ヒアルロン酸では治らない「ひどい黒クマ」へ。根本から解決するその他の治療法

ヒアルロン酸では治らない「ひどい黒クマ」へ。根本から解決するその他の治療法

鏡を見るたびに憂鬱になる目の下の深い影。

「疲れているの?」「寝不足?」と心配されることに疲れ、化粧品やマッサージ、あるいはヒアルロン酸注入を試してみたものの、期待した変化が得られなかった経験をお持ちの方は少なくありません。

特に、凹凸がはっきりとした「ひどい黒クマ」は、皮膚表面の問題ではなく、顔の構造そのものに原因があるため、表面的なアプローチでは解決が難しいのが現実です。

本記事では、なぜヒアルロン酸では限界があるのかを解き明かし、構造的な原因に直接働きかける外科的治療法について、その種類や選び方、ダウンタイムまでを網羅的に解説します。

一時的な対処療法ではなく、10年先も自信を持てる目元を取り戻すための、確かな選択肢を見つけていきましょう。

目次

なぜヒアルロン酸では黒クマが改善しないのか

眼窩脂肪の突出が原因であるひどい黒クマに対し、物理的な凹凸を埋めるヒアルロン酸注入は根本解決にならず、かえって症状を悪化させるリスクがあります。

構造的な原因にアプローチしない限り、不自然な仕上がりやチンダル現象を招くため、外科的な脱脂や移動術が必要です。

黒クマの正体は眼窩脂肪の突出

黒クマと呼ばれる現象の正体は、色素沈着や血行不良ではなく、目の下にできる「影」です。

この影を作り出している主犯格が、眼球を保護しているクッションのような役割を持つ「眼窩脂肪(がんかしぼう)」です。

加齢や生まれつきの骨格により、眼球を支えるロックウッド靭帯などの支持組織が緩むと、眼球の重みで脂肪が圧迫され、前方へと押し出されます。

この押し出された脂肪が下まぶたを膨らませ、その下が影になることで、黒くくぼんだように見えるのです。

物理的な膨らみが原因である以上、単に皮膚を白くしたり、血行を良くしたりするだけでは、この影を消し去ることはできません。

皮膚のたるみと靭帯の影響

眼窩脂肪の突出に加え、黒クマを強調させるもう一つの要因が「ティアトラフ(Tear Trough)」と呼ばれるハの字状の食い込みです。

これは皮膚と骨をつなぐ強固な靭帯(リガメント)が存在する部分で、加齢とともに皮膚が薄くなり、皮下脂肪が減少すると、この靭帯の結束部分がより深く目立つようになります。

眼窩脂肪による「膨らみ」と、靭帯による「凹み」が隣り合うことで、高低差が強調され、黒クマがより一層濃く、深く見えてしまいます。

特に皮膚の弾力が低下している場合、たるみが重力に負けて垂れ下がり、影の範囲を広げてしまうこともあります。

ヒアルロン酸注入が逆効果になるリスク

多くの人が陥りやすい誤解の一つに、「凹んでいる部分にヒアルロン酸を入れて平らにすれば良い」という考えがあります。

確かに軽度のクマであれば改善は見込めますが、脂肪の突出が強い場合にこれを行うと、不自然に膨らんでしまったり、注入したヒアルロン酸が水分を吸収してむくんだような印象を与えたりするリスクがあります。

これを「チンダル現象」と呼び、皮膚が青白く透けて見える原因にもなります。

その結果、すでに膨らんでいる脂肪の周辺にさらに注入物を足すことは、目元全体のボリュームを過剰にし、目が小さく見えてしまうことさえあります。

ヒアルロン酸注入と外科的治療の比較

比較項目ヒアルロン酸注入外科的治療(脱脂・ハムラ法等)
アプローチの方法凹みを埋めて段差を目立たなくする「足し算」突出した脂肪を除去・移動する「構造改革」
適応となる症状軽度の凹み、青クマのカバー中度〜重度の眼窩脂肪突出、皮膚のたるみ
効果の持続期間半年から1年程度(吸収される)半永久的(加齢変化を除く)
リスク・デメリットチンダル現象、不自然な膨らみ、塞栓リスクダウンタイム(腫れ・内出血)、費用が高い
仕上がりの自然さ重度の場合は不自然になりやすい骨格に沿った自然なフラットさを形成可能

根本的な構造変化が必要な理由

ひどい黒クマを解消するためには、対症療法的な「足し算」の治療ではなく、原因を取り除く「引き算」または「構造の再配置」が必要です。

飛び出している眼窩脂肪を適切な量だけ減らす、あるいは凹んでいる部分へ移動させることで、目の下のカーブをフラットで滑らかな状態に整えることが求められます。

骨格や脂肪の量、皮膚の弾力は一人ひとり異なるため、画一的な治療ではなく、解剖学的な根拠に基づいた外科的アプローチを選択することが、長期間にわたる満足を得るための鍵となります。

自分でできるチェック方法とひどい黒クマの特徴

見極めのポイントは、顔を上に向けて天井を見た時に影が薄くなるかどうかであり、変化があれば眼窩脂肪による黒クマの可能性が高いと判断できます。

セルフチェックで構造的な原因を特定し、早期に対処することで、色素沈着の併発や皮膚のたるみの悪化を防ぐことが可能です。

鏡を使ったセルフチェックの手順

まず、手鏡を持って明るい場所へ移動してください。鏡を顔の正面に持ち、真顔で目の下の状態を確認します。次に、鏡を持ったまま顔を上に向けて天井を見上げてください。

このとき、目の下の色が薄くなったり、影が消えたりする場合は「黒クマ」の可能性が非常に高いと言えます。これは、上を向くことで顔の皮膚が引っ張られ、一時的にたるみや脂肪の段差が解消されるためです。

逆に、上を向いても色味が変わらない場合は、皮膚自体に色が沈着している茶クマや、静脈が透けている青クマであると考えられます。

上を向くと薄くなるのは影の証拠

黒クマの本質は「影」であるため、光の当たり方によって見え方が劇的に変化します。

例えば、洗面所のダウンライトの下など、上からの強い光を浴びたときにクマが一番濃く見え、逆に正面からライトを浴びたときや、写真撮影でフラッシュを使ったときには目立たなくなるのが特徴です。

また、指で目尻を少し横に引っ張ったときに色が薄くなるのも黒クマの特徴の一つです。このため、皮膚が伸びることで一時的に凹凸がなだらかになる現象を利用して確認することができます。

早期治療が推奨される重度のサイン

もし、以下の特徴に当てはまる場合、それは自然治癒やスキンケアでは改善しない「構造的な黒クマ」であり、専門的な治療を検討する時期に来ていると言えます。

  • 夕方になると目元の影が濃くなり、非常に疲れた印象になる
  • 目の下に明らかな膨らみがあり、その下に半円形の溝ができている
  • コンシーラーを厚塗りしても、影が消えるどころか逆に目立ってしまう
  • 笑ったときに目の下の膨らみが強調され、涙袋と一体化して大きく見える
  • 親や兄弟も同じような目元の形状をしており、遺伝的な要素を感じる

茶クマや青クマとの併発パターン

厄介なことに、これら3種類のクマは単独で存在するとは限りません。

長年の眼精疲労による青クマの上に、加齢による黒クマが重なり、さらに目を擦る癖による茶クマが混在している「混合型」のケースも多く見られます。

特に「ひどい黒クマ」に悩む方は、脂肪の膨らみによる影(黒クマ)だけでなく、皮膚の色素沈着(茶クマ)も併発していることがあり、その場合は脱脂術で影を消すだけでなく、術後に美白剤の外用やレーザー治療などを組み合わせることで、より明るく若々しい目元を実現できます。

根本解決の主役となる脱脂術(経結膜脱脂法)

経結膜脱脂法は、下まぶたの裏側から過剰な眼窩脂肪を取り除くことで、皮膚に傷を残さずに黒クマの影を根本から解消する治療法です。

ダウンタイムが比較的短く、抜糸も不要であるため、多忙な方でも受けやすく、自然で若々しい目元を半永久的に維持できる点が最大のメリットです。

下まぶたの裏側から脂肪を取り除く手技

経結膜脱脂法の最大の特徴は、皮膚を一切切開しないことです。下まぶたをあっかんべーをした状態にして、裏側の赤い結膜部分に小さな穴を開け、そこから突出している眼窩脂肪を引き出します。

眼窩脂肪は内側・中央・外側の3つの区画(コンパートメント)に分かれて存在しており、それぞれの膨らみ具合に合わせてバランスよく除去することが重要です。

単に脂肪を減らすだけでなく、涙袋の下のラインを綺麗に出すことで、メリハリのある若々しい目元を形成します。

傷跡が外側に見えないメリット

顔の表面にメスを入れないため、術直後から外見上の傷跡は全くわかりません。縫合の必要もなく、抜糸のために通院する必要がないのも大きな利点です。

結膜の傷は治りが非常に早く、数日で自然に塞がります。したがって、長期休暇が取れない会社員の方や、周囲に手術をしたことを知られたくない方にとって、非常に受け入れやすい治療法となっています。

翌日からメイクが可能であることも、社会生活への早期復帰を後押しします。

経結膜脱脂法の概要

項目内容詳細
切開部位下まぶたの裏側(結膜)。皮膚表面には傷がつかない。
手術時間約30分〜40分(両目の場合)
通院回数基本的に手術当日の1回と、1週間後の経過観察のみ。抜糸なし。
痛み・麻酔局所麻酔・点眼麻酔を使用。希望により静脈麻酔も可能。術後の痛みは筋肉痛程度。
適応症状眼窩脂肪の突出による黒クマ。皮膚のたるみが少ない若年層〜中年層に特に有効。
完成までの期間腫れは1週間程度で引くが、組織が完全に馴染むまで1〜3ヶ月。

適切な脂肪除去量の判断

この手術で最も高度な技術を要するのは、「どれだけの脂肪を取るか」の判断です。脂肪を取りすぎると、逆に目の下が窪んでしまい、骸骨のようなやつれた印象を与えてしまうリスクがあります。

反対に、取り残しがあると黒クマが解消されず、再手術が必要になることもあります。

熟練した医師は、座った状態と寝た状態の両方で重力による脂肪の移動を確認し、将来的な加齢変化も予測しながら、ミリ単位で除去量を調整します。

手術時間の目安と麻酔について

手術自体は両目合わせても30分から40分程度で終了します。麻酔は局所麻酔に加え、点眼麻酔や笑気麻酔、静脈麻酔などを併用することが一般的です。

これにより、手術中の痛みや恐怖心をほとんど感じることなく、リラックスした状態で施術を受けることが可能です。

術後は少し休んでから、その日のうちに帰宅できます。手軽さと効果の高さのバランスが良いことが、この治療法が支持される理由です。

脱脂術だけでは足りない場合の脂肪注入併用

脱脂術で膨らみを取るだけでは強調されてしまう「凹み」や色味の問題に対し、自身の脂肪を注入することで滑らかな曲線を形成し、立体的かつ健康的な目元を作り上げます。

定着すれば半永久的な効果が得られる脂肪注入は、単なるボリューム補充だけでなく、肌質改善や全体のバランス調整にも寄与します。

凹みを埋めるための脂肪注入の役割

脱脂術で膨らみを取った後、その下にある骨の縁や靭帯による溝(凹み)を埋めるために、ご自身の太ももやお腹から採取した脂肪を注入します。

このため、目の下から頬にかけてのラインが滑らかなS字カーブを描くようになり、健康的で若々しい印象が生まれます。

また、脂肪には幹細胞が含まれているため、皮膚の質感改善や色味のトーンアップ効果も期待できます。

黒クマが特にひどい場合、脱脂だけでは皮膚が余ってシワになるリスクがありますが、脂肪注入で中からボリュームを補うことで、そのリスクを軽減する効果もあります。

自分の脂肪を使う安全性と定着率

ヒアルロン酸などの異物とは異なり、自分自身の組織を使用するため、アレルギー反応や拒絶反応のリスクが極めて低いのが特徴です。

注入された脂肪は、最初の数ヶ月で一部が吸収されますが、血管がつながり生き残った脂肪(定着した脂肪)は、その後半永久的にその場に留まります。

つまり、一度定着すれば繰り返しの注入は不要となります。この「一生モノ」の効果が得られる点が、ヒアルロン酸との決定的な違いです。

ナノリッチやコンデンスリッチの違い

採取した脂肪はそのまま注入するのではなく、遠心分離機にかけて不純物を取り除き、濃縮してから使用します。

「コンデンスリッチファット」は、不純物を徹底的に除去し、健全な脂肪細胞と幹細胞を高密度に濃縮したものです。定着率が高く、しこりになるリスクが低いのが特徴です。

さらに、これを細かく粉砕して微細にしたものが「ナノリッチ(ナノファット)」です。

ナノリッチは非常に滑らかで、皮膚の浅い層や細かいシワへの注入に適しており、青クマの色味改善にも効果を発揮します。

主な脂肪注入法の種類と特徴

注入法の種類特徴とメリット適応する悩み
通常の脂肪注入採取した脂肪をそのまま使用。コストは抑えられるが定着率はやや低く、しこりリスクがある。ボリューム不足の改善(予算重視の場合)
コンデンスリッチ遠心分離で不純物を除去・濃縮。定着率が高く、感染症やしこりのリスクが低い。深い溝や窪み、ゴルゴラインの改善、全体的なボリュームアップ
ナノリッチ(ナノファット)脂肪をジェル状に微細化。幹細胞が豊富。ボリュームよりも肌質改善効果が高い。皮膚の薄さ、小ジワ、青クマの色味改善

立体的な若返りを図るデザイン

脂肪注入は単に溝を埋めるだけでなく、顔全体のバランスを整える「造形」の役割も果たします。

例えば、加齢とともに痩せてしまった頬の高い位置(ゴルゴライン周辺)にも注入することで、中顔面がリフトアップして見え、目元だけでなく顔全体の印象を若返らせることができます。

医師の美的センスとデザイン力が問われる部分であり、2次元的な平坦さではなく、3次元的な立体感を目指すことが成功の秘訣です。

重度のたるみを伴う場合の皮膚切除術(ハムラ法)

皮膚のたるみが著しい場合、脂肪を取り除くだけではシワが悪化するため、眼窩脂肪を窪みに移動させつつ余剰皮膚を処理するハムラ法が適しています。

組織を捨てずに再利用するこの方法は、再発リスクが低く、自然な涙袋とハリのある目元を同時に取り戻せる、合理的で高度な術式です。

余った皮膚も同時に処理する必要性

眼窩脂肪が長年突出していたことによって伸びきってしまった皮膚は、脂肪を取り除いただけでは元のハリには戻りません。

むしろ、中身がなくなることで余った皮膚が垂れ下がり、老けた印象を強めてしまうことがあります。そのため、皮膚の切除を伴う外科手術が必要になります。

下まつげの生え際ギリギリを切開するため、傷跡は時間の経過とともにほとんど目立たなくなりますが、脱脂術に比べるとダウンタイムは長くなります。

裏ハムラ法と表ハムラ法の違い

ハムラ法には、皮膚を切らずに結膜側からアプローチする「裏ハムラ法」と、皮膚を切開する「表ハムラ法(切開ハムラ法)」があります。

裏ハムラ法は、皮膚のたるみは少ないが凹凸が目立つ場合に適しており、表面に傷が残りません。

一方、表ハムラ法は皮膚のたるみも同時に解消できるため、重度のたるみと黒クマを併発している場合に最も高い効果を発揮します。

また、表ハムラ法では眼輪筋を引き上げて固定することで、リフトアップ効果も期待できます。

ハムラ法と脱脂術の選択基準

スクロールできます
治療法裏ハムラ法表ハムラ法(切開ハムラ)経結膜脱脂 + 皮膚切除
アプローチまぶたの裏側(結膜)下まつげの生え際(皮膚)結膜(脱脂)+皮膚切除
脂肪の処理凹みへ移動・再配置凹みへ移動・再配置除去して捨てる
皮膚のたるみ対応対応不可強力に改善可能改善可能(ハムラよりは簡易)
推奨される人皮膚のたるみは軽度だが、目袋と凹みの段差が強い人皮膚のたるみが強く、シワも同時に解消したい人脂肪の量が多く、移動だけでは処理しきれない人
ダウンタイム中程度(腫れ・内出血)長め(抜糸あり・腫れ強い)長め(抜糸あり・腫れ強い)

脂肪を移動させて凹みを埋める技術

ハムラ法の最大の特徴は、脂肪を「捨てる」のではなく「移動させる」点にあります。突出している眼窩脂肪を、その下の凹んでいるティアトラフの部分へスライドさせて固定します。

これにより、膨らみと凹みを同時に解消し、平らな面を作ることができます。

自分の組織を使って凹みを埋めるため、脂肪注入のように定着率を気にする必要がなく、血流も保たれているため組織の萎縮も起こりにくいのが利点です。

術後のダウンタイムと傷跡の経過

表ハムラ法の場合、抜糸までの5〜7日間は糸がついた状態となります。

腫れや内出血も脱脂術より強く出る傾向にあり、大きな腫れが引くまでに2週間程度、完全に自然になるまでには3〜6ヶ月を見ておく必要があります。

傷跡は初期には赤みがありますが、メイクで隠せる程度であり、数ヶ月かけて白い細い線へと変化し、最終的にはシワに同化してほとんどわからなくなります。

確実な効果が得られる反面、回復には十分な時間を確保することが大切です。

治療法選びにおける医師の技術とカウンセリング

満足のいく結果を得るためには、解剖学を熟知した形成外科専門医を選び、リスクや費用、アフターケアまでを含めた誠実な説明を受けることが不可欠です。

料金の安さや手軽さだけで判断せず、長期的な視点での診断力と技術力を見極めることが、失敗を防ぐ最重要ポイントとなります。

形成外科的知識に基づいた診断の重要性

目の周りは非常に複雑な構造をしており、眼球や神経、血管が密集しています。単に美容的な観点だけでなく、眼機能への影響も考慮しなければなりません。

そのため、日本形成外科学会専門医の資格を持つ医師や、目元の手術経験が豊富な医師を選ぶことが安心材料の一つとなります。

皮膚の厚み、骨格の形、眼球の位置関係などを正確に把握し、無理のない治療計画を立てられる医師であることが重要です。

メリットだけでなくリスクを説明する姿勢

どのような手術にも必ずリスクや副作用が存在します。「絶対に腫れません」「100%完璧になります」といった良いことしか言わない医師には注意が必要です。

誠実な医師は、起こりうる合併症(内出血、左右差、感染、小ジワの増加など)について事前に詳しく説明し、万が一それが起きた場合の対処法まで提示してくれます。

リスクを理解した上で、納得して手術を受けることが信頼関係の構築につながります。

料金体系の明瞭さと追加費用の有無

美容医療の料金トラブルで多いのが、広告の価格と実際の見積もりが大きく乖離しているケースです。

麻酔代、薬代、検査代、再診料などが含まれているのか、オプションとして追加されるのかを事前に確認しましょう。また、不必要な高額オプションを強く勧めてくるクリニックは避けた方が賢明です。

必要な治療と不要な治療を明確に提示してくれるクリニックを選びましょう。

  • カウンセリング時間を十分に確保し、質問に対して丁寧に答えてくれるか
  • 症例写真が豊富で、自分と似た症状の改善例があるか
  • 「今日契約すれば安くなる」といった強引な勧誘がないか
  • 執刀医の実績や経歴が明確に公開されているか
  • 術後の腫れやダウンタイムについて、楽観的すぎない現実的な説明があるか

アフターケア体制の充実度

手術は「受けたら終わり」ではありません。術後の不安な時期に気軽に相談できるか、経過観察を丁寧に行ってくれるかは非常に重要です。

LINEや電話での相談窓口があるか、修正が必要になった場合の保証制度があるかなどを確認しておきましょう。

術後の検診を医師自身が行ってくれるかどうかも、クリニックの質を見極めるポイントになります。

術後のダウンタイムと日常生活での注意点

手術後の腫れや内出血は通常1〜2週間で落ち着き、翌日からのメイクや洗顔でカバーしながら日常生活を送ることが可能です。

適切なクーリングや生活上の注意点を守ることで回復を早められるため、事前に経過を理解し、無理のないスケジュールを組むことが安心につながります。

腫れや内出血のピークと収束期間

個人差はありますが、腫れや内出血のピークは手術翌日から3日目くらいまでです。泣いた後のような目元のむくみや、白目の一部が赤くなること、目の下が黄色や紫に変色することがあります。

これらは時間の経過とともに重力で下がっていき、黄色くなって消えていきます。

脱脂術のみであれば1週間程度、脂肪注入やハムラ法を併用した場合は2週間程度で、他人から見て違和感のない状態まで落ち着くのが一般的です。

ダウンタイムの一般的な経過目安

経過時期状態と注意点
手術当日麻酔が切れると鈍痛あり。目元を冷やして安静にする。シャワー可。
翌日〜3日目腫れのピーク。目ヤニが出やすくなる。メイク・洗顔可(優しく)。
1週間後大きな腫れが引き、内出血が黄色くなる。コンタクトレンズ再開可(要相談)。
2週間後内出血がほぼ消失。自然な見た目に近づく。軽い運動再開可。
1ヶ月後組織が馴染み、完成形に近づく。つっぱり感などが解消される。
3ヶ月後完全に定着し、完成。

洗顔・メイク・入浴の開始時期

経結膜脱脂法の場合、皮膚に傷がないため、当日から首から下のシャワーは可能です。洗顔やメイクは翌日から可能となることがほとんどですが、目元を強く擦らないように注意が必要です。

入浴(湯船に浸かること)や激しい運動、飲酒など、血行を良くする行為は、腫れや内出血を悪化させる原因となるため、術後1週間程度は控えることが推奨されます。

コンタクトレンズの使用制限

まぶたの裏側(結膜)を操作しているため、術後すぐにコンタクトレンズを使用すると、傷口を刺激したり感染の原因になったりします。

一般的には、腫れが引くまでの1週間程度はメガネでの生活が必要です。特にハードコンタクトレンズは目への負担が大きいため、医師の許可が出てから再開するようにしましょう。

仕事でどうしても必要な場合は、事前に医師に相談し、適切な種類のレンズや装着時間を検討してください。

安静期間中の過ごし方と冷やし方

術後3日間は、保冷剤をタオルで包み、目元を優しく冷やす(クーリング)ことで腫れを最小限に抑えることができます。

ただし、冷やしすぎは血行障害による凍傷のリスクがあるため、断続的に行うことが重要です。また、寝るときは枕を高くして頭を上げることで、顔への血流の滞留を防ぎ、むくみを軽減できます。

スマホやパソコンの長時間使用は目の疲れや充血を引き起こすため、なるべく目を休めるように心がけましょう。

Q&A

ここでは、黒クマ治療に関して患者様から頻繁に寄せられる疑問について、専門的な視点から回答します。不安を解消し、安心して治療に臨むための参考になさってください。

手術中に痛みを感じることはありますか?

手術中は局所麻酔に加えて、点眼麻酔や静脈麻酔などを適切に使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。

特に静脈麻酔を使用した場合は、眠っているような状態で手術が終了します。

ただし、局所麻酔を注入する際の一瞬のチクリとした痛みや、脂肪を引っ張られる際の押されるような感覚を感じることはあります。

術後の痛みについても、処方される鎮痛剤でコントロールできる程度の鈍痛が一般的です。

一度手術を受ければ再発しませんか?

脱脂術で除去した眼窩脂肪細胞は再生しないため、基本的に同じ脂肪が再び増えて突出することはありません。その意味で効果は半永久的と言えます。

しかし、加齢に伴い皮膚のたるみが進行したり、残っている別の脂肪が重力で下がってきたりすることで、長い年月を経て再びクマのような影が現れる可能性はゼロではありません。

それでも、手術をしていない場合に比べて、圧倒的に若々しい目元を維持することができます。

仕事はいつから復帰できますか?

デスクワークであれば、体調に問題がなければ翌日から復帰可能です。ただし、パソコン作業で目が疲れやすくなっているため、適度な休憩が必要です。

接客業などで人前に出る仕事の場合、腫れや内出血をメイクで隠せるようになるまでの2〜3日はお休みを取るか、縁の太いメガネ(伊達メガネ)を使用してカバーすることをお勧めします。

肉体労働の場合は、血圧が上がり出血のリスクがあるため、1週間程度は激しい動きを控える必要があります。

片目だけ治療することは可能ですか?

可能です。左右でクマの程度が大きく異なる場合など、片目だけの手術を行うケースもあります。

ただし、人間の顔は元々左右非対称であり、片方だけを修正することで、逆にもう片方のクマが目立って見えてしまったり、バランスを取るのが難しくなったりすることがあります。

そのため、基本的には両目同時にバランスを見ながら調整することが、最も自然で美しい仕上がりにつながると考えられています。

失敗して凹んでしまった場合の修正はできますか?

他院での脱脂術で脂肪を取りすぎてしまい、目の下が窪んでしまった場合でも、脂肪注入を行うことで修正が可能です。

窪んでいる部分に新たに脂肪を移植し、ボリュームを補うことでフラットな状態に戻します。

ただし、一度癒着してしまった組織への再手術は難易度が高くなるため、初回の手術以上に慎重な医師選びが必要となります。

修正手術の経験が豊富な専門医に相談することをお勧めします。

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この記事を書いた人

Dr.寺井美佐栄のアバター Dr.寺井美佐栄 ミサクリニック 六本木本院 院長

日本抗加齢医学会認定専門医。日本美容皮膚科学会、日本レーザー医学会、日本産業衛生学会専門医。
複数の大手美容皮膚科で10年以上の院長経験を経て、2022年9月にMiSA Clinic(ミサクリニック)を開業。YouTube等でも発信してきた、メスを使わずに”ナチュラルなキレイ”を引き出す技術には定評があり、ありがたいことに「SNSを見ました!」という方や、紹介・口コミ経由でたくさんのご相談を頂いてきました。皆様と共に、MiSA Clinicスタッフ一同、共に年を重ね、末永くお付き合いできる関係を目指して参ります。

資格
アラガン社ボトックスビスタ認定医
アラガン社ヒアルロン酸注入認定医

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