ニキビが治っても、赤みだけが残ってしまう——そんな悩みを抱える方は少なくありません。
この「赤いニキビ跡」は、皮膚の炎症が落ち着いたあとも毛細血管の拡張や新生が続くことで生じる「炎症後紅斑(えんしょうごこうはん)」と呼ばれる状態です。時間が経てば自然に薄くなることもありますが、生活習慣やスキンケア次第では長引いたり、色素沈着へ移行してしまうこともあります。
近年では、VビームレーザーやIPL(フォトフェイシャル、ルメッカ)など、赤みに特化した美容皮膚科治療も進化しており、早期に正しいケアを行うことで、跡を目立ちにくく改善できる場合があります。
一方で、「赤みと色素沈着の違いがわからない」、「自宅ケアでどこまでできるの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。この記事では、赤いニキビ跡が残る原因から、自宅でのケア方法、美容皮膚科での治療、そして再発を防ぐための生活習慣まで、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
1.赤いニキビ跡が残る原因とは
赤いニキビ跡は、炎症後紅斑(えんしょうごこうはん)と呼ばれる特殊な状態で、ほかのニキビ跡とは原因も治療法も異なります。単に「炎症が長引いた跡」ではなく、皮膚の奥で起きている血管や組織の変化が関係しています。
一見ニキビが治っているように見えても、実際には肌の修復が完了していないため、赤みが何週間も続くことがあります。ここでは、赤いニキビ跡が残る主な原因を4つに分けて解説します。

毛細血管の拡張・新生
赤いニキビ跡の最大の特徴は、毛細血管が拡張したままになっていることです。
ニキビの炎症が起きると、体は自然治癒の一環としてその部分に酸素と栄養を届けるため、毛細血管を一時的に拡張させます。
通常は炎症が治まると血管も収縮しますが、長期間刺激を受けた部分では、毛細血管が新たに増えたり、拡張したまま残ってしまうことがあります。この状態が「炎症後紅斑」と呼ばれる赤みの正体です。
頬やあごなど、皮膚が薄く血流の多い部位で目立ちやすく、Vビームレーザーやルメッカによる治療で改善するケースが多く見られます。
炎症の長期化や再発
ニキビを繰り返すうちに炎症が慢性化し、真皮層までダメージが及ぶと、修復過程で赤みが長引くことがあります。
特に、白ニキビや黒ニキビの段階で適切に対処せず、炎症性の赤ニキビや黄ニキビに進行すると、治っても毛細血管や線維組織の修復に時間がかかるため、赤みが数か月間残ることもあります。また、治りかけのニキビを触ったり、強くこすり洗いしたりすると、再び炎症が起きて治癒と炎症を繰り返す悪循環に陥ります。赤みを早く引かせるためには、炎症を悪化させないケアが大切です。
皮膚の菲薄化(バリア機能の低下)
長期間の炎症や刺激によって、角質層が薄くなり、肌が外部刺激に敏感になることも赤みを長引かせる原因です。
ピーリング剤やスクラブ洗顔の使いすぎ、強い摩擦を伴うクレンジングなどは、肌のバリアを壊しやすく、慢性的な炎症が続く状態をつくります。皮膚が薄く(菲薄化)すると、血管が透けて見えやすくなり、わずかな刺激でも赤みが悪化します。
このような場合は、刺激を与えない優しいスキンケアに切り替え、保湿とバリア機能の回復を最優先にすることが大切です。
紫外線や摩擦による刺激
赤みのあるニキビ跡は、外からの刺激に非常に敏感な状態です。
紫外線を浴びると炎症を誘発し、毛細血管が再び拡張して赤みが悪化します。さらに、紫外線によってメラノサイトが活性化すると、赤みが茶色い色素沈着へと変化してしまうこともあります。
また、マスクや寝具のこすれ、髪の毛の刺激など、日常の摩擦にも注意しましょう。
肌に刺激が加わるたびに炎症が起こるため、紫外線対策と摩擦の回避を同時に意識することが、赤みを悪化させない基本となります。このように、赤いニキビ跡は「炎症の残り」ではなく、血管・組織・バリア機能の複合的なトラブルであることがわかります。
原因を正しく理解すれば、今後のケアや治療選びの方向性が見えてくるでしょう。
2.赤みのあるニキビ跡と他のニキビ跡の違い
赤みのあるニキビ跡は、皮膚の浅い層(表皮から真皮の境界部)で毛細血管が拡張している状態です。血流が増えているために赤く見えますが、実際にはメラニン色素は関係していません。そのため、美白化粧品やピーリングでは改善しにくく、血管にアプローチする光治療(Vビームレーザーやルメッカなど)が効果的です。
一方、茶色いニキビ跡(色素沈着)は、炎症によって刺激されたメラノサイトがメラニンを過剰に作り出すことが原因です。こちらは、ターンオーバーの促進やメラニン還元を目的としたレーザートーニング・ビタミンC誘導体・トラネキサム酸導入などで改善が期待できます。
また、凹み(クレーター)タイプのニキビ跡は、炎症が真皮層まで及んでコラーゲンが破壊された結果、皮膚が陥没してできるもので、ダーマペンやサブシジョン、フラクショナルレーザーなど再生医療的アプローチが必要です。このように、「赤いニキビ跡」はあくまで血流と炎症の問題であり、他のタイプのニキビ跡とは発生メカニズムが異なります。
そのため、正確な見極めと、それぞれの原因に合った治療法を選ぶことが、早く確実に改善させるための第一歩です。
3.自宅でできるニキビ跡の赤みケアの方法
赤いニキビ跡は、適切なスキンケアを続けることで少しずつ薄くしていくことが可能です。
ただし、刺激の強いケアや過度な洗顔は逆効果になることもあります。
ここでは、肌にやさしく、血管や炎症を悪化させないための自宅ケアを具体的に紹介します。
肌をこすらないよう優しく洗顔する
赤みのある肌はバリア機能が低下しており、ほんの少しの摩擦でも炎症が再発することがあります。
洗顔の際は、泡で汚れを包み込むように洗い、こすらないことが鉄則です。
指先でこするのではなく泡を肌の上で転がすように洗い、すすぎはぬるま湯でやさしく行いましょう。また、スクラブやピーリング成分入りの洗顔料は一時的にツルツルしますが、赤みを悪化させる原因になるため赤みがある時は避けましょう。
タオルで水分を拭き取る際も、押さえるように軽く当てるだけで十分です。
保湿をしっかり行い、バリア機能を守る
炎症後の肌は乾燥しやすく、皮膚表面のバリアが不安定になっています。
化粧水で水分を与え、乳液やクリームで油分を補う二段階保湿を行いましょう。
セラミドやヒアルロン酸、グリセリンなど保湿成分を含む製品を選びましょう。また、洗顔後は肌が乾燥しやすいため、入浴後3分以内に保湿するのが理想です。化粧水から乳液の間は、時間を置かずすぐに塗ることで、乾燥を防ぐことができます。
これにより血管の拡張を抑え、赤みの沈静にもつながります。
日焼け止めで紫外線から肌を守る
紫外線は、炎症を悪化させて赤みを長引かせる最大の要因です。
外出時だけでなく、曇りの日や室内でもUVケアを徹底しましょう。
SPF30、PA++以上の日焼け止めを使い、2時間から3時間おきに塗り直すことがポイントです。
また、UVカット効果のある下地やパウダーを重ねると、紫外線を二重で防げます。
赤みが強い時期は、日焼け止めを塗るとしみる場合があるため、低刺激タイプや敏感肌用のミルク・ジェルタイプを選びましょう。
就寝前には、日焼け止めもメイク落としでしっかり落とし、睡眠中も肌を刺激から守りましょう。
ビタミンC誘導体・ナイアシンアミド配合の化粧品を取り入れる
スキンケアで赤みを落ち着かせたい場合、血管収縮や抗炎症作用をもつ成分を選ぶことがポイントです。
代表的なのがビタミンC誘導体とナイアシンアミドです。
ビタミンC誘導体は、メラニン生成の抑制だけでなく、抗炎症作用や皮脂抑制作用もあり、赤みの鎮静に効果的です。
ナイアシンアミドは皮膚の保湿力、バリア機能を高める働きを持ちます。
これらの成分を含む美容液や化粧水を朝晩に使うことで、肌全体のトーンアップや赤みの軽減にもつながります。
睡眠・食事・水分摂取を整える
赤いニキビ跡を早く改善するには、体の内側からのケアも欠かせません。
睡眠不足はホルモンバランスを乱し、皮脂分泌や炎症を悪化させる原因になります。
6時間から8時間の睡眠を確保し、就寝前のスマホやカフェイン摂取を控えるようにしましょう。
また、ビタミンB群・C・E・亜鉛を多く含む食材(野菜、果物、魚、ナッツなど)を意識的に摂取することで、肌の修復と代謝がスムーズになります。
1日1.5Lから2Lを目安に水分をとることも、血流を促進し、炎症後の回復を早めるサポートになります。
このように、自宅ケアでは「刺激を与えず、守りながら整える」ことが最も大切です。ただし、3か月以上続けても赤みが消えない場合や悪化している場合は、毛細血管が拡張している可能性が高いため、早めに皮膚科を受診しましょう。
4.美容皮膚科で行うニキビ跡の赤みの治療法
自宅ケアで改善が難しい赤いニキビ跡は、美容皮膚科での医療機器による治療が効果的です。
血管の拡張や炎症を直接ターゲットにすることで、時間をかけずに赤みを軽減できるほか、肌全体のトーンや質感も整います。
ここでは、代表的な治療法とそれぞれの特徴を紹介します。
Vビームレーザー(色素レーザー)
Vビームレーザーは、赤い色素(ヘモグロビン)に反応する波長のレーザーを使い、毛細血管の拡張をピンポイントで治療する方法です。
拡張した血管を熱で凝縮し、赤みの原因となる炎症後紅斑を改善します。
施術中は軽いチクチク感を感じる程度で、麻酔クリームを使用すれば痛みはほとんどありません。照射後は赤みが一時的に強まったり、軽いかさぶたができることがありますが、2日から3日で落ち着きます。
保険診療では3ヶ月に1回、自由診療では最低でも2週間から4週間空けて受けることで、徐々に改善していきます。
IPL(フォトフェイシャル・ルメッカ)
IPL(IntensePulsedLight)は、レーザーとは異なり、複数の波長の光を広範囲に照射する治療法です。
赤みだけでなく、色素沈着やくすみなども同時にケアできるため、「全体的に顔の印象を明るくしたい方」に向いています。
IPLはメラニンとヘモグロビンの両方に反応し、炎症後紅斑と色素沈着が混在している肌にも効果を発揮します。
照射後は軽いほてりを感じる程度で、ダウンタイムが短く、翌日からメイクも可能です。
クリニック毎の方針によりますが、2週間から4週間おきに5回から8回程度の施術で、肌全体のトーンアップが期待できます。その後も1か月から2か月程度空け、施術を受けることで赤みのない状態を維持することができます。
ピコレーザー
ピコレーザーは、ピコ秒(1兆分の1秒)単位で照射される超短時間パルスのレーザーです。
熱によるダメージが少なく、炎症後の敏感な肌にも安全に使用できます。
毛細血管や微細な色素を分解することで、赤みとくすみを同時に改善することが可能です。また、低出力で均一に照射する「ピコトーニング」モードは、肌質改善や皮脂抑制にも効果があり、ニキビの再発防止にも役立ちます。
2週間から4週間に1回のペースで継続すると、赤みが徐々に薄くなり、血色感のある健やかな肌に導かれます。
ダーマペン・マイクロニードルRF
ダーマペンは、極細の針で皮膚に微小な穴を開け、自然治癒力を高めて肌を再生させる治療です。
ニキビ跡によって乱れた真皮のコラーゲンを再構築し、血行を整える作用もあるため、赤みの原因となる慢性炎症や血管拡張にもアプローチできます。さらに、針先から高周波(RF)を照射する「マイクロニードルRF」は、真皮層に熱エネルギーを加えて血管を引き締めるため、赤みをより早く軽減することができます。
施術後は軽い赤みやかさぶたができる場合がありますが、3日から5日で落ち着きます。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を使って古い角質を取り除き、肌のターンオーバーを促進する治療です。
ニキビ跡の赤みは、炎症が残っているだけでなく、角質肥厚や毛穴詰まりによって治りが遅くなっているケースも多くあります。
ピーリングによって新しい皮膚の再生を促すことで、血行が良くなり赤みの軽減につながるほか、毛穴詰まりを防ぐことで新しいニキビの発生も予防できます。
サリチル酸マクロゴールや乳酸など、肌に合わせた薬剤を使用すれば、刺激を抑えながら定期的にケアできます。
美容皮膚科の治療は、赤みの原因に直接アプローチできる点が大きな魅力です。一方で、赤みのタイプや肌質によって適した薬品は異なるため、医師の診察で血管の状態を見極めたうえで治療プランを立てることが重要です。
5.ニキビ跡の赤みを残さないための予防と生活習慣
ニキビ跡の赤みを作らない・長引かせないためには、肌トラブルが起きたときの早めの対処と、日常のスキンケア・生活習慣の見直しが欠かせません。
ここでは、今ある赤みを悪化させず、将来的に跡を残さないためのポイントを紹介します。
ニキビを潰したり触ったりしない
ニキビを指で潰す・押す・引っかくと、皮膚の中で炎症が広がり、毛細血管や真皮組織が損傷して赤みが長引きます。
また、爪や指先から雑菌が入り、再び炎症を起こすこともあります。
白ニキビや黒ニキビの段階であれば、皮膚科での面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)処置を受けることで、清潔かつ安全に皮脂を排出できます。
「早く治したい」と考えるならば、なおさら自己処理は禁物です。
炎症を感じたら早めに皮膚科を受診する
赤く腫れたニキビは、炎症性のニキビ(赤ニキビ・黄ニキビ)に移行しているサインです。
放置すると、炎症が真皮層まで及び、血管拡張や色素沈着、凹みを残す原因になります。
市販薬で改善しない場合や、同じ場所に繰り返しできる場合は、早めに皮膚科で治療を受けましょう。抗炎症作用のある外用薬(アダパレン・ナジフロキサシンなど)や、内服抗生剤、L-システインやシナール(ビタミンC)で炎症を抑えることで、赤みが残りにくい治り方が期待できます。
紫外線対策と保湿を習慣化する
赤みを悪化させない最大のポイントは、紫外線と乾燥の両方を防止することです。
紫外線は毛細血管の拡張を促し、炎症を再燃させるだけでなく、メラニン生成を活性化させて赤みが茶色い跡へと変化することがあります。
また、乾燥した肌は外的刺激に弱く、血行が滞ることで赤みが引きにくくなります。日焼け止め・帽子・日傘などで紫外線を防ぎ、セラミドやヒアルロン酸を含む保湿剤で肌のバリアを強化しましょう。
この2つを日常的に心がけるだけで、炎症後紅斑のリスクを大きく減らせます。
油分の多いスキンケアを避け、清潔を保つ
ニキビや赤みが出やすい肌は、過剰な油分や厚塗りメイクが刺激になることがあります。
オイルクレンジングや高保湿クリームを多用すると、毛穴の詰まりが再発し、炎症を繰り返して赤みが長引く原因になります。スキンケアは「うるおいは残して油分は控えめに」を意識し、ジェルクレンジングや油分の少ないベースメイクを選びましょう。
また、枕カバーやマスクなど、肌に触れるものを常に清潔に保つことも重要です。
食生活では、ビタミンB群・C・亜鉛を意識的に摂取する
肌の炎症を抑え回復を促す栄養素として、ビタミンB群・ビタミンC・亜鉛が欠かせません。
ビタミンB2・B6は皮脂の過剰分泌を防ぎ、ビタミンCは抗酸化作用で炎症を鎮め、コラーゲンの生成を助けます。
さらに亜鉛は細胞の修復や免疫力向上に関わり、赤みを残さず治すための再生力を高めます。これらは食事から摂るのが理想で、レバー・魚・卵・ナッツ・緑黄色野菜・果物に多く含まれます。
バランスの取れた食生活は、治療効果を高め、再発予防にもつながります。
6.まとめ
赤いニキビ跡(炎症後紅斑)は、炎症によって拡張した毛細血管が原因で生じるもので、放置しても自然に消えることはあっても、時間がかかるケースが多い症状です。
早い段階で正しいケアを行えば、跡を残さず回復させることが可能ですが、刺激を与えたり紫外線を浴びたりすると、赤みが長引いたり、色素沈着に変化したりするリスクがあります。
自宅では、「こすらない洗顔」、「しっかりとした保湿」、「毎日の紫外線対策」が基本です。
さらに、ビタミンC誘導体やナイアシンアミド配合の化粧品を取り入れ、炎症を抑えながら肌の修復をサポートしましょう。
それでも改善が見られない場合は、美容皮膚科でのVビームレーザーやIPL、ピコレーザーなどを検討するのが効果的です。
これらの治療は毛細血管や炎症に直接作用し、短期間で赤みを目立たなくすることが可能です。最後に重要なのは、ニキビができたときに「触らない・潰さない・放置しない」こと。
日々の生活習慣やスキンケアを見直し、炎症を繰り返さない肌づくりを心がけることが、赤みのないクリアな肌を保つ最大のポイントです。
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