目の周りの脂肪の仕組み。なぜ年齢と共に目元は重く、たるむのか

目の周りの脂肪の仕組み。なぜ年齢と共に目元は重く、たるむのか

ふと鏡を見たとき、目の下の膨らみや上まぶたの重さが気になった経験はありませんか。

年齢と共に目元の印象が変わり、疲れや老いを感じやすくなるのは、多くの場合「目の周りの脂肪」が関係しています。

この記事では、なぜ目の周りの脂肪が目立ってくるのか、その基本的な構造から解説します。加齢によって目元が重く、たるんでしまう原因を深く知ることで、ご自身の悩みの本質的な理解につながるはずです。

目元の構造を正しく理解し、今後のケアや対策を考えるための第一歩としましょう。

目次

目の周りの脂肪とは?基本的な構造を知ろう

私たちの目元には、眼球を守るために重要な役割を持つ脂肪が存在します。これが一般に「目の周りの脂肪」と呼ばれるものの正体です。

この脂肪がどのようなもので、どこにあるのかを知ることが、目元の悩みを理解する鍵となります。

目の周りを守る「眼窩脂肪(がんかしぼう)」

目の周りにある脂肪は、専門的には「眼窩脂肪(がんかしぼう)」と呼ばれます。これは、眼球が収まっている頭蓋骨のくぼみである「眼窩(がんか)」を満たしている脂肪のことです。

眼窩脂肪は、眼球の周りを覆うように存在し、外部からの衝撃を和らげるクッションの役割を果たしています。

この脂肪は、私たちが一般的にイメージする皮下脂肪とは異なり、眼球というデリケートな器官を保護するために特化した脂肪組織です。

非常に柔らかく、流動性があるのが特徴で、薄い膜(眼窩隔膜)によって眼窩内に保持されています。

眼窩脂肪の主な役割

眼窩脂肪の最も重要な役割は、眼球の保護です。日常生活での振動や、万が一の衝撃が直接眼球に伝わらないよう、柔らかいクッションとして機能します。

また、眼球がスムーズに動くための潤滑油のような役割や、眼球を正しい位置に保持する支持組織としての一面も持っています。

この脂肪が適度な量で所定の位置にあれば、目元はすっきりとしていますが、何らかの原因でそのバランスが崩れると、目元の見た目に大きな影響を与え始めます。

眼窩脂肪の主な機能

機能概要目元への影響
クッション機能眼球を外部の衝撃から守る適度な量で目を保護する
支持機能眼球を正しい位置に保つ位置がずれると見た目に影響
平滑な運動補助眼球運動をスムーズにする眼球の動きを助ける

眼窩脂肪が収まる「眼窩」というスペース

眼窩脂肪が収まっている「眼窩」は、骨で囲まれた限られたスペースです。このスペースの容積は決まっており、その中に眼球、眼球を動かす筋肉、神経、血管、そして眼窩脂肪が密集しています。

若い頃は、眼窩脂肪は眼窩隔膜や眼輪筋といった組織によって、眼窩の奥にしっかりと保持されています。

しかし、これらの支持組織がゆるむと、柔らかい眼窩脂肪は重力に従い、前方に押し出されやすくなります。これが、目の下の膨らみや上まぶたの重さとして現れるのです。

脂肪の量は人によって違うのか

眼窩脂肪の量には個人差があります。生まれつき眼窩脂肪が多い人もいれば、少ない人もいます。これは遺伝的な要因が大きく影響すると考えられています。

脂肪の量が多い人は、若い頃から目の下がふっくらしている傾向があります。

そして、年齢を重ねて支える組織がゆるんでくると、その脂肪がより目立ちやすくなり、大きな膨らみ(目袋)やたるみとして現れやすくなります。

逆に脂肪が少ない人は、加齢とともにかえって目元がくぼみやすい傾向が見られます。

なぜ目の周りの脂肪は目立ってくるのか

もともと奥にあったはずの眼窩脂肪が、なぜ年齢と共に目立ってくるのでしょうか。

それは、脂肪そのものが増えるというよりも、脂肪を「支える力」と「押さえる力」が弱まることが最大の原因です。

本来あるべき位置からの「突出」

眼窩脂肪が目立ってくる現象は、脂肪が「突出」する、つまり前方に押し出されてくることによって起こります。

眼窩脂肪は、眼窩隔膜(がんかかくまく)という薄い膜と、その手前にある眼輪筋(がんりんきん)という筋肉によって、眼窩の奥に抑えられています。

しかし、加齢によってこれらの組織がゆるんだり、薄くなったりすると、ダムが決壊するように、内側にある柔らかい眼窩脂肪が前方に飛び出してきます。

この押し出された脂肪が、皮膚を押し上げて膨らみとなり、私たちの目に見える「たるみ」や「重さ」として認識されます。

目の下が膨らむ「目袋」の正体

特に目の下側にできる膨らみは「目袋(めぶくろ)」と呼ばれます。これはまさに、前方に突出した眼窩脂肪そのものです。

若い頃はハリがあった皮膚と、しっかりとした眼輪筋のおかげで目立ちませんが、年齢と共に支えきれなくなった脂肪が重力に負けて垂れ下がり、目立つ膨らみとなります。

この目袋があると、その下にくぼみ(影)ができやすく、疲れた印象や老けた印象を与える大きな原因となります。目の下の「クマ取り」治療で対象となるのは、多くの場合この突出した眼窩脂肪です。

目元の悩みと脂肪の関連

目元の悩み主な原因脂肪の関与
目の下の膨らみ(目袋)眼窩脂肪の突出高(突出した脂肪そのもの)
黒クマ(影クマ)膨らみとくぼみによる影高(膨らみの原因が脂肪)
上まぶたの重さ皮膚のたるみ、脂肪の多さ中~高(脂肪の量が影響)

目の上が重くなる原因

目の下だけでなく、上まぶたが重く感じる場合も、眼窩脂肪が関係していることがあります。上まぶたも同様に、眼窩脂肪を支える組織がゆるむことで、脂肪が前方に下がり、まぶたの皮膚を押し下げます。

もともと眼窩脂肪が多い人や、加齢によって皮膚のたるみが加わると、まぶたが厚ぼったくなり、目が開きにくく感じたり、二重の幅が狭くなったりすることがあります。

これもまた、目元が重く、眠そうな印象を与える一因です。

脂肪の「突出」はいつから始まる?

脂肪の突出が目立ち始める時期には個人差がありますが、一般的には30代後半から40代にかけて自覚する人が多い傾向にあります。

ただし、もともとの脂肪の量や骨格、肌質、生活習慣によって、20代から目立ち始める人もいます。

PCやスマートフォンの長時間使用による目の酷使が、眼輪筋の衰えを早め、若年化の一因となっている可能性も指摘されています。

初期の段階では、「最近疲れが取れない」「寝不足かな?」と感じる程度のわずかな膨らみですが、加齢と共にその進行は避けられません。

年齢と共に目元がたるむ主な要因

目の周りの脂肪が突出する背景には、加齢による「支える組織」の衰えが深く関わっています。皮膚、筋肉、そして土台となる骨格の変化が複合的に絡み合い、目元のたるみを引き起こします。

支える組織「眼輪筋(がんりんきん)」の衰え

眼輪筋は、目の周りをドーナツ状に取り囲んでいる筋肉です。

まばたきをしたり、目を閉じたりする際に使われる重要な筋肉であり、同時に眼窩脂肪が前方に飛び出さないように抑える「壁」の役割も担っています。

しかし、他の筋肉と同様に、眼輪筋も年齢と共に筋力が低下し、ゆるんできます。

特に現代人は、まばたきの回数が減りがちなデジタル機器の凝視や、表情の変化が少ない生活によって、眼輪筋が衰えやすい環境にあります。

この眼輪筋の「壁」がゆるむと、内側からの脂肪の圧力を支えきれず、脂肪が突出しやすくなります。

皮膚のハリ・弾力の低下

目元の皮膚は、顔の他の部分と比べて非常に薄く、デリケートです。厚さは約0.6mmほどしかなく、皮脂腺も少ないため乾燥しやすい特徴があります。

年齢を重ねると、皮膚の真皮層にあるコラーゲンやエラスチンといった、ハリや弾力を保つ成分が減少し、質も低下します。これにより、皮膚は薄く、伸びやすくなります。

ハリを失った皮膚は、内側から突出してくる眼窩脂肪の重みを支えきれず、たるみとして表面化します。また、乾燥や紫外線、摩擦によるダメージも、皮膚の老化を加速させ、たるみを助長します。

加齢による目元の主な変化

変化する部位主な変化目元への影響
皮膚コラーゲン・エラスチンの減少ハリ低下、しわ、たるみ
筋肉(眼輪筋)筋力低下、ゆるみ脂肪を支えきれず突出
骨(眼窩)骨吸収による眼窩の拡大目元のくぼみ、たるみの助長

骨格(眼窩)の変化と影響

あまり知られていませんが、加齢は皮膚や筋肉だけでなく、土台となる骨格にも変化をもたらします。

骨は生涯を通じて新陳代謝を繰り返していますが、年齢と共に骨を作る力よりも骨が吸収される力(骨吸収)が上回るようになります。

目の周りの骨である「眼窩」も例外ではありません。特に目の下側の骨が後退・下降するように変化し、眼窩の入り口が拡大する傾向があります。

眼窩という「器」が大きくなると、その中身である眼窩脂肪を支えるスペースが広がり、脂肪が前方に突出しやすくなったり、目の下がくぼみやすくなったりします。

この骨格の変化が、たるみやくぼみをより深刻化させる土台となります。

遺伝的要因と生活習慣

目元のたるみや脂肪の目立ちやすさには、遺伝的な要因も関わります。前述の通り、生まれつきの眼窩脂肪の量や、骨格、皮膚の質は、ご両親からの遺伝的素因が影響します。

また、生活習慣も無視できません。目を強くこする癖は、デリケートな目元の皮膚や支持組織にダメージを与え、たるみを早めます。

喫煙は血行を悪化させ、皮膚の老化を促進します。長時間のうつむき姿勢でのスマートフォン操作は、目元への負担や顔全体のたるみにつながる可能性があります。

これらの要因が積み重なることで、加齢による変化がより早く、強く現れることになります。

目の周りの脂肪と「クマ」の深い関係

目の下の「クマ」は、多くの女性が悩む問題ですが、その原因は一つではありません。そして、「目の周りの脂肪」は、特に「黒クマ(影クマ)」と呼ばれる種類のクマと非常に深い関係があります。

膨らみが生む「黒クマ(影クマ)」

黒クマ、または影クマと呼ばれるクマの正体は、色素沈着や血行不良ではなく、「影」です。

目の下の眼窩脂肪が前方に突出し、膨らみ(目袋)ができると、その膨らみの下が相対的にくぼみます。この段差によって影ができ、黒っぽく見えてしまうのです。

これは、年齢と共に目立つようになるクマの代表格です。

脂肪の突出が原因であるため、コンシーラーで色を隠そうとしても、膨らみとくぼみの段差(立体的な形状)自体は隠せないため、根本的な改善が難しいのが特徴です。

このタイプのクマの改善には、原因である脂肪の突出に対処することが求められます。

脂肪の突出と血行不良(青クマ・茶クマ)の関連

脂肪の突出が直接的な原因となるのは黒クマですが、他のクマとも無関係ではありません。

例えば、目の下が膨らむことで、その部分の皮膚が薄く引き伸ばされ、下にある血管が透けて見えやすくなり、血行不良による「青クマ」が目立つケースがあります。

また、膨らみが気になって頻繁にマッサージをしたり、コンシーラーを厚塗りしてクレンジングで強くこすったりすることで、摩擦による刺激が「茶クマ(色素沈着)」を悪化させる可能性もあります。

多くの場合、これらのクマは単独ではなく、複合的に現れていることが多いのです。

クマの種類と見分け方

ご自身のクマがどのタイプかを知ることは、適切なケアを選択する上で非常に重要です。簡単な見分け方を紹介します。

クマの種類別特徴

クマの種類主な原因特徴的な見た目
黒クマ(影クマ)脂肪の突出、くぼみによる影上を向くと薄く見える
青クマ血行不良、皮膚が薄い目の下が青黒く見える
茶クマ色素沈着(摩擦、紫外線)皮膚を引っ張っても動かない

クマの簡易セルフチェック

鏡を持って、以下の動作を試してみてください。

  • 顔を正面に向けたまま、真上を見る
  • 皮膚を優しく下に引っ張ってみる

真上を向いたときに、クマ(影)が薄くなったり、消えたりする場合は「黒クマ」の可能性が高いです。膨らみが重力で移動し、段差が少なくなるためです。

皮膚を引っ張ってもクマの色が動かない場合は「茶クマ」、皮膚と一緒に色が動いたり、薄くなったりする場合は「青クマ」の可能性があります。ただし、これらはあくまで簡易的な目安です。

目の周りの脂肪が引き起こす他の悩み

目の周りの脂肪が目立つようになると、クマ以外にも様々な悩みが生じます。これらは見た目の印象や日常生活の質にも影響を与えることがあります。

見た目の印象(疲れ顔・老け顔)

最も大きな悩みは、見た目の印象への影響です。目の下に膨らみがあると、実年齢よりも老けて見られたり、「疲れている?」「寝不足?」と心配されたりすることが増えます。

十分な睡眠をとっていても、脂肪による影(黒クマ)が常にあるため、元気のない印象を与えがちです。

また、上まぶたの脂肪が多く重たい印象だと、眠そうに見えたり、意志が弱そうに見えたりするなど、意図しない印象を他者に与えてしまうこともあります。

メイクのりが悪い・ヨレやすい

目の下に段差(膨らみとくぼみ)があると、ファンデーションやコンシーラーがその段差に溜まりやすくなり、メイクがヨレたり、かえって膨らみが目立ったりすることがあります。

また、上まぶたがたるんでいると、アイシャドウが塗りにくかったり、アイラインがまぶたに隠れてしまったりと、アイメイクが楽しめなくなることも、女性にとっては大きな悩みとなります。

視野が狭く感じる(上まぶたのたるみ)

上まぶたの脂肪の突出や皮膚のたるみが強くなると、単なる見た目の問題だけでなく、機能的な問題を引き起こすことがあります。重くなったまぶたが視野の上方を覆い隠し、物が見えにくくなる状態です。

無意識のうちに眉毛を上げて目を開けようとするため、額にしわが寄りやすくなったり、肩こりや頭痛の原因になったりすることもあります。

これは「眼瞼下垂(がんけんかすい)」とは異なる状態(偽眼瞼下垂)ですが、生活の質(QOL)を低下させる一因です。

脂肪による印象の変化

部位状態与える印象
目の下脂肪が突出し膨らんでいる疲れている、年齢より上に見える
上まぶた脂肪が多く重い眠そう、目が小さく見える

顔全体のバランスへの影響

目元は顔の印象を決定づける非常に重要なパーツです。その目元にたるみや重さがあると、顔全体のバランスにも影響します。

目元がたるむことで、顔の下半分が間延びして見えたり、頬のトップの位置が下がったように感じたりすることもあります。

目元の印象がすっきりするだけで、顔全体が若々しく、引き締まって見えるようになることも少なくありません。

自分でできる目元のケアと限界

目の周りの脂肪やたるみが気になり始めたとき、まずは自分で何かケアができないかと考えるのは自然なことです。セルフケアで対応できることと、難しいことを正しく理解することが大切です。

目元の血行を促す温活・冷活

目元の血行不良が原因である「青クマ」に対しては、セルフケアが有効な場合があります。

ホットタオルや温感アイマスクなどで目元を温める「温活」は、血流を促進し、クマの緩和に役立ちます。

逆に、目がむくんでいる朝などは、冷やしたタオルやスプーンで短時間冷やす「冷活」が、むくみの軽減に役立つことがあります。

ただし、これらはあくまで一時的な血行促進やむくみ対策であり、脂肪の突出や皮膚のたるみ自体を改善するものではありません。

保湿と紫外線対策の重要性

目元の皮膚は非常に乾燥しやすく、紫外線のダメージも受けやすい部位です。乾燥は小じわの原因となり、紫外線は皮膚のコラーゲンを破壊し、たるみや色素沈着(茶クマ)を促進します。

目元専用のアイクリームなどでしっかりと保湿を行い、アイメイクの上からでも使える日焼け止めや、サングラス、帽子などで紫外線対策を徹底することは、これ以上の老化を予防し、現状を悪化させないために非常に重要です。

セルフケアの種類と目的

ケアの種類目的脂肪への効果
ホットタオル(温活)血行促進(青クマ対策)なし
アイクリーム保湿、ハリ維持(小じわ・乾燥対策)なし
紫外線対策色素沈着・光老化予防なし

眼輪筋トレーニングの注意点

眼輪筋の衰えに対して、眼輪筋トレーニングを試みる人もいます。眼輪筋を意識して動かすこと自体は、筋肉の衰えを予防する上で一定の意義があると考えられます。

しかし、注意も必要です。やり方が正しくないと、かえって目元の皮膚に負担をかけ、しわやたるみを助長する危険性があります。

また、トレーニングによって眼輪筋が鍛えられたとしても、すでに突出してしまった脂肪を元の位置に戻すほどの効果を期待するのは困難です。

過度な期待はせず、あくまで予防の一環として慎重に行う必要があります。

セルフケアでは脂肪の「量」は減らせない

ここで最も重要な点を明確にしておきます。セルフケアで「眼窩脂肪の量を減らす」ことや、「突出した脂肪を元の位置に戻す」ことはできません。

眼窩脂肪は、ダイエットで燃焼する皮下脂肪とは性質が異なります。マッサージで脂肪を押し込もうとすることも、デリケートな目元を傷つけるだけで効果は期待できません。

化粧品も同様で、皮膚のハリを保つことはできても、脂肪そのものに作用することはできません。

脂肪の突出(黒クマ)や重度のたるみを根本的に解決するには、セルフケアの領域を超える問題であると認識することが必要です。

医療機関で相談できる「目の周りの脂肪」対策

セルフケアでは対応できない目の周りの脂肪による膨らみやたるみは、美容医療の領域で相談が可能です。どのようなアプローチがあるのか、基本的な考え方を知っておきましょう。

脂肪の突出に対するアプローチ

医療機関での対策は、目元の状態によって異なりますが、脂肪の突出が主な原因である場合、その脂肪自体に直接アプローチします。

主な方法は、突出した余分な脂肪を取り除く「脱脂(だっし)」か、突出した脂肪をくぼんでいる部分に移動させて平らにする「脂肪再配置」です。

これらの方法は、目元の解剖を熟知した医師によって行われる必要があります。どの方法が適しているかは、脂肪の突出の程度、皮膚のたるみ具合、くぼみの有無、骨格などを総合的に診断して決定します。

膨らみを取る「脱脂(だっし)」とは

「経結膜脱脂(けいけつまくだっし)」とも呼ばれる方法で、まぶたの裏側(結膜)を小さく切開し、そこから突出している眼窩脂肪を適量取り除きます。

皮膚の表面には一切傷がつかないため、ダウンタイムが比較的短いのが特徴です。

主に、皮膚のたるみがまだ少なく、目の下の膨らみ(目袋)だけが目立つ若い世代から中年層に適応されます。ただし、脂肪を取りすぎると逆にくぼんでしまうリスクもあるため、医師の技術と診断力が重要です。

脂肪を移動させる「脂肪再配置」

目の下の膨らみ(突出した脂肪)と、その下のくぼみ(影クマ)が両方とも目立つ場合に用いられる方法です。

膨らみの原因である眼窩脂肪を取り除くのではなく、その脂肪をくぼんでいる部分(骨の上)に移動させて固定し、目の下を平らに整えます。

自分の脂肪を利用するため、異物反応などの心配がありません。膨らみとくぼみを同時に解消できるため、より滑らかで自然な仕上がりが期待できます。

脱脂と同様に、まぶたの裏側から行う方法が主流です。

主な治療法の比較(概要)

治療法概要主な対象
経結膜脱脂まぶたの裏側から脂肪を除去膨らみが主でたるみが少ない人
脂肪再配置突出した脂肪をくぼみへ移動膨らみとくぼみが混在する人
皮膚切開(参考)余分な皮膚と脂肪を除去皮膚のたるみが非常に強い人

医療機関を選ぶ際のポイント

目の周りは非常にデリケートで、顔の印象を左右する重要な部位です。治療を検討する際は、慎重に医療機関を選ぶ必要があります。

価格や手軽さだけで選ぶのではなく、医師が目元の解剖学に精通しているか、類似の症例経験が豊富かを確認することが大切です。

また、カウンセリングに十分な時間をかけ、ご自身の希望を丁寧に聞いた上で、最適な方法だけでなく、潜在的なリスクやダウンタイムについても明確に説明してくれる信頼できる医師を見つけることが、満足のいく結果への近道です。

医療機関選びの確認点

  • 目元の解剖を熟知した専門の医師か
  • 十分なカウンセリングの時間があるか
  • リスクやダウンタイムの説明が明確か

目の周りの脂肪に関するよくある質問

目の周りの脂肪は太ると増えますか?

一般的な体の皮下脂肪とは異なり、目の周りの眼窩脂肪は、体重の増減によって大きく増えたり減ったりすることは少ないと考えられています。

目の下の膨らみが目立つのは、脂肪の「量」が増えたというよりも、脂肪を支える組織がゆるんで前方に「突出」することが主な原因です。

ただし、極端な体重増加が全く影響しないとは言い切れないため、健康的な体重維持は大切です。

一度取った脂肪は再生しますか?

脱脂治療などで一度除去した眼窩脂肪が、元の状態まで「再生」することは基本的にないと考えられています。脂肪細胞そのものの数を取り除くためです。

そのため、治療の効果は長期的に持続しやすいと言えます。

ただし、取り残した脂肪が将来的に突出してきたり、加齢によって皮膚や筋肉のたるみが進行したりすることで、再び目元が変化することはあり得ます。

マッサージで脂肪を減らせますか?

マッサージによって眼窩脂肪を減らしたり、突出した脂肪を元の位置に戻したりすることはできません。

目の周りの皮膚は非常に薄くデリケートなため、強いマッサージや摩擦は、かえって皮膚を伸ばしてたるみを悪化させたり、色素沈着(茶クマ)を引き起こしたりするリスクがあります。

セルフケアは、血行促進や保湿といった予防的な範囲に留めるべきです。

クマ取り治療は痛いですか?

治療中は局所麻酔や、場合によっては静脈麻酔などを使用するため、手術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。

治療後、麻酔が切れると多少の痛みや違和感(ゴロゴロする感じなど)が出ることがありますが、通常は処方される鎮痛剤でコントロールできる範囲です。

痛みの感じ方には個人差があるため、不安な点は事前に医師に確認することが重要です。

参考文献

DARCY, Sean J., et al. Magnetic resonance imaging characterization of orbital changes with age and associated contributions to lower eyelid prominence. Plastic and reconstructive surgery, 2008, 122.3: 921-929.

COBAN, Istemihan, et al. Anatomical basis for the lower eyelid rejuvenation. Aesthetic Plastic Surgery, 2023, 47.3: 1059-1066.

KAKIZAKI, Hirohiko, et al. Lower eyelid anatomy: an update. Annals of plastic surgery, 2009, 63.3: 344-351.

KIM, Junhyung, et al. Ageing of the bony orbit is a major cause of age-related intraorbital fat herniation. Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery, 2018, 71.5: 658-664.

LAMBROS, Val. Observations on periorbital and midface aging. Plastic and reconstructive surgery, 2007, 120.5: 1367-1376.

VAN DEN BOSCH, Willem A.; LEENDERS, Ineke; MULDER, Paul. Topographic anatomy of the eyelids, and the effects of sex and age. British journal of ophthalmology, 1999, 83.3: 347-352.

BUCHANAN, Dallas R.; WULC, Allan E. Contemporary thoughts on lower eyelid/midface aging. Clinics in plastic surgery, 2015, 42.1: 1-15.

COLEMAN, Sydney R.; GROVER, Rajiv. The anatomy of the aging face: volume loss and changes in 3-dimensional topography. Aesthetic surgery journal, 2006, 26.1_Supplement: S4-S9.

UGRADAR, Shoaib; KIM, Jane S.; MASSRY, Guy. A review of midface aging. Ophthalmic Plastic & Reconstructive Surgery, 2023, 39.2: 123-131.

MUPAS-UY, Jacqueline, et al. Age-related eyelid changes. J Cosmet Med, 2017, 1.1: 16-24.

クマの原因・メカニズムに戻る

目の下のクマの原因・種類・セルフケアの基本知識TOP

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Dr.寺井美佐栄のアバター Dr.寺井美佐栄 ミサクリニック 六本木本院 院長

日本抗加齢医学会認定専門医。日本美容皮膚科学会、日本レーザー医学会、日本産業衛生学会専門医。
複数の大手美容皮膚科で10年以上の院長経験を経て、2022年9月にMiSA Clinic(ミサクリニック)を開業。YouTube等でも発信してきた、メスを使わずに”ナチュラルなキレイ”を引き出す技術には定評があり、ありがたいことに「SNSを見ました!」という方や、紹介・口コミ経由でたくさんのご相談を頂いてきました。皆様と共に、MiSA Clinicスタッフ一同、共に年を重ね、末永くお付き合いできる関係を目指して参ります。

資格
アラガン社ボトックスビスタ認定医
アラガン社ヒアルロン酸注入認定医

目次