加齢による顔の変化とは?老化のサインと効果的なアンチエイジング法

加齢による顔の変化とは?老化のサインと効果的なアンチエイジング法

ふと気づいた目元のシワや、ぼやけてきたフェイスラインは、加齢による自然な変化です。

多くの方が「年齢だから仕方ない」と考えがちですが、実は顔の老化が起こる原因を正しく理解し、適切な対策を講じると、その進行を緩やかにして若々しい印象を保てます。

この記事では、皮膚科学に基づき、加齢によって顔にどのような変化が起こるのか、その具体的なサインと原因を詳しく解説します。

さらに、ご自身でできるエイジングケアから、美容クリニックで受けられる効果的な治療法まで、幅広く紹介します。

目次

加齢とともに顔はどう変わる?老化の基本的な知識

年齢を重ねると顔の印象が変わるのは、単に皮膚表面だけの問題ではありません。

皮膚そのものに加え、その土台となる脂肪や筋肉、骨格といった、顔を構成するすべての組織が立体的に変化するのが根本的な原因です。

皮膚構造の変化

私たちの皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という層で成り立っています。

それぞれの層が加齢によって変化すると、見た目の老化に繋がります。特に、肌のハリや弾力を支える真皮層の変化は、シワやたるみの大きな原因となります。

皮膚の各層における加齢による変化

皮膚の層主な役割加齢による変化
表皮外的刺激からの保護、水分保持ターンオーバーが遅延し、角質が厚くなる。結果、くすみやゴワつきが生じる。
真皮肌のハリ・弾力を維持(コラーゲン、エラスチン)コラーゲンやエラスチンが減少し、質も低下する。肌の土台が緩み、シワやたるみを引き起こす。
皮下組織衝撃の吸収、保温、ボリューム形成(皮下脂肪)脂肪が萎縮・下垂する。顔のボリュームが失われ、影や凹みができる原因となる。

骨格の変化による影響

あまり知られていませんが、顔の骨も加齢とともに萎縮し、形が変わります。特に、目の周りの骨(眼窩)は拡大し、頬骨や顎の骨は後退する傾向があります。

骨という土台が小さくなるため、その上の皮膚や脂肪を支えきれなくなり、顔全体のたるみや凹みを引き起こします。

例えば、眼窩が広がると目の下のくぼみが深くなり、疲れ顔の原因になります。

筋肉の衰えと顔つきの変化

顔には多くの表情筋が存在し、複雑な表情を作り出しています。しかし、体の筋肉と同じように、表情筋も使わなければ衰え、加齢とともにその力は弱まります。

筋肉が衰えると、皮膚や脂肪を重力に逆らって支える力が弱まり、たるみに繋がります。

また、筋肉の緊張が低下すると顔全体のメリハリがなくなり、ぼんやりとした印象になる場合もあります。

顔に現れる老化のサイン

加齢による顔の変化は、さまざまな「サイン」として現れます。多くの方が悩む代表的なサインが、「シワ」「たるみ」「シミ・くすみ」です。

これらはそれぞれ異なる原因で発生し、見た目年齢を大きく左右します。ご自身の顔にどのサインが現れているかを確認してみましょう。

シワ 年齢を刻む線

シワは主に皮膚の乾燥や、真皮層のコラーゲン・エラスチンの減少によって生じます。

表情の癖によって同じ場所が繰り返し折れ曲がって刻まれる「表情ジワ」と、肌の弾力低下によって無表情の時でも現れる「構造ジワ」に分けられます。

特に目元や口元など、皮膚が薄く動きが多い部位にできやすいのが特徴です。

たるみ フェイスラインの崩れ

たるみは、顔の老化の中でも特に印象を大きく変えるサインです。皮膚の弾力低下、皮下脂肪の下垂、表情筋の衰え、骨格の萎縮といった複数の要因が重なって生じます。

ほうれい線が深くなったり、フェイスラインがもたついたり、マリオネットラインが現れたりするのは、たるみが原因です。

代表的な老化サインの原因

サイン主な原因特徴
シワ乾燥、紫外線、表情の癖、コラーゲン減少目元、口元、額など動きの多い部分に現れやすい。
たるみ皮膚の弾力低下、筋力低下、脂肪の下垂、骨の萎縮フェイスラインの崩れ、ほうれい線、ゴルゴラインなど、広範囲に影響する。
シミ紫外線によるメラニンの過剰生成、色素沈着頬骨の高い位置など、日光に当たりやすい部分にできやすい。

シミ・くすみ 肌の透明感を奪う影

長年にわたって浴び続けた紫外線の影響でメラニンが過剰に生成され、排出されずに皮膚に残ってシミ(老人性色素斑)となります。

また、血行不良や肌の乾燥、表皮のターンオーバーの乱れは顔全体が暗く見える「くすみ」の原因となり、疲れた印象や不健康な印象を与えます。

肌質の変化

加齢とともに皮脂の分泌量が減少し、皮膚の水分保持能力も低下するため、肌は乾燥しやすくなります。

乾燥は小ジワの直接的な原因になるだけでなく、肌のバリア機能を低下させ、外部刺激に弱い敏感な状態を招く場合もあります。

触った時のハリや弾力が失われたと感じるのも、真皮層の変化による肌質の変化です。

日常に潜む老化の原因

顔の老化は加齢だけでなく、無意識の表情の癖や姿勢の悪さ、食生活の乱れといった日常の習慣によっても加速します。

ご自身の生活の見直しが、効果的なアンチエイジングに繋がります。

表情の癖がシワを定着させる

考え事をする時に眉間にシワを寄せる、驚いた時に額にシワを寄せるなど、特定の表情を繰り返す癖がある方もいるでしょう。

若い頃はすぐに元に戻っていたシワも、年齢とともに肌の弾力が失われると、次第に表情を作っていない時でも消えない深いシワとして定着してしまいます。これが表情ジワの正体です。

姿勢の悪さが顔のたるみを引き起こす

スマートフォンを見る時のうつむいた姿勢や、デスクワークでの猫背は首や肩の血行不良を招くだけでなく、顔の皮膚や筋肉にも影響を与えます。

特に、顎を引いた状態が続くと首の前の筋肉(広頸筋)が縮こまり、フェイスラインのたるみや二重あごの原因になります。

顔と体は一枚の皮で繋がっているのを意識しましょう。

顔の老化を加速させる生活習慣

習慣・癖引き起こされる可能性のあるサイン対策
頬杖をつく片側のほうれい線、顔の歪み意識して両手を使う、机に肘をつかない。
片側だけで噛む顔の左右差、片側のたるみ食事の際は左右均等に噛むことを意識する。
うつ伏せ寝・横向き寝顔の片側にシワ、たるみできるだけ仰向けで寝る。枕の素材や高さを調整する。

食生活の乱れと肌の糖化・酸化

美しい肌を保つためには、内側からのケアも重要です。糖質の多い食事は、体内でタンパク質と結びついて「糖化」という現象を引き起こします。

この現象によって生成されるAGEs(最終糖化産物)は肌のコラーゲンを硬くてもろくし、黄ぐすみやハリの低下を招きます。

また、体の「酸化(サビ)」も老化の大きな要因であり、抗酸化作用のある食品を積極的に摂る工夫が大切です。

年代別に見る顔の変化とエイジングケア

加齢による顔の変化は誰にでも平等に訪れますが、その現れ方は年代によって異なります。

それぞれの年代で直面しやすい肌悩みを理解し、その段階に合った適切なケアを行うと、効果的に老化の進行をコントロールできます。

30代 気づき始める初期サイン

20代の頃との違いを感じ始めるのが30代です。目元の小ジワや、笑った時にうっすらと残るほうれい線など、老化の初期サインが現れます。

肌の水分保持能力が低下し始め、乾燥を感じやすくなるのもこの時期です。

まだ変化は軽微ですが、この段階から保湿ケアと紫外線対策を徹底する習慣が、将来の大きな悩みを作らないための鍵となります。

40代 加速する変化への対策

コラーゲンやエラスチンの減少が本格化し、シワが深くなり、たるみも明確に感じられるようになります。

フェイスラインのもたつきや、頬のボリュームダウン(ゴルゴライン)に悩む方が増える時期です。

セルフケアだけでは追いつかないと感じ始めるのもこの年代であり、美容クリニックでの治療を検討し始める方が多くなります。

年代別の主な悩みと推奨されるケア

年代主な悩み推奨されるケア
30代乾燥、小ジワ、くすみ徹底した保湿、紫外線対策、抗酸化成分配合のスキンケア
40代深いシワ、たるみ始め、シミ高機能スキンケア、HIFUやレーザーなど初期のたるみ治療
50代以降本格的なたるみ、ボリューム減少リフトアップ治療、注入治療など複合的なクリニック治療

50代以降 本格的なたるみとの向き合い方

女性ホルモンの減少も相まって、肌のハリや弾力が著しく低下します。

皮膚だけでなく、脂肪の下垂や骨の萎縮による影響も大きくなり、顔全体のたるみが深刻化します。シワやたるみが複雑に絡み合い、セルフケアでの改善は困難になります。

この年代では、失われたボリュームを補ったり、緩んだ組織を引き上げたりする、より積極的な美容医療が有効な選択肢となります。

自宅でできるアンチエイジング法とその限界

スキンケアや食事、紫外線対策といった自宅でのセルフケアは老化の予防に有効ですが、すでに進行したシワやたるみを改善するには限界があります。

予防と改善の違いを理解しておくことが大切です。

効果的なスキンケア成分の選び方

エイジングケアを目的としたスキンケア製品を選ぶ際は、配合されている成分に注目しましょう。

肌のハリをサポートする成分や、シミを予防する成分を日々のケアに取り入れると良いです。

  • レチノール
  • ビタミンC誘導体
  • ナイアシンアミド
  • セラミド

顔の老化を防ぐ食事と栄養素

肌は食べたもので作られます。バランスの取れた食事を基本とし、特に肌の老化に対抗する栄養素を意識して摂取しましょう。

タンパク質は肌の材料となり、ビタミンやミネラルはその働きを助けます。

エイジングケアに役立つ栄養素

栄養素主な働き多く含む食品
タンパク質皮膚やコラーゲンの材料となる肉、魚、卵、大豆製品
ビタミンCコラーゲン生成を助ける、抗酸化作用パプリカ、ブロッコリー、キウイ
ビタミンE強い抗酸化作用、血行促進ナッツ類、アボカド、かぼちゃ

紫外線対策の重要性

肌老化の最大の外的要因は紫外線です。「光老化」という言葉があるように、紫外線を浴び続けると、コラーゲンやエラスチンを破壊し、シワやたるみを深刻化させます。

季節や天候に関わらず、一年中日焼け止めを使用する習慣をつけましょう。

ただし、これらのセルフケアは、あくまでも老化の「予防」や「進行を遅らせる」が主な目的です。

すでに深く刻まれてしまったシワや、進行したたるみをセルフケアだけで元に戻すのは、残念ながら困難です。より積極的な改善を望む場合は、美容クリニックでの治療が必要になります。

美容クリニックで叶える本格的なたるみ治療

美容クリニックでは、セルフケアでは難しい本格的なたるみ治療が可能です。

HIFU(ハイフ)やレーザー、注入治療など、たるみの原因となる皮膚の深層へ直接働きかけ、根本的な改善を目指します。

切らないたるみ治療(HIFU・高周波)

メスを使わずに、超音波や高周波のエネルギーを用いてたるみを改善する治療法です。

HIFU(ハイフ)は、皮膚の土台であるSMAS筋膜に熱エネルギーを集中させて引き締めて、強力なリフトアップ効果が期待できます。

高周波(RF)治療は、皮膚の真皮層に熱を加えてコラーゲンの生成を促し、肌のハリや弾力を高めます。

主な切らないたるみ治療の比較

治療法アプローチする層主な効果
HIFU(高周波焦点式超音波)SMAS筋膜、皮下組織フェイスラインのリフトアップ、引き締め
高周波(RF)真皮層、皮下脂肪層肌のハリ・弾力アップ、引き締め
レーザー表皮、真皮層肌質改善、小ジワ、毛穴の引き締め

肌のハリを改善するレーザー治療

特定の波長の光を肌に照射し、熱エネルギーによって真皮層のコラーゲン生成を促進する治療です。

肌のハリや弾力を取り戻し、小ジワや毛穴の開きを改善する効果があります。肌の質感から若返らせたい方に向いています。

ボリュームを補う注入治療

加齢によって失われた顔のボリュームを、ヒアルロン酸などの注入剤で補う治療法です。

こけた頬や深いほうれい線、目の下のくぼみなどをふっくらさせて、若々しく元気な印象を取り戻します。また、シワの溝を埋める目的でも使用します。

自分に合った治療法を見つけるためのポイント

ご自身に合った治療法を見つけるには、「悩みの種類」「期待する効果」「信頼できるクリニック選び」という3つのポイントが重要です。

専門のクリニックでカウンセリングを受け、医師と相談しながら決定するのが基本ですが、事前にご自身の希望を整理しておくとスムーズです。

悩みの種類と深さで選ぶ

自分の最も気になる悩みを確認しましょう。フェイスラインのもたつきなのか、目元の小ジワなのか、頬のこけなのか、悩みの種類によって適した治療法が異なります。

また、たるみやシワがどの程度進行しているかによっても、選択肢は変わってきます。

期待する効果と持続期間

一度の治療で劇的な変化を望むのか、少しずつ自然に改善したいのか、ご自身の希望を明確にするのも大切です。

治療法によって効果の現れ方や持続期間は異なりますので、長期的な視点で治療計画を立てましょう。

  • 即時的な効果
  • ダウンタイムの有無
  • 効果の持続性
  • 費用

信頼できるクリニック選び

アンチエイジング治療は、どの機器を使うか、どの薬剤を使うかだけでなく、「誰が」治療を行うかが非常に重要です。

顔の解剖学を熟知し、あなたの悩みに真摯に耳を傾け、適切な治療法を提案してくれる経験豊富な医師がいるクリニックを選びましょう。カウンセリングの丁寧さも大きな判断基準になります。

治療法選択のチェックポイント

確認項目考慮すべき点具体例
主な悩みシワ、たるみ、シミ、ボリュームロスなどフェイスラインを引き上げたい→HIFU, 糸リフト
ダウンタイム仕事や私生活への影響は許容できるか休みが取れない→ダウンタイムの少ない高周波治療
予算治療にかけられる費用はどのくらいか予算を抑えたい→まずはレーザー治療から試す

顔の老化に関するよくある質問

加齢による顔の変化には、皮膚構造や骨格、筋肉や脂肪などが複雑に関わっています。

早い段階であれば、肌のハリをアップさせる成分や保湿の含まれた化粧品の使用、紫外線対策の徹底、抗酸化作用のある食べ物、摩擦を最小限に抑えたスキンケアなどで予防が可能です。

一方、進行してしまったたるみや深く刻まれたシワを改善したい場合は、美容医療が良い選択肢となります。

治療の痛みはどのくらいですか?

治療法によって痛みの感じ方は異なります。HIFUは骨の近くで響くような熱感を感じる場合があり、注入治療は針を刺す際のチクッとした痛みがあります。

多くの治療では、麻酔クリームや冷却などで痛みを最小限に抑える工夫をしていますので、痛みに不安がある方はカウンセリング時にご相談ください。

効果はいつから実感できますか?

ヒアルロン酸注入のように施術直後から変化が分かる治療もあれば、HIFUや高周波のように、コラーゲンの生成が促されることで1~3ヶ月かけて徐々に効果が現れる治療もあります。

効果のピークや持続期間は治療法によって様々ですので、事前の説明でしっかりと確認しましょう。

治療後に気をつけることはありますか?

治療内容によって異なりますが、一般的には施術当日の飲酒や激しい運動、長時間の入浴は避けるように指示されるケースが多いです。

また、レーザー治療後などは肌が敏感になっているため、徹底した保湿と紫外線対策が重要になります。詳細は治療を受けるクリニックの指示に従ってください。

治療費用はどのくらいかかりますか?

費用は治療の種類、使用する機器や薬剤、施術範囲によって大きく異なります。また、自由診療のため、クリニックによって価格設定も様々です。

数万円から数十万円と幅があり、多くのクリニックではウェブサイトに料金表を掲載しています。カウンセリング時に、提示された治療法の総額費用を明確に確認しましょう。

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この記事を書いた人

Dr.寺井美佐栄のアバター Dr.寺井美佐栄 ミサクリニック 六本木本院 院長

日本抗加齢医学会認定専門医。日本美容皮膚科学会、日本レーザー医学会、日本産業衛生学会専門医。
複数の大手美容皮膚科で10年以上の院長経験を経て、2022年9月にMiSA Clinic(ミサクリニック)を開業。YouTube等でも発信してきた、メスを使わずに”ナチュラルなキレイ”を引き出す技術には定評があり、ありがたいことに「SNSを見ました!」という方や、紹介・口コミ経由でたくさんのご相談を頂いてきました。皆様と共に、MiSA Clinicスタッフ一同、共に年を重ね、末永くお付き合いできる関係を目指して参ります。

資格
アラガン社ボトックスビスタ認定医
アラガン社ヒアルロン酸注入認定医

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