以前はなかったフェイスラインのもたつきや、体の皮膚のゆるみが気になっているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。年齢とともに現れる皮膚のたるみは、多くの方が抱える悩みのひとつです。
このたるみは見た目年齢を大きく左右するだけでなく、気持ちまで少し沈ませてしまう場合があります。
この記事では、なぜ皮膚がたるんでしまうのか、その根本的な原因から、ご自宅で取り組めるセルフケア、そして美容クリニックで受けられる専門的な治療法まで、幅広く、そして深く解説します。
たるんだ皮膚を引き締め、自信の持てる肌を目指しましょう。
なぜ皮膚はたるむの?主な原因を徹底解説
皮膚のたるみは単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。
具体的な原因は、加齢による肌内部の変化、長年の紫外線ダメージ、表情筋の衰え、そして急激な体重変動です。
加齢によるコラーゲン・エラスチンの減少
肌のハリと弾力は、真皮層に存在するコラーゲンとエラスチンという線維状のタンパク質によって支えられています。
コラーゲンは肌の構造をしっかりと保つ骨組みの役割を、エラスチンはその骨組み同士を結びつけ、弾力性を与えるバネのような役割を担っています。
しかし、年齢を重ねると、これらのタンパク質を生成する線維芽細胞の働きが衰え、コラーゲンやエラスチンが質的に変化したり量が減少したりします。
その結果、肌を支える力が弱まり、重力に逆らえずに皮膚が垂れ下がってしまうのです。
年代別で見る肌の弾力成分の変化
年代 | コラーゲン量 | 肌の状態 |
---|---|---|
20代 | ピーク時 | ハリと弾力があり、肌トラブルが少ない |
30代後半 | 徐々に減少し始める | 目元や口元に小じわが現れ、ハリの低下を感じ始める |
50代以降 | ピーク時の半分以下に減少 | たるみが顕著になり、フェイスラインがぼやける |
紫外線の影響(光老化)
たるみの最大の外的要因ともいえるのが、紫外線です。長年にわたって紫外線を浴び続けると、肌の老化が加速します。これを「光老化」と呼びます。
紫外線の中でも特にUVA(紫外線A波)は肌の奥深く、真皮層にまで到達し、ハリを支えるコラーゲンやエラスチンを変性させて破壊してしまいます。
このダメージの蓄積が肌の弾力を失わせ、深いたるみやシワの原因となるのです。日々の紫外線対策がいかに重要かがわかります。
表情筋の衰え
皮膚や皮下脂肪を支えているのは、その下にある表情筋です。顔には多くの種類の筋肉があり、それらが複雑に動くことで豊かな表情が生まれます。
しかし、加齢や無表情でいる時間が長い状態などにより、これらの筋肉も体の筋肉と同様に衰えていきます。
表情筋が衰えるとその上にある脂肪や皮膚を支えきれなくなり、雪崩のように垂れ下がってきます。
特に、口角が下がって見えたり、フェイスラインがもたついたりするのは、表情筋の衰えが大きく関係しています。
急激な体重変動
過度なダイエットなどによる急激な体重減少も、皮膚のたるみを引き起こす原因の一つです。
体重が急に減ると、皮下脂肪が減少するスピードに皮膚の収縮が追いつかず、皮膚が余ってしまいます。
一度伸びてしまった皮膚はなかなか元に戻りにくいため、体のラインに沿わないゆるみとして残ってしまうのです。たるみを防ぐためには、健康的なペースで体重をコントロールする取り組みが大切です。
自宅でできる!たるみ対策セルフケア
たるみの進行を緩やかにするためには、日々のセルフケアが重要です。
具体的には、徹底した保湿や紫外線対策、バランスの取れた食事、表情筋トレーニングの継続が未来の肌を守る鍵となります。
保湿を徹底したスキンケア
肌の乾燥は、あらゆる肌トラブルの引き金となります。肌が乾燥するとバリア機能が低下し、紫外線などの外部刺激を受けやすくなるため、たるみが進行しやすくなります。
化粧水で水分をたっぷり与えた後は、必ず乳液やクリームなどの油分で蓋をして、水分が蒸発しないようにしましょう。
コラーゲンやエラスチンの生成をサポートするレチノールやビタミンC誘導体、高い保湿力を持つセラミドやヒアルロン酸などが配合された化粧品を選ぶのも効果的です。
紫外線対策の重要性
光老化を防ぐためには、季節や天候に関わらず一年中紫外線対策を行う習慣が重要です。
日常生活ではSPF30・PA+++程度、屋外でのレジャーなどではSPF50+・PA++++といったように、シーンに合わせて日焼け止めを使い分けましょう。
また、2〜3時間おきに塗り直すと、効果を持続させられます。帽子や日傘、サングラスなどのアイテムを併用するのも良い方法です。
バランスの取れた食事
美しい肌は体の内側から作られます。特に、肌の材料となるタンパク質や、コラーゲンの生成を助けるビタミンC、抗酸化作用のあるビタミンA・Eなどを積極的に摂取する工夫が大切です。
偏った食事は避け、多様な食材からバランス良く栄養を摂るように心がけましょう。
たるみケアに役立つ栄養素と食品例
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 皮膚や筋肉の主成分 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
ビタミンC | コラーゲンの生成を促進 | パプリカ、ブロッコリー、キウイ |
ビタミンA/E | 抗酸化作用で肌の老化を防ぐ | 緑黄色野菜、ナッツ類、植物油 |
表情筋トレーニング
顔の筋肉を意識的に動かすと、筋力の低下を防ぎ、たるみを予防・改善する効果が期待できます。
例えば、「あ・い・う・え・お」と口を大きくゆっくり動かす、頬を膨らませたりへこませたりを繰り返すなど、簡単な動きでも継続することが重要です。
ただし、やりすぎはかえってシワの原因になる場合もあるため、無理のない範囲で行いましょう。
セルフケアの限界を感じたら?美容医療という選択肢
日々のセルフケアはたるみの予防や進行を遅らせる上で非常に有効ですが、すでに現れてしまったたるみを劇的に改善するには限界があります。
肌の深い層や筋膜の変化が原因である場合、美容医療が有効な選択肢です。化粧品では届かない肌の深層部に直接働きかけられるため、より明確な引き締め効果を期待できます。
セルフケアでは届かない肌の深層部
化粧品が浸透するのは、肌表面の角質層までが一般的です。一方、たるみの根本原因であるコラーゲンの減少やSMAS(スマス)筋膜のゆるみは、それよりずっと深い真皮層や皮下組織で起こっています。
美容医療では、レーザーや高周波、超音波などを用いて肌の深層部に直接エネルギーを届け、肌を内側から引き締められます。
アプローチできる肌の層の比較
アプローチ方法 | 到達する主な層 | 期待できる効果 |
---|---|---|
スキンケア化粧品 | 表皮(角質層) | 保湿、肌表面のキメを整える |
美容医療(機器治療) | 真皮層〜SMAS筋膜 | コラーゲン生成促進、リフトアップ |
美容医療(注入・糸) | 皮下組織・真皮層 | ボリューム補充、物理的な引き上げ |
美容医療で期待できる効果
美容医療によるたるみ治療は、原因や症状に合わせて様々な働きかけが可能です。
フェイスラインを引き締めてシャープな印象にする、ほうれい線やマリオネットラインを目立たなくする、目元のたるみを改善して若々しい表情を取り戻すなど、具体的な悩みに応じた効果が期待できます。
専門の医師が肌の状態を正確に診断し、適切な治療法を提案します。
- リフトアップ効果
- 肌のハリ・弾力アップ
- シワ・ほうれい線の改善
- 小顔効果
【施術別】たるみを引き締める代表的な美容医療
たるみ治療には様々な種類があり、それぞれに特徴や得意とする症状が異なります。
主にHIFU(ハイフ)、高周波(RF)、糸リフト、注入治療といった方法があります。ご自身のたるみの状態や希望に合わせて、医師と相談しながら適した方法を選びましょう。
HIFU(ハイフ)治療
高密度焦点式超音波(High-Intensity Focused Ultrasound)の略で、超音波エネルギーをピンポイントで肌の深層部に照射する治療法です。
特に、皮膚の土台であるSMAS筋膜に直接熱エネルギーを加え、収縮させて強力なリフトアップ効果をもたらします。
メスを使わずに、外科的なフェイスリフトに近い層に働きかけられるのが最大の特徴です。
高周波(RF)治療
高周波(ラジオ波)の熱エネルギーを真皮層に与えてコラーゲン線維を収縮させ、即時的な引き締め効果を生み出します。
さらに、熱刺激によって線維芽細胞が活性化され、長期的に新しいコラーゲンやエラスチンの生成が促されるため、肌のハリや弾力が内側から再構築されます。
HIFUに比べて痛みやダウンタイムが少ない傾向にあります。
HIFUと高周波(RF)治療の比較
項目 | HIFU(ハイフ) | 高周波(RF) |
---|---|---|
主な作用部位 | SMAS筋膜、皮下組織 | 真皮層、皮下脂肪層 |
得意な効果 | リフトアップ、引き上げ | 引き締め、ハリ感アップ |
痛みの感覚 | 骨に響くような熱感や痛み | 深部からのじんわりとした熱感 |
糸リフト(スレッドリフト)
医療用の特殊な糸を皮下に挿入し、たるんだ皮膚を物理的に引き上げる治療法です。糸にはコグ(トゲ)がついており、それが皮下組織に引っかかりリフトアップ効果を発揮します。
また、挿入された糸の周りではコラーゲン生成が促進されるため、肌のハリ感アップも期待できます。
使用する糸の種類によって、持続期間や引き上げ効果が異なります。
ヒアルロン酸・コラーゲン注入
たるみによってくぼんでしまった部分や、ボリュームが減少した部分にヒアルロン酸やコラーゲンなどの注入剤を注入し、内側から肌を持ち上げてシワやたるみを目立たなくする治療です。
なかでも、ほうれい線やゴルゴライン、こけた頬などに効果的です。
リフトアップ効果のある製剤を用いると、顔全体の印象を若々しく整えられます。
後悔しない!たるみ治療クリニックの選び方
満足のいくたるみ治療を受けるためには、信頼できるクリニック選びが不可欠です。
重要なポイントは、医師の実績とカウンセリングの質、料金体系の透明性、そしてアフターケアの充実度の3つです。これらを総合的に判断して選びましょう。
医師の実績とカウンセリングの質
たるみ治療は、医師の技術力と診断力によって結果が大きく左右されます。その医師がたるみ治療において十分な経験と実績を持っているかを確認しましょう。
また、カウンセリングの際に悩みを親身に聞き、肌の状態を丁寧に診察した上で、治療法のメリットだけでなくデメリットやリスクについてもきちんと説明してくれる医師は信頼できます。
- 治療のメリット・デメリットを説明してくれるか
- 質問に対して誠実に答えてくれるか
- 複数の治療選択肢を提示してくれるか
- 無理な勧誘がないか
料金体系の透明性
提示された料金に診察料や麻酔代、薬代、アフターケア代などがすべて含まれているかを確認しましょう。
見積もりが明確で、追加料金が発生する可能性についてもしっかり説明してくれるクリニックは安心です。
後から予期せぬ費用を請求されるといったトラブルを避けるためにも、料金体系の透明性は重要なチェックポイントです。
アフターケアの充実度
施術後の経過観察や、万が一トラブルが起きた際の対応など、アフターケア体制が整っているかも確認しましょう。
施術後の検診が用意されているか、緊急時に連絡が取れるかなど、治療が終わった後も責任を持ってサポートしてくれるクリニックを選びましょう。
美容医療のダウンタイムと治療後の過ごし方
美容医療の施術後には、赤みや腫れといった症状が現れる「ダウンタイム」という回復期間があります。
この期間の長さや症状は治療法によって異なるため、事前に把握し、治療効果を高めるための適切なアフターケアを行いましょう。
施術ごとのダウンタイムの目安
ダウンタイムの主な症状には、赤みや腫れ、内出血や痛みなどがあります。多くは数日から1週間程度で自然に治まりますが、糸リフトなどではもう少し長く続く場合もあります。
日常生活にどの程度影響があるかを把握し、スケジュールを調整しましょう。
主な施術のダウンタイムと症状
施術名 | ダウンタイムの目安 | 主な症状 |
---|---|---|
HIFU(ハイフ) | ほぼなし〜数日 | 赤み、軽い腫れ、筋肉痛のような鈍痛 |
高周波(RF) | ほぼなし | 施術直後の赤み(数時間で消失) |
糸リフト | 数日〜2週間程度 | 腫れ、内出血、痛み、引きつれ感 |
治療効果を高めるアフターケア
治療後の肌はデリケートな状態になっています。効果を最大限に引き出してトラブルを防ぐためにも、アフターケアは非常に重要です。
施術当日の激しい運動や飲酒、長風呂は血行を促進し、腫れや赤みを悪化させる可能性があるため避けましょう。
また、保湿と紫外線対策をいつも以上に徹底し、肌への刺激を最小限に抑える心がけが大切です。
たるみ治療にかかる費用の目安
たるみ治療は自由診療であり、費用は施術方法やクリニックによって大きく異なります。
HIFUや高周波、糸リフトなど各治療のおおよその相場を把握し、初回の費用だけでなくメンテナンスも含めた総額で検討しましょう。
施術方法による料金の違い
一般的に、HIFUや高周波などの機器を用いた治療は、使用する機器の種類やショット数によって料金が変動します。
糸リフトは使用する糸の種類や本数、注入治療は注入する製剤の種類や量によって料金が決まります。
効果の持続期間も考慮して、費用対効果を考えると良いです。
施術別・部位別の費用相場
施術名 | 対象部位 | 費用目安(1回) |
---|---|---|
HIFU(ハイフ) | 顔全体 | 10万円~30万円 |
高周波(RF) | 顔全体 | 8万円~25万円 |
糸リフト | 両頬 | 15万円~40万円 |
トータルでかかる費用を把握する
たるみ治療は一度で完了する場合もありますが、効果を維持するために定期的なメンテナンスを推奨されるものもあります。
初回の治療費だけでなく、継続する際の費用も含めて、トータルでどのくらいの費用がかかるのかを事前に把握しておくと安心です。
たるみ引き締めに関するよくある質問
たるんだ皮膚を引き締めるためには、保湿や紫外線対策を徹底しましょう。また、バランスの取れた食事や表情筋のトレーニングも効果的です。
化粧品はレチノールやビタミンC誘導体、セラミドやヒアルロン酸、ペプチドなどの成分が配合されているものを選ぶと良いでしょう。
ただし、セルフケアには限界がありますので、より積極的に皮膚を引き締めたい場合は、美容医療が良い選択肢となります。
- 痛みはどのくらいありますか?
-
痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの治療では麻酔クリームや冷却装置などを用いて痛みを緩和します。
HIFUは骨に響くような熱感や鈍痛、高周波は深部からの熱感、糸リフトや注入治療は針を刺す際のチクッとした痛みを感じる場合があります。
痛みが不安なときは、カウンセリング時に遠慮なく医師にご相談ください。
- 効果はどのくらい持続しますか?
-
治療法や個人の肌質、生活習慣によって持続期間は異なります。
一般的に、HIFUや高周波の効果は半年〜1年程度、糸リフトは1年〜2年程度、ヒアルロン酸注入は種類によりますが半年〜2年程度が目安です。
効果を持続させるためには、定期的なメンテナンス治療や日々のセルフケアが重要になります。
- 何歳から治療を始めるのが良いですか?
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たるみ治療を開始するのに決まった年齢はありません。たるみが気になり始めた時が、治療を検討するタイミングといえます。
予防的な観点から、たるみが深刻化する前の30代後半〜40代で始められる方も多くいらっしゃいます。年齢よりも、ご自身の肌の状態と悩みに合わせて治療を考えましょう。
- 治療後に気をつけることはありますか?
-
施術後は肌がデリケートな状態になっているため、保湿と紫外線対策を徹底してください。また、施術当日は飲酒や激しい運動、サウナなど血行が良くなる行為は避けるのが賢明です。
施術によっては、顔のマッサージなどを一定期間控えるよう指示される場合もあります。クリニックからのアフターケアの指示に必ず従ってください。
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