肌のたるみやフェイスラインのもたつきを改善する「糸リフト」は、美容医療において定番のアンチエイジング施術のひとつです。
その中でも、近年注目を集めているのが「ヴィーナスリフト」。
従来の糸とは異なる素材「PCL(ポリカプロラクトン)」を採用している点が特徴で、柔らかな引き上げ感や自然な仕上がりを目指す方に選ばれています。
本記事では、ヴィーナスリフトに使用されるPCL素材の特性や他の糸リフトとの違いを詳しく解説します。
糸リフトを検討中の方にとって、後悔しない選択の一助となる情報をお届けします。
1. ヴィーナスリフトとは?
ヴィーナスリフトは、PCL素材の糸を用いた糸リフトの一種で、肌の深い層に糸を挿入してたるみを支え、自然な引き上げを行う治療です。従来のコグ付き糸とは異なり、柔軟性に優れた素材で構成されているため、施術後のつっぱり感や表情の不自然さが出にくく、よりナチュラルな仕上がりを目指せます。
引き上げ効果だけでなく、糸が入っている間に真皮層のコラーゲン生成を促し、肌にハリや弾力が生まれるという副次的な美肌効果も期待されています。加齢により頬やフェイスラインのもたつきが気になり始めた方に特に人気の施術です。
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2. PCL素材とは?美容医療で注目される理由
PCL(ポリカプロラクトン)の素材的な特性
PCL(ポリカプロラクトン)は、医療現場ではすでに長年使われてきた「吸収性ポリマー」の一種で、人体に安全な生体適合素材として知られています。
もともとは外科手術用の縫合糸や骨の固定材として使用されており、時間の経過とともに体内に吸収される性質を持っています。このような医療現場での信頼性の高さが、美容医療の分野でも注目されるきっかけとなりました。
PCLの最大の特長は、素材の「柔軟性」と「持続性」です。
他の糸素材と比較してもしなやかで、皮下組織にフィットしやすく、硬さや異物感が少ない仕上がりが可能です。また、分解・吸収までの期間が長く、持続的に効果を発揮する点も大きな魅力です。
吸収スレッドとしての目的と役割
糸リフトに使われる「吸収スレッド」とは、一定期間経過後に体内に吸収される糸のことです。非吸収糸(体内に残り続ける糸)と比べ、異物感や長期的なリスクが少なく、安全性を重視した設計になっています。
PCLはこの吸収スレッドの中でも特に吸収スピードが遅く、約18〜24ヶ月かけてゆっくりと分解されるため、その間に皮膚の下でコラーゲンの生成を促し続ける効果が期待されます。
つまり、引き上げと同時に肌のハリや質感の改善にも寄与する、いわば「肌育成型」の糸ともいえる存在です。
3. ヴィーナスリフトにPCLが使われる理由
PCL×メッシュ構造による特徴的な設計
ヴィーナスリフトの最大の特徴は、「PCL素材」と「メッシュ構造」を組み合わせた設計にあります。
通常の糸リフトは「コグ(トゲ)」と呼ばれる突起によって皮下組織に引っかけて引き上げる仕組みが多いのですが、ヴィーナスリフトではPCLをメッシュ状に加工し、皮下に挿入することで、点ではなく“面”で組織を支えるような形になります。
この構造により、引き上げ力が均一に分散され、無理のない自然なリフトアップが可能になります。
さらに、メッシュの空間にコラーゲンや線維芽細胞が入り込みやすく、糸の周囲に安定した支持組織が形成されやすくなるため、リフト効果の定着にも寄与します。
従来のバーブ糸とは異なり、“引き上げる”というより“支える”ことに重点を置いた設計が、ナチュラルな変化を求める方にマッチしているのです。
柔軟性・安定性と自然な表情の両立
従来の糸リフトでは、引き上げが強すぎることで「不自然な表情」や「口元の引きつり」などの副作用が懸念されることもありました。これは糸自体が硬すぎたり、固定力が強すぎたりすることに起因します。
一方、PCL素材は非常にしなやかで、表情の動きに応じてしなやかに皮膚に追従するため、自然な笑顔や口元の動きを損なわずに引き上げ効果を発揮できます。
また、PCLの吸収プロセスはゆるやかであるため、時間をかけてリフト効果が安定していくのも大きな利点です。
術後すぐに引き上がりすぎて不自然に見えるリスクが少なく、徐々に馴染んでいくため、周囲に施術を気づかれにくいのも魅力です。
ヴィーナスリフトは、このように「やわらかさ」と「安定性」の両方を兼ね備えた糸設計により、これまでの糸リフトの“硬さ”や“違和感”に不安を感じていた方にも選ばれやすい選択肢となっています。
4. 他素材との違い:PDO・PLLAとPCLを比較
PDO(ポリジオキサノン)との違い
PDO(Polydioxanone)は、医療現場では縫合糸としても使用されている吸収性素材で、比較的歴史の長い糸リフト用素材のひとつです。PDOの特徴は「吸収が早く、リフト力が比較的強いこと」です。
術後の数ヶ月間で急速にコラーゲン生成が促され、短期間でのリフトアップ効果を期待できる反面、素材自体は約6ヶ月以内に体内から吸収されてしまうため、効果の持続はやや短めです。
また、PDOは硬さや反発力がやや強く、表情の変化に追従しにくいことがあり、不自然な引きつりや凹凸感のリスクが高まる傾向もあります。とくにフェイスラインや頬の広い範囲に使用する場合、仕上がりの自然さに差が出やすく、PCLとの違いが明確に現れます。
PLLA(ポリ-L-乳酸)との違い
PLLA(Poly-L-lactic acid)は、スカルプトラなど注入剤にも使われている素材で、体内での分解が非常にゆっくりであるという特性があります。糸リフトにおいては、長期間の持続力と高い刺激性によるコラーゲン生成効果が注目されており、最大24ヶ月近くの持続期間を謳うこともあります。
一方で、PLLA素材はやや硬く、術後に「しこり」や「腫れ」が起こりやすいという報告も少なくありません。
とくに肌が薄い部位や、自然な表情が重要な目元・口元まわりでは不向きとされる場合もあり、柔軟性や肌馴染みという観点ではPCLの方が優位といえるでしょう。
素材ごとの持続期間・硬さ・吸収性の比較
これら3素材を比較すると、以下のような特性が見えてきます。
・PDO:硬め、吸収は早い(約6ヶ月)、持続力は短いが即効性がある
・PLLA:かなり硬め、吸収は遅い(12~24ヶ月)、コラーゲン生成は強いが副反応のリスクあり
・PCL:やわらかくしなやか、吸収は中間(約18ヶ月)、自然な仕上がりと安定感が強み
ヴィーナスリフトはこの中で「最もバランスの取れた素材」を選んでいると言えるでしょう。
急激な変化を避け、ナチュラルな変化を求める層にとっては、PCLの選択は非常に理にかなっています。
関連記事:糸リフトの持続期間は?効果を長持ちさせる方法や注意点も解説
5. 他の糸リフト(テス・アルテミスなど)との違い
構造や目的の違い(バーブ・メッシュ・コグなど)
ヴィーナスリフトと、代表的な糸リフトであるテスリフトやアルテミスリフトとの違いは、「糸の構造」と「リフトアップの方向性」にあります。
テスリフトは、PCL素材の筒状メッシュにコグ(トゲ)付き糸を組み合わせた設計で、固定力とボリューム補填に優れています。ただし糸が太く硬いため、部位によってはツッパリ感や異物感が出やすい傾向があります。
アルテミスリフトはPLLA素材を用い、高い引き上げ力と長期持続を特徴としますが、硬さにより表情の動きが制限されやすく、ダウンタイムも長めです。
一方、ヴィーナスリフトはやわらかく肌になじむPCLメッシュ糸を使用し、皮下に均等なテンションを与えることで、コグを使わず自然でやさしい引き上げを実現しています。
PCL素材の主なデメリット
一方で、PCL素材にはいくつかの注意点もあります。まず、柔らかくしなやかな性質ゆえに、強い引き上げ力を求めるケースには適さない場合があります。特に重めのフェイスラインを一気に持ち上げたい方にとっては、やや物足りなく感じられることもあるでしょう。
また、PCLは繊細な素材であるため、糸の挿入角度やテンション設計に高い技術力が求められます。動きになじみやすいぶん、誤った層に入ってしまうと十分な効果が得られにくくなるため、経験豊富な医師による施術が不可欠です。
さらに、吸収までの期間が長いため、万が一トラブルが起きた場合に改善に時間がかかるリスクもゼロではありません。ただし、ヴィーナスリフトは構造的にトラブルの少ない設計となっており、実際の発生率は極めて低いとされています。このように、PCLには他素材にないメリットがある一方で、適応の見極めと医師選びが非常に重要です。
6. ヴィーナスリフトPCLが向いている人とは
自然な仕上がりを重視する方
ヴィーナスリフトに使われるPCL素材は、柔らかくしなやかで、施術後も表情の動きに自然になじみやすいのが特長です。「糸リフトをしたと気づかれたくない」「不自然な引き上がりは避けたい」と考える方にとって、非常に理想的な選択肢といえるでしょう。
とくに、美容施術が初めての方や、ナチュラルな若返りを望む方に適しており、「たるみを予防しつつ今の印象をキープしたい」という希望にもしっかり応えてくれます。
さらに、ヴィーナスリフトは物理的なリフトアップ効果だけでなく、PCLメッシュが肌内部のコラーゲン生成を促すため、時間とともにハリや弾力が増していくという肌質改善の実感も期待できます。

ダウンタイムや繰り返し施術が不安な方
ヴィーナスリフトは、ダウンタイムが比較的軽度で済む点も大きな魅力です。
メッシュ構造による組織への密着性が高いため、術後の腫れや内出血が出にくく、日常生活への影響を最小限に抑えられます。仕事や育児、プライベートなどでスケジュールに余裕がない方でも、無理なく取り入れられるケースが多く見られます。
また、施術の効果持続期間が比較的長いため、頻繁に糸リフトを受けることに抵抗がある方や、定期的なメンテナンスが難しいライフスタイルの方にも適しています。
そのほか、PCL素材の吸収が遅いため、効果は1年半から2年程度続くことが多く、必要最小限の回数で肌のハリを保ちたい方にとっては理想的な選択です。
関連記事:糸リフトの腫れはひどい?ダウンタイムと対処法を解説
7. まとめ
ヴィーナスリフトは、PCL(ポリカプロラクトン)という柔軟で長期持続性のある素材を用いた次世代の糸リフトです。「たるみの引き上げ」と「肌質の改善」を同時に叶えることができる点から、自然な若返りを望む方に注目されています。
糸にはメッシュ構造が施されており、物理的なリフトアップだけでなく、コラーゲン生成を促す肌再生効果も期待できます。30代の予防ケアから40代以降の本格的なエイジングケアまで幅広く対応可能です。
また、術後の腫れや痛みが少なく、ダウンタイムが短い点も魅力のひとつ。多忙な方や、美容医療初心者にとっても受けやすい施術といえるでしょう。さらに、効果は1年半〜2年と長持ちするため、頻繁なメンテナンスが難しい方にも適しています。
ただし、ヴィーナスリフトの仕上がりは医師の設計力に大きく左右されるため、信頼できるクリニック選びが重要です。糸リフトで不自然な仕上がりを経験した方にも、ヴィーナスリフトの自然な変化は新しい選択肢となるかもしれません。
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