鏡を見るたびに気になる、目の下のクマ。コンシーラーで隠しても、夕方にはどんよりと疲れた印象に見えてしまい、気分まで沈んでしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな目の下のクマを手軽に改善できる治療として、ヒアルロン酸注入は人気を集めています。しかし、手軽さゆえに「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも少なくありません。
この記事では、クマへのヒアルロン酸注入で失敗しないために、後悔しやすい方の特徴から、信頼できる医師の選び方、施術後の注意点まで、あなたの不安を解消するための情報を詳しく解説します。
目の下のクマの種類とヒアルロン酸注入の基本
目の下のクマと一言でいっても、原因によっていくつかの種類に分けられます。
ヒアルロン酸注入がどのタイプのクマに有効なのか、まずは基本的な知識から確認しましょう。自分のクマがどのタイプかを知ることが、適切な治療を選ぶ第一歩です。
あなたのクマはどのタイプ?原因と見分け方
クマは主に「青クマ」「茶クマ」「黒クマ」の3種類に大別されます。それぞれ原因が異なるため、対処法も変わってきます。
ヒアルロン酸注入が特に効果を発揮するのは、皮膚のたるみやへこみが原因で影ができてしまう「黒クマ」です。
クマのタイプ別特徴
| クマの種類 | 主な原因 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 青クマ | 血行不良 | 皮膚を引っ張ると色が薄くなる |
| 茶クマ | 色素沈着 | 皮膚を引っ張っても色の変化がない |
| 黒クマ | 皮膚のたるみ・へこみ | 上を向くとクマが薄くなる |
なぜヒアルロン酸がクマに効くのか
ヒアルロン酸は、もともと人間の体内に存在する保湿成分です。高い保水力を持ち、肌のハリや弾力を保つ働きをしています。
これを目の下のくぼんだ部分に注入することで、皮膚を内側から持ち上げ、へこみを平らにします。
その結果、たるみによってできていた影(黒クマ)が目立たなくなり、顔全体が明るく若々しい印象になるのです。
ヒアルロン酸注入のメリットとデメリット
手軽さが魅力のヒアルロン酸注入ですが、良い点ばかりではありません。治療を受ける前には、メリットとデメリットの両方を正しく理解し、納得した上で判断することが重要です。
治療を受ける前に知っておきたいこと
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 施術時間 | 10分〜30分程度と短い | – |
| ダウンタイム | ほとんどなく、当日からメイクも可能 | 内出血や腫れが出ることがある |
| 効果の持続性 | – | 永続的ではなく、半年〜2年程度で吸収される |
| 修正 | ヒアルロニダーゼで溶かして修正できる | 技術がないと凹凸やしこりの原因になる |
ヒアルロン酸注入で後悔?よくある失敗例
「手軽にクマが消える」というイメージがある一方で、ヒアルロン酸注入による失敗例も報告されています。
どのような失敗があるのかを具体的に知ることで、リスクを正しく認識し、回避するための対策を立てることができます。
凹凸ができてしまった(チンダル現象)
目の下の皮膚は非常に薄いため、ヒアルロン酸を注入する層が浅すぎると、注入物が青白く透けて見えてしまうことがあります。これをチンダル現象と呼びます。
また、注入量が均一でなかったり、皮膚の薄さに合わない硬さの製剤を選んだりすると、表面がボコボコと不自然な凹凸になってしまうこともあります。
膨らみすぎて不自然な涙袋になった
クマを改善しようとヒアルロン酸を注入しすぎた結果、目の下がパンパンに膨らんでしまい、不自然な「ナメクジ目」や巨大な涙袋のようになってしまうケースです。
特に笑った時に不自然さが際立ち、表情に違和感が生まれます。これは、医師のデザイン力や注入量の調整技術が不足している場合に起こりやすい失敗です。
しこりができてしまった
注入されたヒアルロン酸が周囲の組織にうまく馴染まず、硬いしこりとして残ってしまうことがあります。注入するヒアルロン酸製剤の種類や注入技術、体質などが関係していると考えられています。
触るとわかる程度のものから、見た目にも明らかにわかるものまで様々です。
効果が全く感じられなかった
期待していたほどの変化が見られず、効果を実感できないというケースもあります。
注入量が少なすぎた、注入箇所が適切でなかった、あるいはそもそもヒアルロン酸注入の適応ではないクマ(青クマや茶クマ)だった、などが原因として考えられます。
カウンセリングでの診断が不正確だった可能性もあります。
失敗例とその主な原因
| 失敗例 | 主な原因 | 回避のポイント |
|---|---|---|
| 凹凸・チンダル現象 | 注入層が浅い、注入量が不均一 | 解剖学を熟知した医師を選ぶ |
| 膨らみすぎ | 過剰な注入、デザインの不備 | 欲張らず自然な仕上がりを目指す |
| しこり | 製剤の不適合、注入技術の問題 | 適切な製剤を選ぶ |
| 効果がない | 注入量が少ない、適応外 | 正確な診断ができる医師に相談する |
なぜ失敗する?ヒアルロン酸注入で後悔する人の特徴
ヒアルロン酸注入で後悔する結果になってしまうのは、医師の技術力だけの問題ではありません。
施術を受ける側にも、失敗につながりやすい考え方や行動パターンがある場合があります。ご自身に当てはまるものがないか、一度確認してみてください。
価格の安さだけでクリニックを選んでしまう
ヒアルロン酸注入は自由診療のため、クリニックによって料金が大きく異なります。もちろん、費用を抑えたいという気持ちは誰にでもありますが、価格の安さだけを基準に選ぶのは危険です。
極端に安い料金を提示しているクリニックは、経験の浅い医師が担当したり、質の低いヒアルロン酸製剤を使用していたりする可能性があります。
適正な価格かしっかり見極めることが大切です。
医師との相談が不十分なまま施術を受ける
カウンセリングで自分の希望や不安を十分に伝えられなかったり、医師からの説明をよく理解しないまま施術に同意してしまったりすると、結果に対する満足度が低くなりがちです。
仕上がりのイメージが医師と共有できていないと、「こんなはずじゃなかった」というミスマッチが起こりやすくなります。
納得できるまで質問し、丁寧に応えてくれる医師を選びましょう。
- 料金の安さを最優先する
- カウンセリングを軽視する
- 過度な変化を期待しすぎる
一度に完璧を求めすぎる
長年悩んできたクマだからこそ、「一度の施術で完璧になくしたい」と強く望む気持ちは分かります。しかし、目の下の皮膚は非常にデリケートです。
一度に大量のヒアルロン酸を注入すると、膨らみすぎたり凹凸ができたりするリスクが高まります。
初回は少し物足りないくらいに留め、必要であれば追加で注入するなど、慎重に進めることが自然で美しい仕上がりにつながります。
失敗を避けるためのヒアルロン酸製剤の知識
ヒアルロン酸と一括りにいっても、実は様々なメーカーから多種多様な製剤が販売されています。それぞれ硬さや持続期間、特徴が異なり、注入する部位によって使い分けるのが一般的です。
目の下のクマ治療に適した製剤を選ぶことも、失敗を避ける上で非常に重要です。
目の下への注入に適したヒアルロン酸とは
目の下の皮膚は薄く、表情によってよく動く部位です。そのため、注入するヒアルロン酸は、柔らかく滑らかで、組織に馴染みやすいものが適しています。
硬すぎる製剤を使用すると、凹凸が目立ったり、表情が不自然になったりする原因になります。医師がどの製剤をなぜ選ぶのか、理由を説明してくれるクリニックは信頼できるでしょう。
製剤の種類と特徴
国内で承認されているものから、海外で広く使用されているものまで、様々な種類のヒアルロン酸製剤があります。
カウンセリングの際に、自分の目の下の状態に合わせてどの製剤を使用するのか、その特徴について説明を受けるとよいでしょう。
代表的なヒアルロン酸製剤
| 製剤シリーズ名 | 特徴 | 目の下への適性 |
|---|---|---|
| ジュビダームビスタ®︎ | 厚生労働省承認。滑らかで馴染みが良い。 | ボルベラXCなどがよく用いられる |
| レスチレン®︎ | 世界的に広く使用実績がある。 | リドなどが用いられることがある |
| ベロテロ®︎ | 皮膚との馴染みが良く、凹凸が出にくい。 | ソフトやバランスが適している |
安全性と持続期間について
ヒアルロン酸は時間とともに体内に吸収されていくため、効果は永久ではありません。一般的に、目の下に注入した場合の持続期間は半年から2年程度といわれています。
製剤の種類や注入量、個人の体質によって差があります。効果を維持するためには、定期的な再注入が必要です。
安全性については、アレルギー反応などのリスクは極めて低いとされていますが、ゼロではありません。
後悔しないためのクリニック・名医の選び方
ヒアルロン酸注入の成否は、担当する医師の技術力と経験に大きく左右されます。では、どうすれば信頼できる「名医」を見つけることができるのでしょうか。
ここでは、クリニックや医師を選ぶ際にチェックすべき重要なポイントを解説します。
カウンセリングの丁寧さを見極める
まず最も重要なのがカウンセリングです。あなたの悩みを親身に聞き、時間をかけて診察してくれるかを確認しましょう。
良い医師は、あなたの骨格や皮膚の状態を正確に診断し、ヒアルロン酸注入が本当に適しているのか、他の選択肢はないのかまで含めて提案してくれます。
メリットだけでなく、リスクや副作用、費用についてもしっかり説明してくれるかも重要な判断基準です。
医師の実績と症例写真を確認する
医師の経歴や資格、特に注入治療に関する経験が豊富かどうかを確認しましょう。
クリニックのウェブサイトやSNSで、目の下のクマ治療の症例写真が多数公開されているかは、その医師の実績を判断する良い材料になります。
その際、ご自身のクマの状態と似た症例を探し、仕上がりが自然で美しいか、好みに合うかどうかもチェックしてください。
- 解剖学的な知識が豊富
- 注入治療の経験年数が長い
- 美的センスが自分と合う
料金体系が明確であること
カウンセリングの際に、施術にかかる総額を明確に提示してくれるクリニックを選びましょう。
「ヒアルロン酸1本あたり〇〇円」という表示だけでなく、診察料や麻酔代など、追加でかかる費用がないかを確認することが大切です。
見積書を発行してくれ、持ち帰って検討する時間を与えてくれるクリニックは、患者の意思を尊重しているといえるでしょう。
クリニック選びのチェックポイント
| 項目 | 確認内容 | 重要度 |
|---|---|---|
| カウンセリング | 時間をかけて丁寧に悩みや希望を聞いてくれるか | 非常に高い |
| リスク説明 | 良い点だけでなく、デメリットやリスクも詳しく説明するか | 非常に高い |
| 医師の実績 | 症例写真が豊富で、経歴が明確か | 高い |
| 料金体系 | 見積もりが明確で、追加費用の説明があるか | 高い |
ヒアルロン酸注入の施術の流れとダウンタイム
実際に施術を受けると決めた後、どのような流れで進んでいくのか、また施術後にどのような症状が出る可能性があるのかを知っておくことで、安心して当日を迎えることができます。
ここでは、一般的な施術の流れとダウンタイムについて解説します。
当日の施術の流れ
クリニックに到着してから施術が完了するまでの大まかな流れは以下の通りです。多くのクリニックでは、施術前にメイクを落とす必要があります。
施術自体は10分から30分程度で終了することがほとんどです。
まず、最終的なデザインの確認を医師と行います。次に、痛みを軽減するために注入部位に麻酔クリームを塗布し、時間を置きます。麻酔が効いてきたら、いよいよヒアルロン酸を注入していきます。
極細の針や、先端の丸い針(マイクロカニューレ)などを使用して、慎重に注入を進めます。注入後は、形を整え、鏡で確認して終了となります。
ダウンタイム中の症状と期間
ヒアルロン酸注入は、ダウンタイムが短いことが特徴ですが、全く症状が出ないわけではありません。
個人差はありますが、施術後に起こりうる主な症状と、それらが落ち着くまでの期間の目安を知っておきましょう。
ダウンタイムの主な症状
| 症状 | 期間の目安 | 対処法 |
|---|---|---|
| 内出血 | 1〜2週間程度 | メイクでカバー可能 |
| 腫れ・むくみ | 2〜3日程度 | 時間とともに自然に引いていく |
| 痛み・違和感 | 数日〜1週間程度 | 通常は軽度で自然に治まる |
万が一の時のアフターフォロー体制
施術後に何か気になる症状が出た場合や、仕上がりに不安を感じた場合に、すぐに対応してくれるかどうかもクリニック選びの重要なポイントです。
検診の制度があるか、電話やメールで相談できる窓口があるかなど、アフターフォロー体制が整っているクリニックを選ぶと安心です。
ヒアルロン酸注入後の注意点とアフターケア
施術後の過ごし方によって、仕上がりの美しさやダウンタイムの長さに影響が出ることがあります。
きれいな状態を長持ちさせ、トラブルを防ぐために、施術後の注意点を守って過ごしましょう。
施術当日の過ごし方
施術当日は、血行が良くなるような行動は避けるのが基本です。長時間の入浴やサウナ、激しい運動、飲酒は控えましょう。
シャワーは当日から可能ですが、注入部位を強くこすったり、マッサージしたりしないように注意してください。メイクも当日から可能ですが、こちらも優しく行うように心がけましょう。
ダウンタイムを長引かせないために
内出血や腫れを悪化させないためには、施術後数日間は血行を促進する行為を避けることが大切です。
また、注入部位を触りすぎると、ヒアルロン酸が移動したり、感染の原因になったりする可能性もあります。必要以上に触らないように意識して過ごしてください。
きれいな状態を長持ちさせる秘訣
ヒアルロン酸は時間とともに吸収されますが、少しでも長持ちさせるためには、日々のケアも大切です。
紫外線対策や保湿をしっかり行い、肌の健康を保つことが、結果的に仕上がりの維持につながります。
また、エステのフェイシャルマッサージなど、顔に強い圧力をかける施術は、ヒアルロン酸の吸収を早めてしまう可能性があるため、受ける際には施術者にヒアルロン酸を注入していることを伝えるようにしましょう。
クマへのヒアルロン酸注入に関するよくある質問
- 痛みはありますか?
-
痛みの感じ方には個人差がありますが、施術前に麻酔クリームを使用したり、ヒアルロン酸製剤自体に麻酔成分が含まれていたりするため、強い痛みを感じることは少ないです。
チクッとした針の痛みや、注入中に押されるような感覚がある程度です。痛みが心配な方は、カウンセリングの際に医師に相談してください。
- 効果はどれくらい続きますか?
-
使用するヒアルロン酸の種類や注入量、個人の体質によって異なりますが、一般的には半年から2年程度持続します。ヒアルロン酸は徐々に体内に吸収されていくため、効果は永久ではありません。
効果を維持したい場合は、医師と相談の上、定期的に追加で注入することをお勧めします。
- 施術後、すぐに人に会えますか?
-
ダウンタイムがほとんどない治療のため、施術後すぐに日常生活に戻ることができます。内出血が出た場合でも、コンシーラーなどのメイクでカバーできる程度であることがほとんどです。
ただし、腫れや内出血の出方には個人差があるため、大切な予定の直前に施術を受けるのは避け、少し余裕を持ったスケジュールを組むとより安心です。
- もし仕上がりが気に入らなかったら、元に戻せますか?
-
はい、ヒアルロン酸注入の大きな利点の一つは、修正が可能であることです。「ヒアルロニダーゼ」という分解酵素を注射することで、注入したヒアルロン酸を溶かして元の状態に近づけることができます。
ただし、分解酵素の注射にもリスクは伴いますので、まずは注入してくれた医師に相談することが第一です。
参考文献
SIPERSTEIN, Robyn. Infraorbital hyaluronic acid filler: common aesthetic side effects with treatment and prevention options. In: Aesthetic Surgery Journal Open Forum. US: Oxford University Press, 2022. p. ojac001.
SNOZZI, Philippe; VAN LOGHEM, Jani AJ. Complication management following rejuvenation procedures with hyaluronic acid fillers—an algorithm-based approach. Plastic and Reconstructive Surgery–Global Open, 2018, 6.12: e2061.
PHILIPP‐DORMSTON, W. G., et al. Consensus statement on prevention and management of adverse effects following rejuvenation procedures with hyaluronic acid‐based fillers. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2017, 31.7: 1088-1095.
BAYTAROĞLU, Hilal Nalcı; HOŞAL, Melek Banu. Complications of Periorbital Cosmetic Hyaluronic Acid Filler Injections: A Major Review. Turkish Journal of Ophthalmology, 2025.
NIKOLIS, Andreas, et al. Safety of infraorbital hyaluronic acid injections: Outcomes of a meta‐analysis on prospective clinical trials. Journal of Cosmetic Dermatology, 2023, 22.9: 2382-2390.
WOODWARD, Julie, et al. Infraorbital hollow rejuvenation: considerations, complications, and the contributions of midface volumization. In: Aesthetic Surgery Journal Open Forum. US: Oxford University Press, 2023. p. ojad016.
ORANGES, Carlo M., et al. Complications of nonpermanent facial fillers: a systematic review. Plastic and Reconstructive Surgery–Global Open, 2021, 9.10: e3851.
SIPERSTEIN, Robyn; CHO, Younghoon; HICKS, Jessica. Long-term 23-year Global Post-marketing Safety Surveillance Review of Delayed Complications with a Supportive Hyaluronic Acid Filler for Infraorbital Hollow Rejuvenation. The Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 2024, 17.7: 50.
MUSTAK, Hamzah; FIASCHETTI, Danica; GOLDBERG, Robert Alan. Filling the periorbital hollows with hyaluronic acid gel: long‐term review of outcomes and complications. Journal of cosmetic Dermatology, 2018, 17.4: 611-616.
HALL, Michael B.; ROY, Sudeep; BUCKINGHAM, Edward D. Novel use of a volumizing hyaluronic acid filler for treatment of infraorbital hollows. JAMA Facial Plastic Surgery, 2018, 20.5: 367-372.

