たるみ治療の注射って何がある?種類・効果・費用・ダウンタイムを解説

顔のたるみは加齢とともに進行する骨の萎縮や脂肪の減少、皮膚の弾力低下が複雑に絡み合って発生します。
しかし、現代の美容医療ではメスを使わない注射治療だけで十分なリフトアップ効果や若返り効果を実感できるようになりました。
ヒアルロン酸による土台形成やボトックスによる筋肉調整、脂肪溶解注射による引き締めなど、選択肢は多岐にわたります。
それぞれの治療のメリットだけでなく、費用相場やダウンタイム、リスクについても隠さずお伝えします。
たるみの原因を知り注射治療の役割
顔のたるみは単に皮膚が伸びるだけでなく、骨格、筋肉、皮下脂肪、皮膚という4つの層すべての老化現象が原因です。それぞれの層に対して適切な働きかけを行うと、治療成功につながります。
私たちの顔は、加齢とともに変化していきます。若い頃はパンと張っていた肌も、年齢を重ねると重力に逆らえなくなります。
全体的に下へと下がっていくように感じるのは、皮膚だけの問題ではありません。実は、顔の土台である「骨」そのものが年齢とともに小さく萎縮してしまうのです。
頭蓋骨、特に眼窩(目のくぼみ)や上顎骨、下顎骨が吸収されて小さくなると、その上を覆っていた皮膚や脂肪が余ってしまいます。
その結果、支えを失った皮膚が垂れ下がってしまうのです。テントのポールが短くなれば、テントの布がたるんでしまうのと同じ理屈といえます。
加齢による骨萎縮と皮下組織の変化
顔の老化において見落とされがちですが、極めて大きな影響を与えているのが「骨の萎縮」です。
顔面骨は加齢に伴い、骨粗鬆症のように骨密度が低下し、体積が減少します。特に、眼球が入っている穴(眼窩)は広がり、鼻の横の骨は凹み、顎の骨は小さくなります。
こうして皮膚や脂肪を支える土台が失われ、余った皮膚が雪崩のように下へと落ちてきます。これが、目の下のクマやたるみ、ほうれい線が深くなる根本的な原因の一つです。
皮下組織においても、顔の深層にある脂肪(深部脂肪体)は加齢とともにボリュームが減少し、これもまた顔の立体感を失わせ、皮膚のたるみを助長します。
たるみの主な原因と現象
- 加齢による顔面骨の萎縮とボリュームロス
- 顔の組織を支える支持靭帯の緩み
- 表情筋の拘縮による下方向への牽引
- 皮下脂肪の下垂と局所的な蓄積
- 真皮層のコラーゲン減少による皮膚弾力の低下
靭帯の緩みが招く顔全体の崩れ
さらに、顔の組織を骨につなぎ止めている「支持靭帯(リガメント)」という強固な繊維状の組織も、時間の経過とともに緩んでいきます。
支持靭帯は顔の肉をあるべき位置に固定するアンカーのような役割を果たしています。
しかし、これが緩むと脂肪層が下垂し、ほうれい線やマリオネットライン、ゴルゴラインといった深い溝が形成されてしまいます。
また、皮下脂肪自体も、頬の高い位置など若々しさを保つために必要な部分では減少します。
一方で、口元やフェイスラインなど不要な部分には重力で移動して蓄積するという変化を起こすのです。
注射治療が担うリフトアップの働き
注射治療によるリフトアップは、かつてのように「シワを埋める」だけのものではありません。現代の注入技術は解剖学に基づき、老化の仕組みそのものに働きかけます。
具体的には、萎縮した骨の上に硬めのヒアルロン酸を注入して土台を作り直し、テントを張り直すように皮膚を持ち上げます。
また、靭帯の付着部に注入して、緩んだハンモックをピンと張り直すような効果を狙います。
さらに、広頸筋(首の筋肉)など、顔を下に引っ張る筋肉の力をボトックスで弱めて相対的に引き上げる筋肉の力を優位にし、フェイスラインをシャープにするのも可能です。
これらの治療は、切開リフトなどの外科手術に比べて身体への負担が少なく、自然な仕上がりを期待できる点が大きな利点です。
ヒアルロン酸注射による構造的リフトアップ
ヒアルロン酸注射は、減少した骨や脂肪のボリュームを補填し、緩んだ靭帯を補強する治療法です。顔の構造そのものを立て直すと、自然なリフトアップ効果を生み出します。
ヒアルロン酸と聞くと、シワの溝を埋めて平らにする治療をイメージする方が多いかもしれません。
確かに以前はそのような使い方が主流でしたが、現在は「ストラクチャー(構造)」を意識した注入法が標準となっています。
これは、顔面の解剖学に基づいて、骨の上や脂肪層の深い部分に適切な硬さのヒアルロン酸を注入し、顔の輪郭形成やリフトアップを行う手法です。
加齢によって失われたボリュームを、本来あるべき場所に、あるべき量だけ補うことで、若々しい立体感を取り戻します。
減少したボリュームを補い支柱を作る
顔の老化現象の中で、見た目の印象を大きく変えてしまうのが「こめかみの凹み」や「頬のコケ」です。こめかみが凹むと、眉尻が下がり、老けた印象や疲れた印象を与えてしまいます。
また、頬のボリュームが減ると、その分皮膚が余って口元に集まり、ブルドッグのようなたるみ顔を形成します。
ヒアルロン酸注射では、これらのボリュームが減少した部分に製剤を注入し、凹みを埋めて顔の卵形ラインを整えます。
さらに、頬骨弓(頬の高い位置)の下などに注入すると、皮膚を強力にリフトアップする「支柱」としての役割を果たします。
その働きによって皮膚を切らずに、物理的にたるみの引き上げが可能になります。
持続期間と製剤による硬さの違い
使用されるヒアルロン酸製剤には、様々な硬さや粘度のものがあります。
リフトアップ目的で使用する場合は、周囲の組織から圧力を受けても形が崩れにくく、高い持ち上げ力(リフティング力)を持つ硬めの製剤が選ばれます。
これを骨膜上に注入して骨格のフレームを強化し、皮膚を内側から支え上げます。
一方で、口元や目元などのよく動く部分や、皮膚の浅い層には、馴染みが良く柔らかい製剤を使用して自然な表情を損なわないように調整します。
主なヒアルロン酸製剤の特徴比較
| 製剤のタイプ | 主な特徴と用途 | 適応部位の例 |
|---|---|---|
| 高弾性・高凝集性タイプ | 硬さがあり、組織を持ち上げる力が強い。骨格形成や土台作りに適している。 | 頬骨、顎、こめかみ、鼻筋 |
| 中程度の硬さタイプ | 適度なボリューム感と馴染みの良さを両立。深いシワの改善や輪郭形成に使う。 | ほうれい線、マリオネットライン、額 |
| 低粘度・ソフトタイプ | 非常に柔らかく、皮膚の薄い部分にも馴染む。表面の小ジワや唇の形成向け。 | 涙袋、唇、目周りの小ジワ |
ヒアルロン酸の持続期間は、製剤の種類や注入する部位、個人の代謝によって異なります。
一般的にリフトアップ目的で使用される硬めの製剤であれば、1年から2年程度持続するケースが多いです。柔らかい製剤の場合は、半年から1年程度で吸収される傾向があります。
ヒアルロン酸は徐々に体内で分解・吸収されていくため、効果を維持するには定期的なメンテナンスが必要です。
ただし、完全にゼロになってから再注入するのではなく、効果が減り始めた段階で少量を追加すると、常に良い状態をキープしやすくなります。
ヒアルロン酸リフトの費用相場とダウンタイム
ヒアルロン酸注射の費用は、使用する製剤のブランドや注入量(本数)によって大きく変動します。
厚生労働省の承認を得ている高品質な製剤(アラガン社のジュビダームシリーズなど)を使用する場合、1本(1cc)あたり7万円から10万円程度が相場となります。
顔全体のリフトアップを行う際は、症状の程度にもよりますが、初回は3本から5本程度必要になるケースが多いです。そのため、総額で20万円から50万円程度かかる場合もあります。
ダウンタイムについては非常に短く、注入直後からメイクが可能な場合がほとんどです。針穴の赤み、軽度の腫れ、内出血が出る可能性がありますが、数日から1週間程度で消失します。
ボトックス注射がアプローチする筋肉とたるみ
ボトックス注射は、筋肉の過剰な動きを抑制して下方向に引っ張る力を弱める治療です。リフトアップ効果を得たり、表情ジワの定着を防いだりします。
ボトックスは、ボツリヌス菌から抽出されたタンパク質を有効成分とする薬剤を筋肉に注入する治療法です。神経から筋肉への指令伝達を一時的にブロックして筋肉の動きを弱めます。
たるみ治療においては、顔を下に引っ張る働きをする「下制筋(かせいきん)」にボトックスを打ち、その力を弱める戦略をとります。
相対的に顔を引き上げる「挙上筋(きょじょうきん)」の働きを優位にするのです。
表情筋の緊張を緩めてリフトアップする
私たちの顔には多くの表情筋があり、互いに引っ張り合ってバランスを保っています。
しかし、加齢や癖によって特定の筋肉が過剰に緊張(拘縮)した状態が続くと、そのバランスが崩れてたるみやシワの原因となります。
特に、顔を下方向に引く筋肉(下制筋)が強くなると、顔全体が下がった印象になります。
ボトックス注射によって、この下制筋の過剰な緊張を解くことは、綱引きで言えば相手チームの力を弱めるようなものです。
結果として、上方向に引く筋肉(挙上筋)の力が相対的に勝ち、頬や口角の位置が自然と上がります。
これは、何かを物理的に入れるのではなく、筋肉のバランス調整によって自身の顔の形状を整える理にかなった治療法です。
ボトックスによる部位別たるみ改善効果
| ターゲット部位 | 作用する筋肉 | 期待できるリフトアップ効果 |
|---|---|---|
| フェイスライン・首 | 広頸筋(こうけいきん) | 首から下へ引っ張る力を弱め、輪郭をシャープにし、口角の下がりを改善する。 |
| 口角周辺 | 口角下制筋 | 口角を下に引く力を弱め、への字口を解消し、マリオネットラインを目立たなくする。 |
| 眉間・額 | 皺眉筋・前頭筋 | 表情によるシワの定着を防ぎ、眉の位置を調整することで、まぶたの重みを軽減する。 |
首の筋肉に作用させるフェイスライン改善
代表的な治療の一つが「ボトックスリフト」や「ネフェルティティリフト」と呼ばれる手法です。
首全体を覆っている広頸筋は、フェイスラインをまたいで頬の下部までつながっており、顔の皮膚を日常的に下方向へと引っ張っています。
年齢とともにこの筋肉の緊張が強くなると、フェイスラインが不明瞭になり、首の縦ジワが目立つようになります。
ネフェルティティリフトは、広頸筋の働きを抑制して下に引っ張る力を解除し、美しいフェイスラインを目指す治療です。フェイスラインがくっきりと浮き上がり、首も長く見えるようになります。
特に、顎下のたるみや首の筋張った感じが気になる方に効果的な方法です。
効果の持続性と繰り返しの治療頻度
ボトックスの効果は永続的なものではありません。個人差はありますが、注射後3日から1週間程度で効果が現れ始め、2週間後くらいにピークを迎えます。
その後、3ヶ月から4ヶ月程度効果が持続し、徐々に筋肉の動きが戻ってきます。
リフトアップ効果やシワ予防効果を維持するためには、年に3回から4回程度の定期的な施術が推奨されます。
繰り返し治療を受けると筋肉の過剰な発達そのものが抑えられ、効果の持続期間が長くなる傾向があります。
費用相場は部位や使用する製剤によりますが、1部位あたり1万円から5万円程度、フェイスラインのリフトアップであれば5万円から10万円程度が一般的です。
余分な脂肪を減らして引き締める脂肪溶解注射
脂肪溶解注射は、二重顎やフェイスラインのもたつきの原因となっている余分な脂肪細胞を破壊する治療です。部分痩せと引き締めを同時に実現します。
顔のたるみの中には、皮膚の伸びや骨の萎縮だけでなく、単純に「脂肪の重み」によって皮膚が耐えきれずに下がっているケースがあります。
特に、顎下やフェイスライン、ほうれい線の上に乗っかる脂肪などは、たるみを強調して顔を大きく見せる要因となります。
こうした局所的な脂肪に対しては、ダイエットで全身の体重を落とすよりも、脂肪溶解注射でピンポイントに働きかけるほうが効率的です。
脂肪細胞を破壊し排出するデオキシコール酸
脂肪溶解注射の効果の鍵を握る成分が「デオキシコール酸」です。米国FDA(食品医薬品局)で脂肪減少の効果が認められている成分であり、脂肪細胞膜を直接破壊して乳化させる作用があります。
破壊された脂肪細胞は、マクロファージなどの免疫細胞によって貪食され、静脈やリンパ管を通じて肝臓へ運ばれます。
最終的には尿や便として体外へ排出されます。一度破壊された脂肪細胞は再生しないため、リバウンドしにくいのが大きな特徴です。
デオキシコール酸の濃度が高いほど、一回あたりの脂肪減少効果は実感しやすくなりますが、その分、注入部位の腫れや痛みも強くなる傾向があります。
主要な脂肪溶解注射製剤の比較
| 製剤名 | デオキシコール酸濃度 | 特徴・ダウンタイム |
|---|---|---|
| カイベラ(承認薬) | 高濃度(約1%) | 効果は強力だが、強い腫れや痛みが1週間以上続くことが多い。米国FDA承認薬。 |
| カベリン(カベルライン) | 中濃度(約0.5%) | 効果とダウンタイムのバランスが良い。数日程度の腫れで済むことが多い。 |
| BNLS Ultimateなど | 低濃度(微量) | 植物由来成分主体で腫れや痛みが非常に少ない。効果実感には回数が必要な傾向。 |
フェイスラインや二重顎への具体的効果
脂肪溶解注射が最も得意とする部位は、二重顎(顎下)やフェイスラインの脂肪です。ここの脂肪が減ると顔と首の境界線がはっきりとし、横顔のシルエットが劇的に美しくなります。
また、口角の横にあるポニョっとした脂肪(ジョールファット)や、笑った時に盛り上がる頬の脂肪を適度に減らすことも有効です。
法令線やマリオネットラインの段差を軽減し、重力による下垂を予防できます。
ただし、脂肪を取りすぎてしまうと、かえって皮膚が余ってたるんだり頬がこけて老けて見えたりするリスクもあります。そのため、適量を慎重に見極めて注入するデザインセンスが必要です。
腫れや痛みの程度と推奨される回数
ダウンタイムの程度は製剤によって大きく異なります。腫れの少ないBNLSなどの製剤であれば、注入直後から数時間は薬液の分だけ膨らみますが、翌日にはほとんど目立たなくなる方が多いです。
一方、デオキシコール酸濃度の高い製剤では、1週間ほどリスのように腫れたり、筋肉痛のような鈍痛を感じたりする場合があります。
効果をしっかり出すための治療回数の目安としては、腫れの少ない製剤で3回から5回以上、濃度の高い製剤で2回から3回程度が一般的です。それぞれ2週間から1ヶ月程度の間隔を空けて行います。
費用は1ccあたり数千円から1万5千円程度が相場ですが、トータルコストを事前に確認しておきましょう。
肌質改善と引き締めを狙う肌育注射と再生医療
肌育注射や再生医療は、物理的にボリュームを足すのではなく、皮膚自体の再生能力を高める治療です。肌のハリや弾力を回復させてたるみを根本から改善します。
近年、「肌育(はだいく)」という言葉が注目されています。これは、加齢によって薄くペラペラになった真皮層を厚く健康な状態に戻す治療を指します。
皮膚自体に弾力が戻れば、肌はキュッと引き締まり、小ジワや軽度のたるみは自然と改善します。
この分野の注射治療には、非架橋ヒアルロン酸にアミノ酸などを配合した製剤や、自身の血液成分を利用するPRP療法などがあります。
コラーゲン生成を促す製剤の特徴
これらは「何か異物を入れて形を作る」のではなく、「自分の肌の再生能力をブーストさせる」治療であるため、変化は非常に自然です。
顔の形を変えずに、肌の質感や密度を高めて若返りたいという方に適しています。
従来のヒアルロン酸注射が「埋める」治療だとすれば、プロファイロやスネコスなどの次世代型ヒアルロン酸製剤は「育てる」治療です。
プロファイロは、特殊な熱処理で結合されたヒアルロン酸が高濃度で配合されており、皮膚の深層で組織の再構築を誘導します。
スネコスは、特定のアミノ酸比率によってコラーゲンだけでなくエラスチンの合成も促す点が特徴です。
これまでヒアルロン酸注入が難しかった目元や口元の細かいシワ、肌のヨレ感に対して優れた効果を発揮します。
代表的な肌育・再生医療注射の種類
| 治療法・製剤名 | 主成分と作用機序 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| プロファイロ | 高濃度ハイブリッドヒアルロン酸 | 脂肪細胞や角化細胞にも働きかけ、顔全体の皮膚のリモデリング(再構築)と引き締めを行う。 |
| スネコス | 非架橋ヒアルロン酸+アミノ酸 | コラーゲンとエラスチンの合成を促進。目周りの小ジワや青クマ、肌のハリ低下に有効。 |
| PRP皮膚再生療法 | 多血小板血漿(自己血) | 自身の血液に含まれる成長因子を利用し、組織の修復と再生を促す。長期的な若返り効果。 |
自身の血液成分を利用するPRP療法
PRP(多血小板血漿)療法は、患者自身の血液を採取し、遠心分離機にかけて血小板を濃縮した成分(PRP)を気になる部位に注入する再生医療です。
血小板には、傷を治す過程で放出される多様な成長因子(グロースファクター)が豊富に含まれています。これが線維芽細胞を活性化させ、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を強力に促すのです。
自分の組織を利用するためアレルギー反応のリスクが極めて低く、効果はゆっくりと現れますが、1年から数年にわたり長く持続するのが特徴です。
自然な若返りを目指す治療の費用感
肌育注射や再生医療は、製剤のコストや加工の手間がかかるため、比較的高額になる傾向があります。
プロファイロやスネコスは1回の施術で5万円から15万円程度が相場で、初期治療として1ヶ月おきに2回から4回の施術が推奨されます。
PRP療法は採取する血液量やキットの種類によって大きく異なりますが、10万円から30万円以上の費用がかかるのが一般的です。
一度の効果で劇的に変わるというよりは、肌質そのものを底上げする治療です。不自然な顔貌になるリスクを避けたい方にとって価値ある投資となります。
部位ごとに適した注射治療の選び方
顔のたるみと一口に言っても、部位によって原因や適した治療法は異なります。悩みが多い部位別に、第一選択となる治療や組み合わせ方を解説します。
たるみ治療で重要なのは「適材適所」です。例えば、目の下の膨らみに対してヒアルロン酸を入れすぎると逆に腫れぼったくなりますし、頬のコケに対して脂肪溶解注射を打つのは逆効果です。
自分の悩みがどの部位にあり、それが「ボリューム不足」なのか「ボリューム過多」なのか、それとも「皮膚のたるみ」なのか。その原因の見極めが、失敗しない治療選びの第一歩です。
多くの場合、単一の治療だけでなく、複数の治療を組み合わせる「コンビネーション治療」が効果的です。
目の下のたるみとクマに対するアプローチ
目の下の悩みは非常にデリケートです。眼窩脂肪が飛び出して膨らんでいる「目袋」がある場合、その下の凹み(涙の溝)との段差が影(黒クマ)を作っています。
軽度であれば、凹んでいる部分に柔らかいヒアルロン酸やベビーコラーゲンを慎重に注入し、段差をフラットにすると目立たなくできます。
また、皮膚が薄く透けて見える青クマや、ちりめんジワが目立つ場合は、スネコスやPRPなどの肌育注射で皮膚自体を厚く丈夫にする治療が有効です。
部位別のおすすめ治療
| 悩みのある部位 | 主な原因 | 第一選択となる治療 | 併用すると良い治療 |
|---|---|---|---|
| 目の下のクマ・たるみ | 眼窩脂肪の突出、骨の萎縮、皮膚の菲薄化 | ヒアルロン酸注入(靭帯補強・凹み修正) | スネコス、脱脂手術 |
| ほうれい線 | 頬の脂肪下垂、骨の凹み | ヒアルロン酸注入(貴族注射・頬のリフト) | 糸リフト、HIFU |
| フェイスライン・二重顎 | 脂肪蓄積、皮膚のたるみ、広頸筋の牽引 | 脂肪溶解注射、ボトックスリフト | ヒアルロン酸、糸リフト |
| 頬のコケ・ゴルゴライン | 深部脂肪の減少、骨の萎縮、靭帯のゆるみ | ヒアルロン酸注入(ボリューム補充) | プロファイロ |
ほうれい線とマリオネットラインの改善策
ほうれい線やマリオネットラインは、単にそこに溝があるだけでなく、頬の脂肪が落ちてきているのが原因です。
そのため、溝を埋めるようにヒアルロン酸を打つだけでは、顔がパンパンになったり、不自然な口元になったりするリスクがあります。
現代の治療では、まず頬骨付近のリフトアップポイントに硬いヒアルロン酸を注入し、落ちてきた頬の肉を引き上げます。
その上で、小鼻の横の凹み(梨状口)の深い層にヒアルロン酸を注入し、土台を持ち上げます。
それでも残る浅い線に対して、柔らかいヒアルロン酸を少量注入して仕上げるという、多層的なアプローチが自然な仕上がりの鍵となります。
頬のコケとフェイスラインのもたつき解消
加齢により頬骨の下がこけてくると、顔の側面が波打ち、ひょうたん型のような輪郭になってしまいます。
この「コケ」に対しては、ヒアルロン酸でボリュームを補うと、滑らかな卵形の輪郭を取り戻せます。
一方で、フェイスラインのもたつきに対しては「引き算」の治療が必要です。
脂肪溶解注射で余分な脂肪を減らし、ボトックスで広頸筋の引き下げ作用を弱め、必要であれば顎先にヒアルロン酸を入れて「Vシェイプ」を作ります。
足し算と引き算を部位ごとに使い分けることが、メリハリのある若々しい顔を作る秘訣です。
治療を受ける前に確認すべきリスクと注意点
注射治療は「プチ整形」とも呼ばれ手軽なイメージがありますが、副作用や合併症のリスクは必ず存在します。安全に治療を受けるために、事前に知っておくべきリスクと対策をまとめます。
どのような医療行為にもリスクはゼロではありません。大切なのは、リスクを正しく理解し、万が一トラブルが起きた際にも適切に対処できる医療機関を選ぶことです。
特にヒアルロン酸注射においては、解剖学的に危険なエリアが存在し、誤った注入は重大な事故につながる可能性があります。
カウンセリングの際には、メリットばかりでなくデメリットについても医師から十分な説明を受け、納得した上で施術に臨みましょう。
内出血や腫れなどの一般的な副作用
最も頻度の高い副作用は内出血です。顔には無数の毛細血管が走っており、針を刺す際にこれらを完全に避けるのは不可能です。
内出血が起きると青紫色や黄色のアザのようになりますが、通常はコンシーラーで隠せる程度で、1週間から2週間で自然に吸収されて消えます。
また、注入直後は薬液の容量分だけ腫れたり、麻酔の影響で感覚が鈍くなったりするときがありますが、これも数日で落ち着きます。
大切なイベント(結婚式や撮影など)の直前に初めての施術を受けるのは避け、最低でも2週間から1ヶ月程度の余裕を持ってスケジュールを組むのが賢明です。
注射治療に伴う主なリスクと副作用
- 内出血・腫れ・赤み(数日から2週間程度で消失することが多い)
- 注入部位の痛みや違和感
- アレルギー反応(ボトックスや麻酔成分、製剤添加物に対して)
- 感染症(注入部からの細菌侵入)
- 左右差や凸凹、しこり(硬結)の形成
- チンダル現象(ヒアルロン酸が透けて青く見える現象)
- 血管閉塞による皮膚壊死や視力障害(極めて稀だが重大なリスク)
血管閉塞などの重篤なリスクへの理解
ヒアルロン酸注射において最も恐ろしい合併症が「血管閉塞(塞栓)」です。これは、誤って動脈内にヒアルロン酸が入ってしまったり、周囲からの圧迫で血流が遮断されたりして起こります。
その先の皮膚組織に血液が届かなくなり、最悪の場合は皮膚が壊死してしまいます。鼻や眉間、ほうれい線周辺は特にリスクが高い部位とされています。
施術中に激しい痛みを感じたり、直後に皮膚の色が白く抜けたり紫色に変色したりした場合は、直ちに医師に申し出る必要があります。
早期発見とヒアルロン酸溶解注射による対処ができれば、後遺症を残さずに回復できる可能性が高まります。
医師選びで重視するポイント
安全で満足度の高い結果を得るために最も重要なのは、医師選びです。単に「価格が安い」という理由だけで選ぶのは危険です。
その医師が形成外科専門医や皮膚科専門医の資格を持っているか、アラガン社の注入指導医などの認定を受けているかを確認しましょう。
また、カウンセリングで「あなたの顔にはこれが合う、これは合わない」と明確に診断し、リスクについても隠さず説明してくれる医師は信頼できます。
さらに、万が一のトラブルの際に、溶解注射などのリカバリー対応が迅速に行える体制が整っているクリニックを選びましょう。
よくある質問
たるみに効く注射には、ヒアルロン酸やボトックス、脂肪溶解注射や肌育注射、再生医療などの種類があります。たるみの原因や状態に合った方法を選ぶのが肌悩みを効果的に改善するポイントです。
また、クリニック選びも大切ですので、可能であれば複数のクリニックの無料カウンセリングに通い、最も信頼できるところで施術を受けましょう。
- 注射だけでフェイスリフト手術のような効果は出ますか?
-
皮膚の余りが非常に多い重度のたるみの場合、注射治療だけで余った皮膚を切除する手術と同等の効果を出すのは難しいです。
しかし、軽度から中程度のたるみであれば、ヒアルロン酸で土台を補強し、ボトックスで筋肉を調整すると、手術をせずとも十分に満足できるリフトアップ効果が得られます。
手術特有の不自然な引きつれがなく、自然な若返りができる点が注射治療の大きなメリットです。
- ヒアルロン酸を入れ続けると顔が大きくなりませんか?
-
適切な量と位置に注入している限り、顔が大きくなることはありません。むしろ、リフトアップポイントに注入すると顔の重心が上がり、小顔に見える効果があります。
しかし、過剰な量を頻繁に入れたり、本来不要な部分にまで注入したりすると、いわゆる「パンパンな顔」になるリスクはあります。
信頼できる医師のもとで、必要な量を必要な時だけ追加するというアプローチを守ることが大切です。
- 一度治療を受けると、一生やり続けなければなりませんか?
-
注射の効果は永久ではないため、効果を維持したい場合は定期的なメンテナンスが必要ですが、やめたからといって治療前よりも急激に老け込むことはありません。
むしろ、ヒアルロン酸やボトックス、肌育注射を行うと、老化の進行を緩やかにする(スローエイジング)効果が期待できます。
ご自身のペースや予算に合わせて、無理のない範囲で継続すると良いでしょう。
- ボトックスを打つと表情が固まりませんか?
-
適切な量を適切な部位に注入すれば、表情が喪失することはありません。
しかし、注入量が多すぎたり、注入箇所が不適切だったりすると、笑いにくくなる、眉が下がるといったトラブルが起こる場合があります。
特に額や口周りは繊細な調整が必要です。初めての場合は少なめの量からスタートし、効果を見ながら調整してくれる医師を選ぶと安心です。
- 痛みはどの程度ですか?麻酔は使えますか?
-
注射治療なのでチクッとした痛みはありますが、多くの製剤には麻酔成分(リドカイン)が含まれており、注入中の痛みは緩和されます。
また、施術前に表面麻酔クリームを塗ったり、冷却して痛覚を鈍らせたりすると、痛みを最小限に抑えられます。
痛みに弱い方は、笑気麻酔などを使用できるクリニックもありますので、事前に相談してみてください。
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