鏡を見るたびに気になる、目の下のたるみやクマ。「疲れているように見える」「老けて見える」といった悩みを抱え、ヒアルロン酸注射を検討している方も多いのではないでしょうか。
手軽なイメージのあるヒアルロン酸注入ですが、実はたるみのタイプによっては、かえって症状を悪化させてしまう可能性があることをご存知ですか。
この記事では、「ヒアルロン酸 目の下」や「ヒアルロン酸 目の下のたるみ」で情報を探しているあなたのために、注入が向いている人といない人の特徴、メリット・デメリット、そして後悔しないためのポイントを詳しく解説します。
目の下のたるみとヒアルロン酸注入の基本
目の下のたるみ治療としてよく知られるヒアルロン酸注入ですが、まずはその基本を正しく理解することが大切です。
なぜたるみができるのか、そしてヒアルロン酸がどのように作用するのかを知ることで、自分に適した治療法かを見極める第一歩になります。
目の下のたるみができる主な原因
目の下のたるみは、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。主な原因は加齢によるものですが、生活習慣が影響することもあります。
自分のたるみがどのタイプに当てはまるかを知ることが、適切な対策につながります。
主な原因とその特徴
原因 | 特徴 | 解説 |
---|---|---|
加齢による皮膚の弾力低下 | 皮膚にハリがなく、細かいシワが目立つ | コラーゲンやエラスチンの減少により、皮膚が薄くなりハリを失います。 |
眼窩脂肪の突出 | 目の下がぷっくりと膨らんでいる(目袋) | 眼球を支える組織がゆるみ、奥にある脂肪が前に押し出されます。 |
骨格の萎縮 | 目の下がくぼんで見える | 加齢により頬の骨が痩せることで、目の下との段差が目立ち、影ができます。 |
ヒアルロン酸とはどんな成分?
ヒアルロン酸は、もともと私たちの体内、特に皮膚や関節に多く存在するゼリー状の物質です。非常に高い保水力を持ち、1グラムで約6リットルの水分を保持できると言われています。
この性質により、肌のハリや潤いを保つ重要な役割を担っています。
美容医療で用いるヒアルロン酸製剤は、この成分を人工的に精製したもので、安全性も高く、アレルギー反応のリスクが低いのが特徴です。
目の下へのヒアルロン酸注入で期待できる効果
目の下へのヒアルロン酸注射は、主にくぼみや段差を埋めることで、たるみやクマを目立たなくさせる治療です。
皮膚の内側からボリュームを補うことで、肌を平らにし、若々しい印象を取り戻す効果が期待できます。
特に、加齢による骨格の萎縮で生じた影(影クマ)に対しては、ヒアルロン酸によるボリュームアップが有効な解決策となり得ます。
ヒアルロン酸注入が向いている人の特徴
目の下のヒアルロン酸注入は、誰にでも同じ効果があるわけではありません。たるみの状態や肌質によって、効果を十分に得られる人と、そうでない人がいます。
ここでは、ヒアルロン酸注入が特に向いている方の特徴を具体的に解説します。
皮膚のくぼみが目立つタイプ(影クマ)
目の下と頬の境目に段差があり、その部分が影になって黒く見える「影クマ」の方には、ヒアルロン酸注入が非常に有効です。このタイプは、皮膚の下のボリュームが不足していることが原因です。
ヒアルロン酸を注入してくぼみを物理的に持ち上げることで、段差が解消され、影が薄くなります。光が均一に当たるようになるため、顔全体が明るく健康的な印象に変わります。
軽度から中程度のたるみがある
皮膚のたるみがまだそれほど進行していない、軽度から中程度の段階の方にもヒアルロン酸は適しています。
この段階では、皮膚自体のハリがまだ残っているため、少量のヒアルロン酸でくぼみを補うだけで、自然な仕上がりが期待できます。
逆に、たるみが重度に進行している場合は、ヒアルロン酸だけでは支えきれず、他の治療法を検討する必要があります。
手軽な治療を希望している
メスを使わない注入治療であるため、手術に対する抵抗感がある方や、まずは手軽な方法で改善したいと考えている方にぴったりです。
施術時間も15分から30分程度と短く、日常生活への影響が少ない点も大きなメリットです。美容医療が初めての方でも、挑戦しやすい治療法と言えるでしょう。
ダウンタイムを短くしたい
ヒアルロン酸注射は、ダウンタイムが非常に短いのが特徴です。施術直後に軽い赤みや腫れが出ることがありますが、数日から1週間程度で治まることがほとんどです。
内出血が起こる可能性もありますが、メイクでカバーできる範囲のものが多く、仕事やプライベートの予定を長期間調整する必要がありません。忙しい方でも受けやすい治療です。
注意!ヒアルロン酸注入が向いていない・悪化する可能性のある人の特徴
目の下のたるみに対して万能に見えるヒアルロン酸注入ですが、たるみの原因や状態によっては、かえって不自然になったり、悪化したりするケースがあります。
自分の状態が当てはまらないか、慎重に確認することが後悔しないための鍵です。
目の下のふくらみ(目袋)が大きい
目の下が脂肪(眼窩脂肪)によって大きく膨らんでいる「目袋」がたるみの主な原因である場合、ヒアルロン酸注入は適していません。
この状態でヒアルロン酸を注入すると、すでにある膨らみの上にさらにボリュームが加わることになり、たるみが余計に強調されてしまいます。
結果として、目の下がさらに重く、不自然な印象になる危険性があります。このタイプのたるみには、原因である脂肪そのものを取り除く「経結膜脱脂術」などの外科的な治療が有効です。
たるみのタイプ別 適応判断
たるみのタイプ | ヒアルロン酸注入の適応 | 理由 |
---|---|---|
くぼみ・影が主体のたるみ | ◎(非常に向いている) | 不足しているボリュームを直接補えるため、効果が高い。 |
脂肪によるふくらみが主体のたるみ | ×(向いていない) | ふくらみを助長し、たるみを悪化させる可能性がある。 |
くぼみとふくらみが混在するたるみ | △(慎重な判断が必要) | 注入技術が重要。医師の技量によって結果が大きく左右される。 |
皮膚のたるみが非常に強い
加齢などにより、皮膚そのものが大きく伸びてしまっている場合も、ヒアルロン酸注入だけでの改善は困難です。
ヒアルロン酸はあくまでボリュームを補うものであり、伸びた皮膚を引き締める効果は限定的です。
多量のヒアルロン酸を注入しても、皮膚の重さに負けてしまい、かえってたるみが目立ってしまうことがあります。
このようなケースでは、レーザー治療や糸リフト、外科的な切開手術など、皮膚の引き締め効果がある治療法を組み合わせることが重要です。
チンダル現象のリスクを理解する
目の下の皮膚は非常に薄いため、ヒアルロン酸を浅い層に注入したり、適切な製剤を選ばなかったりすると、「チンダル現象」が起こる可能性があります。
これは、注入したヒアルロン酸が皮膚を通して青白く透けて見えてしまう現象で、まるで青クマが悪化したように見えることがあります。
一度起こると修正が難しくなる場合もあるため、目の下の皮膚の特性を熟知した、経験豊富な医師による施術が不可欠です。
過去の注入でしこりができた経験がある
以前にヒアルロン酸注入を受けて、しこりや凹凸ができてしまった経験がある方は注意が必要です。体質的にしこりができやすい可能性や、前回の注入物がまだ残っている可能性があります。
同じ場所に再度注入を行うと、さらに不自然な仕上がりになるリスクがあります。カウンセリングの際には、過去の治療歴を正直に医師に伝え、現状を正確に診断してもらうことが大切です。
ヒアルロン酸注入のメリットとデメリットを徹底比較
治療を受けるかどうかを決める上で、メリットとデメリットの両方を正しく理解しておくことは非常に重要です。
ここでは、「ヒアルロン酸 目の下」の治療における良い点と注意すべき点を客観的に比較します。
手軽さと即時性が魅力のメリット
ヒアルロン酸注入の最大のメリットは、その手軽さと効果の即時性です。メスを使わないため体への負担が少なく、施術時間も短時間で済みます。
また、注入直後から変化を実感できるため、満足感を得やすい治療法です。
ヒアルロン酸注入の主なメリット
メリット | 具体的な内容 |
---|---|
即時性 | 注入後すぐにくぼみの改善など、見た目の変化を実感できる。 |
ダウンタイムが短い | 施術後の腫れや赤みが少なく、日常生活への影響が限定的。 |
修正が可能 | 万が一、仕上がりに満足できない場合、ヒアルロニダーゼという分解酵素で溶かして元に戻せる。 |
デメリットとリスクも正しく理解する
手軽な治療法ですが、デメリットやリスクも存在します。これらを軽視すると、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
特に、目の下はデリケートな部位であるため、慎重な判断が求められます。
ヒアルロン酸注入の主なデメリット
デメリット | 具体的な内容 |
---|---|
効果が永続的ではない | ヒアルロン酸は徐々に体内に吸収されるため、効果を維持するには定期的な再注入が必要(持続期間は半年~2年程度)。 |
医師の技術力に依存 | 注入する量や位置、深さによって仕上がりが大きく変わる。経験の浅い医師だと、凹凸や左右差が生じるリスクがある。 |
副作用のリスク | 内出血、腫れ、痛み、チンダル現象、血管閉塞などの可能性がある。 |
他の治療法との比較
目の下のたるみ治療はヒアルロン酸だけではありません。自分の症状や希望に合わせて、他の治療法とも比較検討することが、納得のいく結果への近道です。
目の下のたるみに対する主な治療法
治療法 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
ヒアルロン酸注入 | くぼみを埋めて段差をなくす。手軽でダウンタイムが短い。 | くぼみや影が主な原因の人。 |
経結膜脱脂術 | まぶたの裏側から余分な脂肪を取り除く。効果は半永久的。 | 脂肪によるふくらみ(目袋)が主な原因の人。 |
レーザー・高周波治療 | 熱エネルギーで皮膚のコラーゲン生成を促し、ハリを出す。 | 皮膚の小じわやハリ不足が気になる人。 |
目の下へのヒアルロン酸注入 治療の流れと費用
実際にヒアルロン酸注入を受けることを決めた場合、どのような流れで進むのか、そして費用はどのくらいかかるのかは、事前に知っておきたい重要な情報です。
ここでは、一般的な治療の流れと費用の目安について解説します。
カウンセリングから施術後までの流れ
信頼できるクリニックでは、必ず丁寧なカウンセリングから始まります。自分の希望を伝え、医師の診察を受けることで、最適な治療計画を立てていきます。
- カウンセリング・診察: 悩みや希望を伝え、医師が目の下の状態を診察。ヒアルロン酸注入が適しているか、他の治療法が良いかを判断します。
- 麻酔: 痛みを軽減するため、注入部位に麻酔クリームを塗布したり、冷却したりします。
- 注入: デザインに沿って、極細の針やカニューレ(先端の丸い針)を使い、慎重にヒアルロン酸を注入します。
- 施術後: 注入部位の状態を確認し、アフターケアについての説明を受けます。すぐにメイクをして帰宅できる場合がほとんどです。
ヒアルロン酸の種類と特徴
一口にヒアルロン酸と言っても、様々なメーカーから多種多様な製剤が販売されています。それぞれ硬さや粘度、持続期間が異なり、注入する部位や目的に合わせて使い分けることが重要です。
目の下のような皮膚が薄くデリケートな部位には、粒子が細かく、なめらかになじむタイプのヒアルロン酸が選ばれます。
目の下に使用されるヒアルロン酸の例
製剤の種類(例) | 硬さ | 特徴 |
---|---|---|
ボルベラXC | 柔らかい | なじみが良く、皮膚の薄い部位に適している。凹凸になりにくい。 |
レスチレン ビタールライト | 非常に柔らかい | 肌の保水力向上や小じわ改善に適している。自然な仕上がり。 |
ジュビダームビスタ バイクロス | 中程度 | 持続性が高く、リフトアップ効果も期待できる。 |
費用の目安と注意点
ヒアルロン酸注入は自由診療のため、クリニックによって費用が大きく異なります。費用は、使用するヒアルロン酸製剤の種類と注入量によって決まるのが一般的です。
目の下の場合、両側で1本(1cc)程度の使用が目安となります。
- 費用の相場: 1本あたり5万円~12万円程度
- 注意点: 安さだけでクリニックを選ぶのは危険です。費用には、医師の技術料や麻酔代、アフターケア代などが含まれているかを確認しましょう。また、使用する製剤が安全性の高い、厚生労働省承認の製品であるかも重要なポイントです。
失敗しないためのクリニック選びと医師の見極め方
目の下のヒアルロン酸注入で満足のいく結果を得るためには、どのクリニックで、どの医師に任せるかが最も重要です。
価格や知名度だけでなく、総合的な観点から慎重に選びましょう。
実績と症例写真を確認する
まずは、そのクリニックや医師が、目の下のヒアルロン酸注入をどのくらい行っているか、実績を確認しましょう。
公式ウェブサイトやSNSなどで、自分と似たような症例の写真が掲載されているかをチェックします。
不自然な仕上がりではなく、ナチュラルで美しい結果を出しているか、自分の美的感覚と合うかを見極めることが大切です。
丁寧なカウンセリングが重要
カウンセリングは、医師との相性を確認し、信頼関係を築くための重要な時間です。
あなたの話を親身に聞いてくれるか、リスクやデメリットについても隠さず説明してくれるか、複数の選択肢を提示してくれるかなどを確認しましょう。
質問しにくい雰囲気を作ったり、高額な治療ばかりを勧めたりするような場合は、一度立ち止まって考えるべきです。
解剖学に精通した医師を選ぶ
目の周りには、重要な血管や神経が複雑に走行しています。安全かつ効果的にヒアルロン酸を注入するには、顔の解剖学的構造を深く理解していることが不可欠です。
形成外科や皮膚科の専門医であることや、ヒアルロン酸注入に関する研修を積極的に受けている医師であることは、一つの判断基準になります。
アフターフォロー体制の充実度
施術後に万が一、何かトラブルが起きた際に、迅速かつ適切に対応してくれる体制が整っているかも確認しましょう。
緊急時の連絡先が明確であるか、再診察や修正治療の保証がどのようになっているかを事前に聞いておくと安心です。施術後のケアまで責任を持ってくれるクリニックを選びましょう。
目の下のヒアルロン酸注入に関するよくある質問
- 注入時の痛みはどのくらいですか?
-
施術前に麻酔クリームを使用するため、強い痛みを感じることは少ないです。注入中にチクッとした感覚や、薬剤が入ってくる鈍い感覚がある程度です。
痛みの感じ方には個人差がありますが、ほとんどの方が我慢できる範囲の痛みです。痛みに弱い方は、事前に医師に相談することで、冷却時間を長くするなど配慮してもらえます。
- 効果はどのくらい持続しますか?
-
使用するヒアルロン酸の種類や個人の体質によって異なりますが、一般的には半年から2年程度です。
ヒアルロン酸は時間とともに体内に吸収されていくため、効果は永続的ではありません。効果を維持するためには、定期的に追加で注入する必要があります。
- ダウンタイム中の過ごし方で気をつけることは?
-
施術当日は、激しい運動や飲酒、長時間の入浴など、血行が良くなる行為は避けてください。腫れや内出血を助長する可能性があります。
また、注入部位を強く押したり、マッサージしたりするのも控えてください。ヒアルロン酸が移動してしまう原因になります。
洗顔やメイクは当日から可能な場合が多いですが、詳細は医師の指示に従ってください。
- もし結果に満足できなかったら修正できますか?
-
はい、修正は可能です。ヒアルロン酸注入の大きなメリットの一つは、ヒアルロニダーゼという分解酵素を使って、注入したヒアルロン酸を溶かして元に近い状態に戻せることです。
凹凸ができてしまった、注入量が多すぎたと感じた場合など、気になることがあればまずは施術を受けたクリニックに相談しましょう。
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