骨粗鬆症で口元がくぼむ?頭蓋骨の萎縮とヒアルロン酸による土台形成

骨粗鬆症で口元がくぼむ?頭蓋骨の萎縮とヒアルロン酸による土台形成

口元がくぼむ原因は、皮膚のたるみだけではありません。加齢や骨粗鬆症によって頭蓋骨そのものが萎縮し、顔の「土台」が痩せることで、ほうれい線や口周りのくぼみが深くなっていきます。

とくに上顎骨や下顎骨は40代以降に骨密度が低下しやすく、骨粗鬆症の方はその変化がより早期かつ顕著に現れることが研究で示されています。こうした骨レベルの変化は、表面的なスキンケアだけでは補いきれません。

この記事では、顔の骨が萎縮する仕組みと骨粗鬆症との関係、そしてヒアルロン酸を骨膜上に注入して顔の土台を再構築する方法について、医学的な根拠をもとに解説します。

目次

顔の骨は年齢とともに縮む|頭蓋骨の萎縮がたるみの根本原因

加齢による顔のたるみには、頭蓋骨の骨吸収という見落とされがちな原因があります。皮膚や脂肪の衰えだけでなく、骨格そのものが痩せることで、顔全体の輪郭が崩れていくのです。

上顎骨・眼窩・下顎で進行する骨吸収の特徴

顔面骨の加齢変化は一様ではなく、部位によって吸収の速度や程度が異なります。とくに上顎骨(じょうがくこつ)の前面、眼窩(がんか=目の周りの骨の縁)の内上方と外下方、そして下顎の前歯付近が骨吸収を受けやすい領域です。

3次元CTを用いた研究では、上顎骨の角度が加齢に伴い約10度も減少し、中顔面が後退することが確認されています。この後退が、ほうれい線の深化や頬のボリュームダウンに直結します。

女性ホルモンの減少が顔面骨の骨密度を下げる

閉経後のエストロゲン分泌量の低下は、全身の骨密度を下げるだけでなく、顔面骨にも影響を及ぼします。

DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)を用いた研究では、女性は40代から上顎骨と下顎骨の骨密度が有意に低下し、その変化は腰椎よりも早い時期に始まることが報告されています。

エストロゲンは骨を壊す破骨細胞の働きを抑える作用を持っています。そのためホルモンバランスが変わる更年期以降、顔の骨格は加速度的にボリュームを失いやすくなります。

40代以降に加速する顔面骨のボリュームダウン

20代から30代にかけては緩やかだった骨の変化が、40代を境に一気に進行します。上顎骨の前面や梨状口(りじょうこう=鼻の穴の周囲の骨の縁)の後退は中年期以降に顕著となり、鼻の付け根が低くなる、頬の高さが失われるといった変化として現れるでしょう。

下顎骨においても、骨体の高さや長さが減少し、下顎角(エラの角度)が大きくなる傾向が報告されています。フェイスラインがぼやけてきた、あご先がシャープさを失ったと感じる方は、こうした骨格レベルの変化が影響している可能性があります。

部位変化の特徴見た目への影響
上顎骨前面が後退し角度が減少ほうれい線の深化、口元のくぼみ
眼窩内上方・外下方の縁が吸収目のくぼみ、クマの目立ち
下顎骨高さ・長さが減少、角度が増大フェイスラインの崩れ、たるみ

骨粗鬆症が口元のくぼみやほうれい線を悪化させる

骨粗鬆症と診断された方は、そうでない方と比較して中顔面の骨密度が明らかに低いことが、CT画像による研究で報告されています。骨粗鬆症は全身の骨だけでなく、顔の「見た目」にも影響を与えるのです。

上顎骨の萎縮がほうれい線やマリオネットラインを深くする

上顎骨は顔面骨の中でも骨吸収の影響を最も強く受ける部位です。歯が残っていても上顎骨の前面は加齢とともに後退し、頬の皮膚や脂肪を支える「棚」が低くなります。

棚が低くなると、上に載っていた軟部組織が下方へずれ、ほうれい線やマリオネットラインが目立つようになります。骨粗鬆症によって上顎骨の吸収が加速すると、この変化はさらに早い段階で生じるでしょう。

歯槽骨の吸収が口周りのたるみにつながる

歯を支える歯槽骨(しそうこつ)は、骨粗鬆症が進むと密度が低下し、歯周病のリスクも高まります。歯槽骨が痩せると歯茎が下がり、口元全体がくぼんだ印象を与えるときがあります。

歯を失うと歯槽骨の吸収はさらに急速に進みます。義歯を使用している方でも骨吸収は止まらないため、口元のくぼみは年月とともに深くなる傾向があります。

CT画像で確認された骨粗鬆症患者の顔面骨密度の低下

96名を対象にしたCT研究では、骨粗鬆症群と対照群を比較した結果、中顔面の7つの骨領域すべてにおいて骨粗鬆症群の骨密度が有意に低い数値を示しました。顔面骨の密度低下は全身の骨密度変化と独立して生じるわけではなく、腰椎や大腿骨の骨密度と相関しています。

顔面骨のCT値(ハンスフィールド単位)を測定すれば、骨粗鬆症のスクリーニング補助としても活用できる可能性があると指摘する研究者もいます。

骨粗鬆症群と対照群の骨密度比較

項目骨粗鬆症群対照群
中顔面の平均骨密度有意に低い基準値
上顎骨前面薄く後退が進行相対的に維持
全身骨密度との相関正の相関あり正の相関あり

皮膚や脂肪だけでは解決できない|顔の骨格から見直すたるみ治療

「骨」という土台が痩せている状態では、皮膚を引き上げるだけのリフトアップでは限界があります。骨格の変化を考慮に入れた治療設計が、自然で長持ちする若返りにつながります。

従来のリフトアップだけでは根本改善に至らない場合がある

フェイスリフトや糸リフトは、たるんだ皮膚や脂肪を持ち上げる手法として広く行われています。しかし、骨格の突出が減少しているケースでは、軟部組織を持ち上げても骨の支えが足りず、結果が長続きしにくいことがあります。

たとえば頬骨の突出が減って中顔面が平坦になっている方が皮膚だけを引き上げても、若い頃の立体感を取り戻すのは難しいでしょう。土台そのものを補う発想が求められます。

骨格の変化を考慮しない施術の限界

ヒアルロン酸やコラーゲンを皮膚の浅い層に注入して、しわを埋めたりボリュームを足したりする方法は手軽で人気があります。ただし、浅い層だけへの注入では、骨格レベルの支持構造を補うことはできません。

骨格が後退している部位では、浅い注入だけで補おうとすると不自然にふくらんだ仕上がりになりやすいというのが、経験豊富な医師たちの見解です。深い層と浅い層を組み合わせた多層的な治療が重要になります。

深い層へのアプローチが注目されている背景

近年の解剖学的研究によって、顔の加齢変化が皮膚・脂肪・筋膜・靭帯・骨という5層すべてで起きていることが明らかになりました。

骨格の変化に着目し、骨膜上(スプラペリオスティアル)にフィラーを配置する手法が注目を集めているのは、この多層構造の理解が深まったためです。

顔の老化を「テーブルとテーブルクロス」にたとえる研究者もいます。骨格がテーブル、皮膚や脂肪がテーブルクロスに相当し、テーブルが小さくなればクロスに余りが出てたるむという発想です。

テーブル自体を補修する考え方が、骨膜上注入の理論的な背景となっています。

  • 骨格の突出が減ると靭帯の付着部も後退し、軟部組織の支えが弱まる
  • 浅い層だけを補っても骨の支えがなければ形状を保ちにくい
  • 骨膜上への注入は骨格の輪郭そのものを補正できる

ヒアルロン酸の骨膜上注入で口元やフェイスラインの土台を再構築する

骨膜の直上(スプラペリオスティアル)にヒアルロン酸を注入する手法は、痩せた骨格の輪郭を補い、その上に載る軟部組織を内側から持ち上げる効果が期待できます。

この方法は「インジェクタブル・クレイニオフェイシャル・インプラント」とも呼ばれ、外科手術をせずに骨格レベルの補正を目指すものです。

骨膜上注入で骨格の支えを補う仕組み

骨膜上注入では、硬さ(弾性率、G’プライム)の高いヒアルロン酸製剤を骨の表面に直接配置します。硬い製剤は骨の突出を模倣するように形状を維持しやすく、上から加わる軟部組織の重みに負けにくい性質を持っています。

骨膜は骨を覆う薄い膜で、靭帯や筋肉の付着部でもあります。骨膜上にボリュームを足すことで、靭帯の起始点が前方へ戻り、その結果として靭帯に支えられた皮膚や脂肪も元の位置に近づく効果が見込めます。

注入量を増やしてもフィラーは下方に流れにくいという報告もあり、深い位置での安定性が支持されています。

中顔面と下顎に対する注入デザインの考え方

中顔面では、上顎骨の前面や頬骨弓(きょうこつきゅう)の付近に製剤を配置し、頬の高さと前方への突出を回復させます。口元のくぼみに悩む方には、梨状口周囲や上唇基部への注入を加えることで、ほうれい線の深さを目立ちにくくできる場合があります。

下顎ではフェイスラインの凹みが生じやすい前歯部付近と、あご先に製剤を配置して輪郭のメリハリを取り戻します。注入のデザインは一人ひとりの骨格や萎縮の程度によって異なるため、CTや触診による診察が大切です。

注入部位使用する製剤の特性期待される効果
頬骨弓・上顎骨高G’プライム(硬め)頬の高さ回復、中顔面のリフト
梨状口・鼻翼基部中程度の硬さほうれい線の改善、口元の支え
下顎前歯部・あご先高G’プライムフェイスラインの整形

骨の上に置くフィラーと皮下に置くフィラーの違い

同じヒアルロン酸でも、注入する深さによって期待できる効果は大きく異なります。骨膜上への注入は骨格の輪郭補正と組織のリフトアップを主な目的としており、少量でも立体的な変化が得られやすいのが特徴です。

一方、皮下への注入はボリュームの補充やしわの改善を主な目的とし、より柔らかい製剤を使います。両者を組み合わせて深い層で土台を作り、浅い層で仕上げる「レイヤリング(多層注入)」が、現在の標準的な考え方になりつつあります。

ヒアルロン酸による口元の土台形成で期待できる改善と持続期間

個人差はありますが、骨膜上へのヒアルロン酸注入は施術直後から頬や口元の輪郭に変化が見られ、持続期間はおおむね12~18か月といわれています。

口元のくぼみやほうれい線への改善範囲

骨膜上注入は、上顎骨の前面に突出を加えることで、口元のくぼみや上唇の薄さを内側から補正します。浅い層のフィラーでは対処しにくかった骨格由来のほうれい線の深さにも、変化が期待できるでしょう。

ただし、骨膜上注入だけですべてのしわやたるみが消えるわけではありません。表皮のちりめんじわや皮膚そのものの弾力低下に対しては、別のアプローチとの組み合わせが有効です。

効果の持続と定期施術の目安

骨膜上に注入されたヒアルロン酸は、皮下に注入した場合よりも比較的長い期間形状を保つとされています。骨膜の直上は血流が穏やかなため、ヒアルロン酸の吸収がゆっくり進むことが一因と考えられています。

多くの方は12~18か月程度で効果の減少を感じ、再注入を希望されます。定期的に少量ずつ追加していって、急激な変化を避けながら骨格の支えを維持するのがよいとされています。

骨の萎縮が進行している場合の注入量と回数の調整

骨粗鬆症が進んでいる方や加齢による骨吸収が顕著な方は、初回に必要な製剤量がやや多くなることがあります。一度に大量を注入するよりも、2~3回に分けて段階的にボリュームを構築する方法が安全で、仕上がりも自然になりやすいでしょう。

状態初回注入量の目安推奨される追加施術
軽度の骨萎縮片側0.5~1.0mL程度12~18か月後に経過観察
中等度の骨萎縮片側1.0~2.0mL程度1か月後に追加調整
高度の骨萎縮段階的に複数回2~3回に分けて構築

顔の骨萎縮を緩やかにするために日常生活で取り組めること

骨の老化を完全に止めることはできませんが、生活習慣の工夫によってその速度を遅らせることは十分に可能です。とくにカルシウムとビタミンDの摂取、運動習慣、そして骨密度の定期検査が柱となります。

カルシウム・ビタミンDの摂取と骨密度検査を習慣にする

カルシウムは骨の材料となるミネラルで、乳製品や小魚、大豆製品から摂取できます。ビタミンDはカルシウムの腸管吸収を促す働きがあり、日光浴やきのこ類、魚介類から得られます。

40代以降は年に一度の骨密度検査(DXA法など)を受けると、骨の状態を客観的に把握できます。顔面骨の骨密度は全身の骨密度と連動しているため、腰椎や大腿骨の検査結果は顔の骨の状態を推測する指標にもなるでしょう。

適度な運動と紫外線対策で骨と肌の老化を同時に抑える

ウォーキングやジョギングなどの荷重運動は、骨に適度な刺激を与えて骨密度の維持に役立ちます。筋力トレーニングも骨への力学的な負荷を通じて骨代謝を促進するため、週に2~3回取り入れるとよいでしょう。

顎を動かす咀嚼(そしゃく)も顔面骨への刺激となるため、よく噛んで食事をすることも骨の維持に寄与する可能性があります。

一方で、骨の健康に有益な日光浴は紫外線による肌の老化(光老化)を招く面もあります。日焼け止めや帽子を上手に使いながら、1日15~30分程度の日光浴を心がけるのが現実的なバランスです。

屋外での運動と紫外線対策を両立させることが、骨と肌の両方を守るポイントになります。

骨粗鬆症治療と美容医療を組み合わせた相乗効果

すでに骨粗鬆症の診断を受けている方は、内服薬や注射による骨粗鬆症治療を継続しながら、必要に応じてヒアルロン酸による土台形成を検討するとよいかもしれません。

骨の吸収を抑える薬剤で骨格の萎縮速度を遅らせつつ、ヒアルロン酸で失われた輪郭を補う二段構えのアプローチです。

  • 骨粗鬆症治療薬で全身と顔面骨の骨密度低下を抑制
  • ヒアルロン酸の骨膜上注入で見た目の輪郭を補正
  • 定期的な骨密度検査で治療効果と注入タイミングを把握

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よくある質問

骨粗鬆症による顔の骨の萎縮は治療で元に戻せますか?

骨粗鬆症によって吸収された顔面骨を薬だけで完全に元の状態へ戻すことは、現時点では難しいとされています。骨粗鬆症の治療薬はおもに骨の吸収を抑制したり、骨の形成を促したりする作用があり、それ以上の骨量減少を防ぐ効果が期待できます。

顔の見た目への影響については、ヒアルロン酸などのフィラーで失われた輪郭を補う方法が選択肢のひとつです。骨粗鬆症の内科的治療と美容医療を並行して行うことで、骨格の萎縮を遅らせながら外見上の変化を改善するアプローチが考えられます。

ヒアルロン酸の骨膜上注入に痛みやダウンタイムはありますか?

骨膜上注入ではニードルまたはカニューラを使用しますが、施術前に局所麻酔やブロック麻酔を行うため、施術中の強い痛みを感じることは少ないです。また、多くの製剤にはリドカイン(麻酔成分)が含まれています。

施術後は注入部位に軽い腫れや内出血が生じる場合がありますが、通常は数日から1週間程度で落ち着きます。日常生活への影響は限定的で、当日からメイクが可能なケースも多いでしょう。

頭蓋骨の萎縮は男性にも起こりますか?

頭蓋骨の萎縮は男女ともに生じますが、その進行パターンには性差があります。女性は閉経後にエストロゲンが急激に減少するため、骨密度の低下が比較的短期間で進みやすい傾向があります。

男性はホルモンの変動が緩やかなぶん骨密度低下の進行は穏やかですが、加齢に伴い確実に進行します。

CT画像を用いた研究では、女性のほうが中顔面の骨吸収がより顕著であったと報告されていますが、男性でも眼窩周囲や下顎の変化は認められています。性別にかかわらず、40代以降は定期的な骨密度のチェックをお勧めします。

顔の骨萎縮を予防するために何歳から対策を始めるべきですか?

顔面骨の骨密度は40代から有意に低下し始めることが研究で示されています。そのため、30代後半から予防的な生活習慣を意識するのが望ましいでしょう。カルシウムやビタミンDの十分な摂取、荷重運動の習慣、そして禁煙が基本的な対策です。

骨密度検査は40歳以降に一度受け、結果に応じて検査の頻度を医師と相談するのがよいかもしれません。早期に骨の状態を把握しておくと、将来的な顔の骨格変化にも備えやすくなります。

ヒアルロン酸の骨膜上注入と通常のヒアルロン酸注入は何が違いますか?

通常のヒアルロン酸注入は皮膚の真皮層や皮下脂肪層に柔らかい製剤を入れ、しわの充填やボリュームの補充を目的としています。一方、骨膜上注入は骨の表面に硬めの製剤を配置し、骨格レベルの突出や輪郭を補正することを狙いとします。

骨膜上注入は少ない量でも立体的な変化が得られやすく、持続期間も比較的長い傾向にあります。どちらの方法が適しているかは、骨吸収の程度や求める仕上がりによって異なるため、医師と相談のうえ判断することが大切です。

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この記事を書いた人

Dr.寺井美佐栄のアバター Dr.寺井美佐栄 ミサクリニック 六本木本院 院長

日本抗加齢医学会認定専門医。日本美容皮膚科学会、日本レーザー医学会、日本産業衛生学会専門医。
複数の大手美容皮膚科で10年以上の院長経験を経て、2022年9月にMiSA Clinic(ミサクリニック)を開業。YouTube等でも発信してきた、メスを使わずに”ナチュラルなキレイ”を引き出す技術には定評があり、ありがたいことに「SNSを見ました!」という方や、紹介・口コミ経由でたくさんのご相談を頂いてきました。皆様と共に、MiSA Clinicスタッフ一同、共に年を重ね、末永くお付き合いできる関係を目指して参ります。

資格
アラガン社ボトックスビスタ認定医
アラガン社ヒアルロン酸注入認定医

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