜に作用 | 頬やフェイスラインの引き締め、リフトアップ | ほとんどないが、軽い赤みや筋肉痛のような痛みが出ることがある |
糸リフト(スレッドリフト)で直接引き上げる
糸リフトは、コグ(とげ)の付いた特殊な糸を皮下に挿入し、たるんだ皮膚や脂肪を物理的に引き上げる治療法です。
即時的なリフトアップ効果を実感しやすく、フェイスラインをシャープに整えたい場合に適しています。
また、挿入した糸が周辺の組織を刺激し、コラーゲンの生成を促進する効果も期待できます。
糸リフト(スレッドリフト)治療の概要
特徴 | 期待できる効果 | ダウンタイム |
---|---|---|
コグ付きの糸を皮下に挿入 | 即時的なリフトアップ、フェイスラインの形成 | 数日〜1週間程度の腫れ、内出血、ひきつれ感など |
ヒアルロン酸注入でボリュームを補う
たるみは皮膚が下垂するだけでなく、加齢によって顔の脂肪が減少し、こけて見えるのも原因の一つです。
ヒアルロン酸を注入すると失われたボリュームを補い、頬をふっくらと若々しい印象に戻せます。
また、リフトアップ効果のあるポイントに注入すると、顔全体のバランスを整えてたるみを改善できます。
ヒアルロン酸注入の概要
特徴 | 期待できる効果 | ダウンタイム |
---|---|---|
ヒアルロン酸を皮下に注入 | ボリュームアップ、シワの改善、リフトアップ | 軽い腫れや内出血が出ることがあるが、比較的短い |
よくある質問
ほっぺのたるみの原因は、紫外線や摩擦、脂肪の増加や表情筋の衰えなど様々です。
エクササイズやスキンケアなどである程度は改善できますが、セルフケアには限界がありますので、本格的にほほのたるみを改善したいとお考えの方は、いちどクリニックに相談してみると良いでしょう。
- たるみ改善のエクササイズはどれくらいで効果が出ますか?
-
効果の現れ方には個人差がありますが、一般的には毎日継続して1〜3ヶ月ほどで、顔がすっきりした、表情が作りやすくなったなどの変化を感じ始める方が多いです。
大切なのは、即効性を求めるのではなく、毎日の習慣としてコツコツと続けることです。筋肉の変化はゆっくりと現れるため、焦らずに取り組みましょう。
- 美容医療の治療に痛みはありますか?
-
治療法によって痛みの感じ方は異なります。HIFUは骨に近い部分でチクチクとした熱感や響くような痛みを感じる場合があります。糸リフトやヒアルロン酸注入は局所麻酔を使用するため、施術中の痛みはかなり軽減されます。
痛みが心配なときはカウンセリング時に医師に相談し、麻酔クリームや笑気麻酔などの選択肢について確認しておきましょう。
- 治療後のダウンタイムはどのくらいですか?
-
ダウンタイムも治療法により様々です。HIFUはダウンタイムがほとんどなく、施術後すぐにメイクをして帰宅できます。
糸リフトは、数日から1週間ほど腫れや内出血、口を開けにくいといった症状が出るケースがあります。ヒアルロン酸注入も注入部位に内出血や軽い腫れが出る場合がありますが、通常は数日で落ち着きます。
いずれの治療も、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないですが、大切な予定がある場合は余裕を持ったスケジュールで治療を受けると良いでしょう。
- 一度治療すればたるみは再発しませんか?
-
残念ながら美容医療でたるみを改善しても、その後の加齢や生活習慣によって再びたるみは進行します。
治療効果を長持ちさせるためには、治療後も紫外線対策や保湿、バランスの取れた食事などのセルフケアの継続が重要です。
また、定期的にクリニックでメンテナンスを受けると、良い状態を長くキープできます。
参考文献
EZURE, T., et al. Sagging of the cheek is related to skin elasticity, fat mass and mimetic muscle function. Skin Research and Technology, 2009, 15.3: 299-305.
VAN BORSEL, John, et al. The effectiveness of facial exercises for facial rejuvenation: a systematic review. Aesthetic surgery journal, 2014, 34.1: 22-27.
DE VOS, Marie-Camille, et al. Facial exercises for facial rejuvenation: a control group study. Folia Phoniatrica et Logopaedica, 2014, 65.3: 117-122.
LIM, Hyoung Won. Effects of facial exercise for facial muscle strengthening and rejuvenation: systematic review. The Journal of Korean Physical Therapy, 2021, 33.6: 297-303.
KIVILUOMA, Leena. Vital Face: Facial Exercises and Massage for Health and Beauty. Singing Dragon, 2013.
FURLAN, Andreza Sonego, et al. Facial Exercises: Enhancing Facial Structure and Reducing Signs of Aging-A Comprehensive Review. Current Cosmetic Science, 2024, 3.1: E181223224616.
FREEMAN, M. Sean. Rejuvenation of the midface. Facial plastic surgery, 2003, 19.02: 223-236.
PASCALI, Michele, et al. Midface rejuvenation: a critical evaluation of a 7-year experience. Plastic and Reconstructive Surgery, 2015, 135.5: 1305-1316.