高価なアイクリームを塗り続けても、コンシーラーで隠そうとしても、どうしても消えない目の下のクマやたるみ。
その根本的な原因は、皮膚表面ではなく、その奥にある「眼輪筋」の筋力低下にあります。
眼輪筋は目元の脂肪や皮膚を支える唯一の土台であり、この筋肉が衰えることで支えきれなくなった脂肪が前に押し出され、影となって黒クマを作り出すのです。
本記事では、目元の老化メカニズムを解剖学的な視点から紐解き、自宅で安全かつ効果的に実践できる眼輪筋トレーニングの具体的な方法を解説します。
今日から始める「鍛える」ケアで、若々しい目元を取り戻しましょう。
眼輪筋の構造と目元老化が進行する解剖学的理由
目元の老化現象を食い止めるためには、まず私たちの目周りがどのような構造で支えられているかを知ることが重要です。
眼輪筋の筋力低下が直接的にたるみやクマを引き起こす主因であることを理解すれば、なぜ表面的なスキンケアだけでは解決しないのかが明確になります。
眼窩脂肪を支える防波堤としての役割
眼輪筋は、眼球が入っている頭蓋骨の穴(眼窩)の周囲をぐるりと囲むように存在するドーナツ状の筋肉です。
この筋肉は単にまぶたを開閉させるだけでなく、眼球の下にあるクッションのような脂肪「眼窩脂肪」が前に飛び出してこないように抑え込む役割を担っています。
いわば「防波堤」や「ガードル」のような働きをしているのです。
若い頃は眼輪筋に十分な厚みとハリがあるため、眼窩脂肪をしっかりと奥に押し留めておくことができます。 その結果、目の下は平らで滑らかな状態を保ちます。
しかし、眼輪筋が衰えて薄く伸びてしまうと、その抑え込む力が弱まり、重力に負けた眼窩脂肪が徐々に前方へと突出してきます。
これが目の下の「膨らみ」の正体であり、その膨らみの下にできる影が「黒クマ」と呼ばれるものです。
加齢による筋繊維の萎縮と皮膚への影響
体の他の筋肉と同様に、眼輪筋も使わなければ加齢とともに痩せていきます。
筋繊維が細くなり、筋肉全体のボリュームが減少することを筋萎縮と呼びますが、目元でこれが起こると深刻な外見上の変化をもたらします。
筋肉は皮膚の直下にあり、皮膚を内側からパンと張らせる土台の役割も果たしています。
土台である筋肉が痩せてしぼんでしまうと、その上を覆っている皮膚には余りが生じます。 この余った皮膚が重力によって垂れ下がり、「ちりめんジワ」や「皮膚のたるみ」となって現れます。
つまり、眼輪筋の衰えは、脂肪の突出による「影(クマ)」と、皮膚の余りによる「シワ」の両方を同時に引き起こす要因となるのです。
眼輪筋の状態と目元への影響比較
| 状態 | 健康な眼輪筋 | 衰えた眼輪筋 |
|---|---|---|
| 筋肉の厚み | 厚みがあり、弾力性に富んでいる。 | 薄く引き伸ばされ、ペラペラの状態。 |
| 眼窩脂肪の保持力 | 脂肪をしっかりと眼窩内に押し留める。 | 脂肪の重さを支えきれず、前方へ突出を許す。 |
| 皮膚の状態 | 内側からハリがあり、シワができにくい。 | 余剰皮膚が生まれ、たるみや小ジワが発生する。 |
現代人に多い瞬きの不完全さと筋力低下
現代生活において眼輪筋の衰えを加速させている大きな要因の一つが、瞬き(まばたき)の質の低下です。
本来、正しい瞬きとは上まぶたと下まぶたがしっかりと接触し、眼輪筋が収縮する動作を指します。
スマートフォンやパソコンの画面を長時間凝視する生活が続くと、瞬きの回数が減るだけでなく、まぶたが完全に閉じきらない「瞬き不全」の状態に陥る人が増えています。
眼輪筋を使わずに、額の筋肉(前頭筋)を使って目を見開く癖がついている人も少なくありません。
正しく筋肉を使わない期間が長く続くほど、眼輪筋は急速に衰退し、若年層であっても目元の老化サインが現れるようになります。
あなたのクマはどのタイプ?眼輪筋との関連性を知る
眼輪筋の衰えが直接的な原因となる「黒クマ」と、血行不良や色素沈着が原因のクマを区別することは、正しい対策を選ぶ上で不可欠です。
眼窩脂肪の突出が作る影「黒クマ」
眼輪筋の衰えと最も密接に関係しているのが「黒クマ」です。
先述の通り、眼輪筋が弱まることで支えきれなくなった眼窩脂肪が前に出てきて、目の下に膨らみを作ります。
この膨らみの下側にできる「影」が黒く見えるため、黒クマと呼ばれます。
特徴としては、上を向いて光を当てると影が消えて目立たなくなることや、手で皮膚を引っ張ると影の形が変わることが挙げられます。
色素沈着ではないため、コンシーラーやファンデーションで隠そうとしても、凹凸による影であるため隠しきれないのが難点です。
このタイプは、眼輪筋トレーニングによって脂肪を支える力を取り戻すことが、改善への最も論理的なアプローチとなります。
眼輪筋トレーニングが有効なクマの特徴
- 鏡を見ながら顔を天井に向けたとき、クマが薄くなる。
- 夕方になると目元がくぼみ、影が濃くなる。
- 目の下に膨らみがあり、その下にハの字のラインがある。
- 指で皮膚を横に引っ張ると、影の形が変わる。
血行不良が透けて見える「青クマ」
目の下の皮膚は非常に薄いため、その下を流れる毛細血管の色が透けて見えやすい部位です。
睡眠不足や冷え、眼精疲労などによって血液中の酸素が不足し、血液が黒ずんで滞ると、それが薄い皮膚を通して青黒く見えます。 これが「青クマ」です。
眼輪筋は動かすことでポンプの役割を果たし、周囲の血流を促進する機能を持っています。
したがって、直接的な原因は血行不良ですが、眼輪筋を鍛えてよく動かすことは、目周りの血流改善に繋がり、結果として青クマの解消にも寄与します。
スマホの見過ぎで目が疲れている人に多く見られるタイプです。
皮膚の色素沈着による「茶クマ」
「茶クマ」は、紫外線によるメラニンの生成や、目をこする摩擦による色素沈着、あるいは角質肥厚などが原因です。 皮膚そのものが茶色く染まってしまった状態を指します。
皮膚を引っ張っても、上を向いても色が消えないのが特徴です。
このタイプに関しては、眼輪筋の衰えが直接的な原因ではありません。むしろ、間違ったマッサージや過度なトレーニングで皮膚を擦ってしまうと悪化するリスクがあります。
茶クマがある場合は、美白ケアや摩擦を避けることが優先されますが、皮膚の代謝を促すという意味で、適度な運動による血行促進は補助的な効果を期待できます。
眼輪筋の衰えレベルを確認するセルフチェック
代償動作を使わずに眼輪筋を正しく動かせているか、鏡を使って現状を把握することが改善への第一歩です。
まぶたの開閉動作による筋力チェック
まず、目を閉じた状態から、パッと大きく目を見開いてみてください。 この時、額にシワが寄っていないかを確認します。
もし眉毛が大きく上がったり、おでこに横シワが入ったりしている場合は、眼輪筋の力だけでまぶたを持ち上げられていない証拠です。
本来、まぶたの挙上は眼瞼挙筋やミュラー筋などが担いますが、眼輪筋のサポートや柔軟性も関係します。
また、目を「ギュッ」と強くつぶった後、パッと開いた時に、上まぶたや下まぶたがピクピクと痙攣する場合も、筋力が低下し疲労しているサインです。
セルフチェック項目と判定基準
| チェック項目 | 判定のポイント | 想定されるリスク |
|---|---|---|
| 額のシワ確認 | 目を開ける時に眉が上がり、額にシワが寄る。 | 眼瞼下垂の進行や、将来的な額の深いシワの定着。 |
| 下まぶたの動き | 下まぶただけを動かすことができず、頬や口も動く。 | 下眼瞼の脂肪突出(目袋)の加速、黒クマの悪化。 |
| まばたきの強度 | 高速で瞬きをすると目が疲れ、動きが鈍くなる。 | ドライアイの悪化、目元の血行不良による青クマ。 |
下まぶたの反応速度と独立した動き
次に、人差し指を目尻に軽く置き、「薄目」を開けるような動作をします。 具体的には、眩しいものを見る時のように下まぶただけを上に持ち上げる動作を試みます。
この時、下まぶたがスムーズに動かなかったり、頬の筋肉(大頬骨筋など)を使って無理やり持ち上げようとして口元が一緒に動いてしまう場合は注意が必要です。
眼輪筋、特に下眼瞼部分の筋力が著しく低下しています。
下まぶたの眼輪筋は意識して動かさないと神経回路が鈍くなりやすい部位ですので、この動作ができない人は黒クマ予備軍、あるいは既に進行中である可能性が高いです。
真顔と笑顔のギャップ確認
真顔の時には目の下の膨らみが目立つのに、笑って頬が上がると目立たなくなる、あるいは逆に笑った時に目袋が強調される、といった変化もチェックポイントです。
笑った時に目尻にカラスの足跡のような深いシワが入り、それが真顔に戻ってもなかなか消えない場合、眼輪筋の弾力が失われている可能性があります。 皮膚の復元力が弱まっていることを示唆しています。
あっかんべーをするように下まぶたを下げた後、指を離した瞬間にスッと元の位置に戻るかどうかも確認してください。
戻りが遅い場合、筋肉と皮膚の緩みが進行しています。
基本の眼輪筋トレーニングで下まぶたを鍛える
特別な器具を使わず、下まぶたの筋肉をピンポイントで動かす感覚を養うための実践的なエクササイズを紹介します。
実践スケジュールの目安
| タイミング | おすすめのトレーニング | 目的 |
|---|---|---|
| 朝(メイク前) | 8の字視線移動 ウィンク運動 | 寝起きでむくんだ目元の血流を流し、目をパッチリさせる。 |
| 日中(仕事中) | 下まぶた上げ運動 (数回程度) | 凝り固まった筋肉をリセットし、眼精疲労を防ぐ。 |
| 夜(入浴中) | 下まぶた上げ運動 (しっかり10回) | 体が温まった状態で負荷をかけ、筋肥大と修復を促す。 |
下まぶた上げ運動(リフトアップ・アイ)
これは眼輪筋の下部を重点的に鍛え、眼窩脂肪の突出を押し戻すための最も基本的なトレーニングです。
トレーニングの手順
まず、口を「お」の形に縦に大きく開きます。 この動きによって、顔全体の皮膚が下に引っ張られ、目元がストレッチされた状態を作ります。この状態をキープしたまま、目線だけを天井に向けます。
次に、下まぶたの筋肉だけを使って、下まぶたを上に引き上げます。 「眩しい」という表情を作るイメージです。上まぶたは動かさないように意識し、下まぶたがピクピクと動くのを感じてください。
この引き上げた状態を5秒キープし、ゆっくりと戻します。 これを1セットとして、1日10回程度行います。
最初は指で軽く下まぶたの動きを補助しても構いません。
8の字視線移動(アイ・ムーブメント)
眼輪筋だけでなく、眼球を動かす外眼筋も同時に刺激し、目元全体の血流を改善するトレーニングです。 眼輪筋の奥にある深層筋もほぐれるため、眼精疲労の解消にも効果的です。
トレーニングの手順
顔は正面に向けたまま動かさず、目線だけを動かします。
まず、視線で空中に大きな「8」の字を描きます。 右回り、左回りと交互に行います。この時、できるだけ視界の端を見るように、大きく眼球を動かすことがポイントです。
眼球を動かすことで、連動して眼輪筋も収縮と伸展を繰り返します。PC作業の合間などに行うと、凝り固まった筋肉がリセットされ、むくみの予防にもなります。 各方向5回ずつを目安に行いましょう。
ウィンク・トレーニング(左右バランス調整)
左右の目の大きさの違いや、クマの出方の左右差を整えるためのトレーニングです。 意識的に片目だけを閉じる動作は、普段使わない筋肉の神経回路を目覚めさせます。
トレーニングの手順
片目ずつ交互にウィンクを行います。
ただし、通常のウィンクのように軽く閉じるのではありません。 頬の筋肉を持ち上げながら、下まぶたもしっかりと持ち上げて目を閉じ、閉じた状態で2秒ほど強く力を入れます。
その後、パッと大きく開きます。 これを左右交互にリズミカルに行います。難しい方の目は筋肉が衰えている証拠なので、回数を多めに行うなどして調整します。
頬骨の上にある筋肉と眼輪筋の連動性を高め、頬のリフトアップ効果も期待できます。
日常生活で意識すべき目元の使い方の癖
無意識に行っている「目をこする」「下を向く」といった悪習慣を断ち、トレーニングの効果を無駄にしないためのポイントを指摘します。
摩擦を与える動作の徹底排除
最も避けるべきは「目をこする」行為です。
花粉症やアレルギーで目がかゆい時、眠い時、あるいは洗顔やクレンジングの際に、ゴシゴシと力を入れてこすっていませんか。
この摩擦は、皮膚のコラーゲン繊維を断裂させ、たるみを引き起こすだけでなく、眼輪筋そのものにも物理的なダメージを与えます。
さらに、摩擦による色素沈着が茶クマの原因にもなります。
洗顔時は泡のクッションを使い、手と肌が直接触れないように優しく洗うことが重要です。 タオルで拭く際も押さえるだけに留めることが、目元を守る基本です。
見直すべきNG習慣リスト
- クレンジングや洗顔の際、指に力を入れてゴシゴシと横に擦る。
- スマホ操作時、猫背で顔が常に下を向いている。
- コンタクト着脱時に、目尻や下まぶたを強く引っ張る。
- 日差しが強い日、眉間にシワを寄せて見ている。
スマートフォンの使用姿勢と視線
スマホを見る時、多くの人は顔を下に向け、目線だけを下げて画面を見る「下向き姿勢」になっています。
この姿勢は、重力によって頬や目元の脂肪が下垂するのを助長します。 また、長時間近くを見続けることで毛様体筋が緊張し、血流が悪化することも問題です。
スマホを見る際は、できるだけ目の高さまで持ち上げて見るようにしましょう。 定期的に遠くを見て筋肉を緩める意識を持つことも大切です。
無表情で画面を見続けることも筋力低下を招くため、画面を見ながらでも時々口角を上げるなど、表情筋を動かす工夫を取り入れましょう。
コンタクトレンズ着脱時の牽引
ハードコンタクトレンズやソフトレンズを外す際、指でまぶたを横や下に強く引っ張って目を大きく開いていませんか。
この毎日の「引っ張る」動作の蓄積は、まぶたの皮膚と眼輪筋を徐々に伸ばし、たるみやまぶたの下垂を引き起こす大きな要因となります。
レンズを外す際は、皮膚を引っ張るのではなく、瞬きの力を利用したり、専用の器具を使ったりする方法を習得する必要があります。 皮膚への負担を最小限にすることを心がけましょう。
長年の習慣が今の目元を作っていることを自覚し、丁寧な所作を身につけることが大切です。
表情筋トレーニングの効果を高めるマッサージとケア
トレーニング前の準備運動と終了後の保湿・鎮静ケアをセットで行うことで、筋肉の可動域を広げ、シワの定着を防ぎます。
側頭筋と前頭筋をほぐす頭皮マッサージ
目元の筋肉は、頭の筋肉と筋膜で繋がっています。
特にこめかみ付近の「側頭筋」や、おでこの「前頭筋」が凝り固まっていると、眼輪筋が上から押しつぶされたり、引き上げる力が弱まったりします。
トレーニング前に、指の腹を使って側頭部を円を描くようにマッサージしましょう。 頭皮全体を引き上げるようにほぐします。
そうすることで、目元の筋肉にかかっているロックが外れ、目が開きやすくなります。 頭皮の柔軟性は、目元のリフトアップに直結します。
トレーニング効果を高めるサポートケア
| ケアの種類 | 期待できる相乗効果 | 実施のポイント |
|---|---|---|
| 頭皮マッサージ | 顔全体のリフトアップと眼輪筋の可動域拡大。 | 側頭部を重点的に、指の腹で頭蓋骨から皮を剥がすイメージで。 |
| 温熱ケア | 血行促進による青クマ改善と筋肉の柔軟化。 | 火傷に注意し、心地よい温度で5〜10分程度温める。 |
| 高保湿ケア | 表情ジワの定着予防と皮膚のハリ維持。 | トレーニング前後には必ず塗布し、摩擦を防ぐ。 |
ホットタオルによる血流促進と準備運動
トレーニングを行うのに最適なタイミングは、血流が良くなっている時です。
入浴中がベストですが、それ以外の時間に行う場合は、ホットタオルやホットアイマスクで目元を5分程度温めてから行うことを推奨します。
温めることで血管が拡張し、青クマの原因である鬱血が改善されるだけでなく、筋肉の柔軟性が高まります。
温めた直後に保湿クリームを塗り、滑りを良くした状態で軽いリンパマッサージを行いましょう。 その後に筋トレへと移行する流れが、最も効率的かつ安全なルーティンです。
トレーニング後の保湿と鎮静ケア
表情筋トレーニングは、皮膚を伸縮させる運動でもあります。
乾燥した状態で皮膚を繰り返し折り曲げると、その跡がシワとして定着してしまうリスクがあります。トレーニング前には必ず乳液やクリームを塗布し、皮膚の潤いを確保してください。
そしてトレーニングが終わった後も、酷使した肌を労わるように、アイクリームなどで蓋をします。
成分としては、コラーゲンの生成を助けるレチノールや、ハリを与えるペプチドなどが配合されたものが好ましいです。
トレーニングで改善しない場合の美容医療という選択肢
眼窩脂肪の突出が著しい場合や即効性を求める場合には、セルフケアの限界を理解し、専門家による外科手術や注入療法を検討することも有用です。
外科的アプローチによる根本解決
既に飛び出してしまった眼窩脂肪の量が物理的に多い場合、トレーニングで押し戻すことは困難です。
この場合、まぶたの裏側から脂肪を取り除く「経結膜脱脂法」が代表的な治療法となります。 皮膚を切開しないため傷跡が見えず、ダウンタイムも比較的短いのが特徴です。
また、脂肪を取り除くだけでなく、凹んでいる部分に移動させて平らにする「ハムラ法」など、症状に合わせた術式が存在します。
これらは物理的に原因を除去または移動させるため、劇的な変化が期待できます。
美容医療を検討する際の判断基準
- 半年以上トレーニングを継続しても、目に見える変化がない。
- クマの段差が大きく、メイクでも全く隠せない。
- すぐに結果を出したいイベントが控えている。
- セルフケア時間を短縮し、確実な結果を得たい。
注入療法による一時的な補正
外科手術に抵抗がある場合、ヒアルロン酸や自身の脂肪を注入して、段差を埋める方法もあります。
これは眼窩脂肪を減らすのではなく、その下の凹みを盛り上げることで、影を目立たなくさせるアプローチです。
また、最近では「スネコス」や「プロファイロ」といった、皮膚そのもののハリを再生させる注入製剤も登場しています。 眼輪筋の上の皮膚を厚くすることで透けや影を改善する方法も選択できます。
これらは手軽ですが、効果は永続的ではないため、定期的なメンテナンスが必要となります。
Q&A
トレーニングの頻度や期間、メイクへの影響など、実践する際によくある疑問にお答えします。
- 眼輪筋トレーニングは毎日やっても大丈夫ですか?
-
はい、基本的には毎日行っていただいて構いません。
眼輪筋は小さな筋肉であり、腕や脚の筋肉のように激しい損傷と修復のサイクルを数日空けて待つ必要性は低いです。
むしろ、日常的に使われずに怠けている筋肉なので、毎日少しずつ刺激を与えて、神経伝達をスムーズにすることが重要です。
ただし、やりすぎは禁物です。 筋肉がピクピクと痙攣したり、痛みを感じたりする場合はオーバートレーニングの可能性があります。
その場合は1日休むなど様子を見てください。 継続こそが力なりですので、無理のない範囲で習慣化することを目指しましょう。
- 効果が出るまでにどれくらいの期間が必要ですか?
-
個人差や年齢、現在の筋肉の状態にもよりますが、早い人で2週間程度で「目が開きやすくなった」「むくみが取れた」といった変化を感じ始めます。
見た目としてのクマやたるみの改善、つまり筋肉のボリュームアップやリフトアップ効果を実感するには、細胞のターンオーバーも関係します。 最低でも3ヶ月から半年程度の継続が必要です。
即効性を期待しすぎず、まずは毎日のスキンケアの一環として長く続ける心構えを持つことが成功の鍵です。
- 逆にシワが増えてしまうことはありますか?
-
乾燥した肌でトレーニングを行ったり、間違ったフォームで過剰に力を入れたりすると、表情ジワが定着してしまうリスクはゼロではありません。
特に目尻や眉間のシワは、筋肉の収縮によって深くなる傾向があります。
これを防ぐためには、トレーニング前に必ずアイクリームなどで保湿を行うことが大切です。 そして鏡を見ながら不要な部分(額や眉間)に力が入っていないかを確認しましょう。
正しいフォームで行えば、筋肉が皮膚を内側から張り出し、逆にシワを目立たなくする効果が期待できます。
- メイクをしたままでもトレーニングできますか?
-
物理的には可能ですが、推奨はしません。
メイクをしている状態、特にファンデーションやコンシーラーを厚塗りしている状態で皮膚を激しく動かすと、化粧崩れの原因になります。 それだけでなく、化粧品が毛穴に入り込んだり、皮脂と混ざって酸化したりする可能性があります。
また、トレーニング時は保湿が重要ですが、メイクの上からでは十分な保湿ができません。
できれば入浴中や、メイクを落としてスキンケアを済ませた後の清潔な状態で行うのが、肌にとっても筋肉にとっても理想的です。
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