たるみ治療の一つとして人気を集めている糸リフト。メスを使わずにフェイスラインや頬のリフトアップを図れるこの施術は、「ナチュラルに若返りたい」「切らずにたるみを改善したい」と願う多くの方に選ばれています。
しかし、ひと口に糸リフトといっても、その種類は多岐にわたり、素材や構造、効果の持続期間、ダウンタイムなど、それぞれに特徴があります。
この記事では、糸リフトの種類を素材・構造・製品名などの観点から分類し、それぞれの違いや選び方について詳しく解説していきます。
1. 糸リフトとは?
糸リフトは、特殊な医療用の糸を皮下に挿入し、たるんだ皮膚を物理的に引き上げることでフェイスラインを整える施術です。挿入された糸は肌の奥でコラーゲン生成を促すため、たるみの改善だけでなく、肌質の向上やハリ感アップといった美容効果も期待できます。
メスを使わずに行える点が大きなメリットであり、施術時間も短く、日常生活への影響が少ないことから、比較的気軽にチャレンジできる美容医療として認知が広がっています。
従来の外科的フェイスリフトに比べてナチュラルな仕上がりを好む方、ダウンタイムの長さがネックになっていた方にとって、糸リフトは非常に魅力的な選択肢です。
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2. 糸の素材で見る4つの代表的な種類
糸リフトで使用される糸には、さまざまな素材が存在し、それぞれの素材によって吸収のスピードやリフト力、肌への刺激の強さが異なります。ここでは代表的な4種類の素材について詳しくご紹介します。
PDO(ポリジオキサノン)
PDOは医療用縫合糸として古くから用いられている素材で、安全性の高さが特徴です。比較的柔らかく扱いやすい素材で、リフトアップよりも「肌のハリや引き締め」を重視した施術に使われることが多く、ショッピングリフトなどの細いスレッドに多く見られます。
体内に吸収されるまでの期間は6〜8か月程度とされており、効果の持続期間もそれに準じます。
コラーゲン生成による肌質改善の効果が目的となるため、即効性のある大きな引き上げというよりは、「じわじわとした若返り」に向いています。
PLLA(ポリ-L-乳酸)
PLLAは近年注目されている素材で、体内に吸収されるまで約12〜18か月と比較的長く、持続性の高さが魅力です。
やや硬めの質感を持ち、糸の挿入時にしっかりとした引き上げ感が得られることから、「輪郭の引き締め」や「たるみの改善」を目指すケースに適しています。
ただし、硬さゆえに術後のつっぱり感や違和感が出やすいこともあり、繊細な部位には適応を見極める必要があります。
PCL(ポリカプロラクトン)
PCLは非常に柔軟でしなやかな素材で、近年では「ヴィーナスリフト」などの人気施術に使われています。
吸収にかかる期間は18〜24か月と長く、ゆっくりと分解されながらもコラーゲン生成を促進し続けるため、肌の弾力や質感に対するアプローチに優れています。
とくに「ナチュラルな表情のまま、しっかりと引き上げたい」といったニーズに応える素材として、PCLの注目度は年々高まっています。
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複合素材(PLCLなど)
PLCLは、PLLAとPCLを組み合わせた複合素材で、両者の特性をバランスよく兼ね備えているのが特徴です。
しなやかさと持続性を両立し、硬すぎず柔らかすぎない絶妙な仕上がりを可能にします。
製品によっては「違和感が少ないのにしっかり効果が続く」といった評価もあり、近年では様々なブランドがPLCL素材を採用した糸リフトを提供しています。
3. 溶ける糸と溶けない糸の違い
糸リフトには「溶ける糸(吸収糸)」と「溶けない糸(非吸収糸)」があります。近年の主流は溶ける糸であり、体内で分解・吸収されるため異物が残らず、将来的なトラブルのリスクが低減されます。
一方、溶けない糸はかつて主流であった手術的フェイスリフトに使われていたもので、確かなリフト力がある反面、時間の経過によって皮膚のたるみが変化した際に修正が難しくなることがあり、現在ではあまり一般的ではありません。美容医療の現場では「安全性」と「自然な変化」を重視し、吸収糸が主に採用されています。
4. 糸の形状と構造による分類
糸リフトの効果や術後の仕上がりは、「糸の素材」だけでなく「構造や形状」によっても大きく異なります。ここでは代表的な3つの形状とその特徴を解説します。
コグ(トゲ)付き
コグとは、糸に付けられた小さなトゲや返しのことを指します。このコグが皮下の組織に引っかかることで、糸の物理的な牽引力が生まれ、肌を引き上げることができます。リフトアップを主目的とした糸リフトでは、多くのケースでこのコグ付きの糸が使われます。
糸の種類によっては「360度コグ」や「バーブ付き」など、コグの配置方法や形状にも違いがあり、それによってリフト力や術後の違和感の有無が変わってきます。
トゲなしスレッド(スムース糸)
スムース糸とは、コグのない滑らかな糸で、主に肌のハリ改善や微細なコラーゲン生成を目的とした施術に使用されます。引き上げ効果はほとんどなく、リフトアップを望む方には不向きですが、ダウンタイムが非常に少なく、美肌治療の一環として受けられることが多いです。
肌に刺激を与えず、ナチュラルに肌質改善を行いたい方には適しており、ショッピングリフトが代表例です。
メッシュ構造
近年登場した新しい形状のひとつがメッシュ構造です。代表的なものに「ヴィーナスリフト」などがあり、糸が網目状になっており、コグだけでなく面全体で皮膚を支える設計になっています。
これにより、広範囲にわたるリフトアップと、術後の安定感、違和感の少なさが両立されており、従来のコグ型糸よりもナチュラルな仕上がりを好む方に人気が高まっています。
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5. 製品名で見る代表的な糸リフトの種類
美容医療の現場では、素材や構造に基づいた糸の特徴だけでなく、具体的な製品名で施術を選ぶケースも多くあります。ここでは代表的な5種類の糸リフト製品を紹介し、それぞれの特徴を比較していきます。
テスリフト
PCL素材をベースに、メッシュ構造とコグが組み合わさった先進的な糸です。
しっかりとしたリフト力がありながらも、術後の腫れや違和感が比較的少ないとされており、「たるみをしっかり上げつつ、ナチュラルに見せたい」方に支持されています。
VOVリフト
PDO素材で構成された比較的コストパフォーマンスの良い糸です。
コグ付きで引き上げ力もあり、顔全体のたるみに対するアプローチとして選ばれています。持続期間はやや短めですが、初めて糸リフトに挑戦する方にも向いている施術です。
プリマリフト
PLLA素材を使用した糸で、リフト力と持続性を両立した製品です。
コグの強度が高く、ややしっかりとした引き上げ感が特徴的。やや硬めの質感があるため、肌質によってはつっぱりを感じるケースもありますが、明確な変化を望む方に向いています。
ショッピングリフト
細いPDO製のスムース糸を多数(10本〜100本以上)挿入する施術です。
引き上げ効果はほとんどなく、肌のハリ感や透明感、きめの改善が目的。ナチュラル志向の方や若年層、予防美容を意識している方に選ばれています。
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シルエットソフト
PLLA製の糸にバイオコーンと呼ばれる特殊な引っかかり構造がついた製品です。
皮膚を引っかけて固定する力が強く、輪郭の引き締めに優れています。欧米でも使用されている国際的な糸で、顔全体のリフトアップに適した選択肢となっています。
6. 糸の種類による持続期間の違い
糸リフトを検討する際、「どれくらい効果が続くのか」は多くの方にとって重要な判断材料になります。
糸の種類ごとに、吸収スピードや持続期間には明確な違いがあり、自分に合った施術を選ぶ上で知っておきたいポイントです。
各素材の吸収スピードと肌の変化
一般的に、PDOは6〜8ヶ月で吸収されやすく、PLLAは12〜18ヶ月、PCLは18〜24ヶ月ほどかけてゆっくりと体内で分解・吸収されていきます。
吸収される過程で、糸の周囲にはコラーゲンやエラスチンといったハリ成分が生成され、肌の引き締めやハリ感の改善が継続して感じられます。たとえ糸自体が吸収されても、その後に生成された自己コラーゲンが肌に残るため、完全に元に戻るというわけではありません。
ただし、体質や代謝、生活習慣によって分解スピードには個人差があるため、あくまで目安として考えることが大切です。
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リタッチや再施術を考慮した選択の目安
持続期間が長いからといって、それが必ずしも最適とは限りません。引き上げの強さや肌との相性によっては、長期間残ることで違和感を覚える方もいます。
一方で、短期間タイプの糸は「少しずつ様子を見ながら回数を分けて調整したい」「フェイスラインの変化をその都度確認したい」という方には安心感があります。
糸リフトは定期的なメンテナンスを前提に計画する施術のため、1回で完結させようとせず、肌の状態に応じて段階的に行う選択肢も視野に入れると良いでしょう。
7. 糸リフトの種類で迷ったときのチェックポイント
数ある糸リフトの中から、自分に合った種類を選ぶのは簡単ではありません。どれが正解というものではなく、「目的」と「肌の状態」によって最適解が変わる施術だからこそ、以下の視点から整理してみましょう。
仕上がりは「自然さ」か「しっかり引き上げ」か
ナチュラルな仕上がりを求めるなら、PCL素材の柔らかい糸やメッシュ構造の糸、ショッピングリフトなどが向いています。
逆に、しっかりとしたリフトアップ効果を希望するなら、強度の高いコグ付き糸やPLLA素材の糸が適しています。
フェイスラインや頬のたるみが進んでいる方ほど「強めの引き上げ」を要するケースが多く、逆に軽度なたるみであればナチュラル系でも十分効果を実感できます。
優先したいのは「持続期間」か「ダウンタイムの短さ」か
PCLやPLLAのような長期持続型の糸は吸収に時間がかかる分、腫れや内出血といったダウンタイムが長くなる傾向にあります。一方で、PDOや細めの糸はダウンタイムが軽く、日常生活への影響も少ないのが利点です。
イベント前に手早く肌を整えたいのか、長期的に顔立ちを改善したいのかという目的によって、選ぶ糸の方向性は大きく変わってきます。
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自分の肌質・年齢に合った素材を選べているか
例えば乾燥肌や薄い肌の方にとっては、強いコグ付きの糸が刺激となる場合があり、違和感やひきつれが起こることも。一方で、脂肪が多くたるみが強い場合は、ソフトな糸では効果が足りないと感じるかもしれません。
肌の厚み・弾力・たるみ具合などを医師に正確に評価してもらい、それに適した素材を選ぶことが満足度の高い結果につながります。
糸を入れる部位や悩みに合っているか
フェイスラインや頬など広範囲にリフトアップが必要な場合は、牽引力のある糸を使用する必要があります。
逆に、眉や口角、あご下などのピンポイントの悩みには、短めの糸やショッピングリフトなどが適していることもあります。
部位によって糸の設計や本数、構造を変える「カスタマイズ設計」が可能なクリニックを選ぶと、より自然で違和感のない仕上がりが期待できます。
8. まとめ
糸リフトには多様な種類が存在し、その違いは素材、構造、持続期間、リフト力、肌なじみなどさまざまな観点から分類されます。PDOやPLLA、PCLなどの素材ごとに特徴があり、目的や肌質に応じて最適な選択肢は異なります。
また、糸の形状も「コグ付き」「スムース」「メッシュ」などによって効果やダウンタイムの程度が変わるため、単純に「人気の糸」や「持続期間が長い糸」で選ぶのではなく、自分の希望や悩みにフィットした種類を選ぶことが大切です。
初めての糸リフトでも安心して臨むためには、カウンセリング時に丁寧な説明を受け、顔全体の状態をしっかり診断してもらうことが成功のカギとなります。
素材や製品の情報を正しく理解したうえで、信頼できるクリニックとともに、自分にとってベストな糸リフトを見つけていきましょう。
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