ニキビが治ったあとに残る「赤み」、「茶色い色素沈着」、「ざらつき」などのニキビ跡は、セルフケアではなかなか改善しにくい肌トラブルのひとつです。
このような悩みに対して、皮膚の生まれ変わりを促すケミカルピーリングは、比較的手軽に受けられる治療として人気があります。
ピーリングというと「皮をむく」「刺激が強い」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、近年では薬剤や濃度の選択が豊富になり、肌質やニキビ跡のタイプに合わせて安全に施術できるようになっています。
特に、赤みや色素沈着など浅い層のニキビ跡には、ターンオーバーを促進するケミカルピーリングが効果的です。この記事では、ケミカルピーリングの仕組みや効果の出るニキビ跡の種類、施術頻度、注意点、他治療との組み合わせまで詳しく解説します。
「どのくらいで効果が出るの?」「敏感肌でも受けられる?」といった疑問を解消しながら、あなたに合ったニキビ跡ケアの選び方を見つけていきましょう。
1.ケミカルピーリングとは?
ケミカルピーリングとは、酸性の薬剤を肌に塗布して古い角質や老廃物を除去し、皮膚の再生を促す治療法です。
肌表面の不要な角質を取り除くことで、毛穴詰まりや皮脂バランスの乱れを改善し、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)を正常化します。
そもそも、健康な肌は約28日周期で新しい細胞に生まれ変わります。
しかし、ニキビや炎症を繰り返した肌はターンオーバーが乱れやすく、古い角質が残って毛穴をふさいだり、メラニンが排出されずに色素沈着を引き起こしたりします。
ケミカルピーリングはこのサイクルを整えることで、ニキビの再発防止と跡の改善を同時にサポートできるのが大きな特徴です。
また、施術直後から肌のツヤ・なめらかさ・透明感のアップを感じやすく、化粧ノリの改善や毛穴の引き締めといった美容的なメリットもあります。
近年では、「角質除去=刺激が強い」というイメージを覆す、マイルドなピーリング剤(サリチル酸マクロゴールなど)が主流になっており、敏感肌や乾燥肌の方でも安全に行えるようになっています。
さらに、ピーリング後に美容成分を浸透させる治療(イオン導入・エレクトロポレーションなど)を組み合わせることで、赤みや色素沈着をより効果的にケアすることもできます。

2.ケミカルピーリングが効果的なニキビ跡のタイプ
注意が必要なのが、ケミカルピーリングがすべてのニキビ跡に同じように効果があるというわけではありません。
効果が高いのは、表皮にとどまる比較的浅いタイプのニキビ跡で、主に赤みや色素沈着、ざらつき、毛穴の開きなどに適しています。
まず、赤み(炎症後紅斑)タイプのニキビ跡は、炎症によって拡張した毛細血管が透けて見えている状態です。
ピーリングによって古い角質を除去し、肌の代謝を促すことで血行が整い、赤みが徐々に薄くなる効果が期待できます。
次に、茶色い色素沈着タイプのニキビ跡にも有効です。
ニキビの炎症が落ち着いたあとに、メラニンが肌の表面に残ることで茶色く見えるこのタイプは、ターンオーバーを正常化してメラニンを排出するケミカルピーリングとの相性が良いとされています。
特にビタミンC誘導体やトラネキサム酸などの導入治療を併用することで、透明感のある肌色へ整えることができます。
一方、凹凸(クレーター)型のニキビ跡は、真皮層のコラーゲンが破壊されてできるため、作用が穏やかなピーリングだけでは十分な改善が難しいとされています。
この場合は、ダーマペンやフラクショナルレーザー、サブシジョンなど真皮層の再生を促す治療を組み合わせることで、より高い効果を得られます。つまり、ケミカルピーリングは「肌の表面のトラブルを整える治療」であり、浅い層にあるニキビ跡ほど効果が出やすいというのが特徴です。
自分のニキビ跡がどのタイプに当てはまるかを医師に正確に判断してもらい、最適な治療を選ぶことが重要です。
3.ケミカルピーリングで使用される薬剤と作用の違い
ケミカルピーリングに使用される薬剤にはさまざまな種類があり、それぞれ角質除去の深さ・刺激の強さ・得られる効果が異なります。
肌質やニキビ跡のタイプに合わせて薬剤を選ぶことで、安全に高い効果を引き出すことができます。
ここでは、代表的な4種類の薬剤とその特徴を解説します。
サリチル酸マクロゴール
現在、美容皮膚科で最も一般的に使用されている薬剤がサリチル酸マクロゴールです。
サリチル酸(BHA)をマクロゴール(ポリエチレングリコール)という基材で緩やかに作用させることで、表皮のみに選択的に働き、真皮への刺激を抑えた安全性の高いピーリングが可能です。
余分な角質をやさしく除去し、毛穴の詰まりや皮脂バランスを改善する作用があります。
赤みや色素沈着などの浅いニキビ跡、ざらつきのある肌質改善に効果的で、敏感肌や乾燥肌の方にも適応しやすいのが特徴です。施術後はすぐにメイクができ、強い皮むけやかさぶたができることもほとんどありません。
ダウンタイムが短く、継続しやすい治療として人気があります。
グリコール酸
グリコール酸は、AHA(アルファヒドロキシ酸)の一種で、角質除去力が高く、ターンオーバーを活性化させる効果に優れています。
分子が小さいため、肌の奥まで浸透しやすく、色素沈着やくすみの改善、毛穴の黒ずみ除去に適しています。一方で、敏感肌の方には刺激を感じやすい場合もあるため、濃度や放置時間の調整が重要です。
赤みやピリピリ感が一時的に出ることがありますが、医師が肌状態に合わせてコントロールすれば、高い美白・美肌効果が得られます。
乳酸
乳酸は、グリコール酸と同じAHAの一種ですが、分子が大きく肌への刺激がより穏やかなのが特徴です。
角質除去に加えて保湿効果もあり、乾燥肌・敏感肌の方やピーリング初心者に向いています。肌のキメを整え、やわらかくなめらかな質感をもたらすため、肌のごわつきやくすみの改善、全体のトーンアップにも効果的です。
サリチル酸マクロゴールと組み合わせて使うことで、より自然な角質ケアが可能になります。
TCAピーリング
TCA(トリクロロ酢酸)ピーリングは、真皮層にまで作用する中層から深層へ作用するピーリングで、クレーター状の凹みや重度の色素沈着に使われます。
細胞再生を強く刺激してコラーゲン生成を促すため、肌のリサーフェシング(再生)効果が非常に高く、特にアイスピック型のクレーターに効果があるのが特徴です。
ただし、その分ダウンタイムが長く、施術後に赤みやかさぶたができることがあります。
医師の管理下で部分的に行うことで、凹凸の改善や肌質のリニューアルに優れた効果を発揮します。このように、ピーリング剤にはそれぞれ得意分野があります。
浅い赤みや色素沈着にはサリチル酸マクロゴールや乳酸、やや深いニキビ跡やくすみにはグリコール酸、アイスピック型の凹みにはTCAピーリングなど、目的と肌状態に合わせた選択が鍵となります。
4.ニキビ跡に対するケミカルピーリングの施術頻度と他治療との併用について
ケミカルピーリングは、1回で劇的に変化する治療ではなく、継続することで少しずつ肌を整えていく治療です。
ターンオーバーの周期や肌の再生速度に合わせて定期的に行うことで、ニキビ跡や色素沈着が徐々に薄くなっていきます。
一般的には、初期は2週間から4週間おきに1回の施術を5回ほど繰り返すのが目安です。肌の状態が整ってきた後は、1か月に1回ほどの頻度で施術を受けることで、美しい肌を維持しやすくなります。
特にサリチル酸マクロゴールや乳酸などのマイルドな薬剤は、刺激を抑えながら継続的に角質を整えることができるため、定期的なメンテナンスに向いています。
赤みや軽い色素沈着であれば、3回前後で肌のトーンやなめらかさに変化が見られることが多く、5回程度を終えるころには全体的な明るさや透明感の向上が期待できます。一方、凹凸があるニキビ跡の場合は、ピーリング単独では改善が難しいため、他の治療と組み合わせることが効果的です。
例えば、
・表皮のターンオーバーを整えるピーリングに加えて、真皮層を刺激するダーマペンやフラクショナルレーザーを併用する
・炎症を抑えたい場合には、トラネキサム酸・ビタミンC誘導体のイオン導入を同日に行う
・毛穴の開きや皮脂が多い場合には、光治療(IPL)を組み合わせる
といった形で、肌状態に合わせて複数のアプローチを行うことで、より早く・均一に肌質を改善することができます。また、ニキビを繰り返す方にとっては、ピーリングを継続することで毛穴の詰まりにくい肌質へ導き、再発予防にもつながるという長期的なメリットもあります。
このように、ケミカルピーリングは定期的に行うこと・他治療と組み合わせることの2点が、最も効果を引き出すためのポイントです。
施術の間隔や組み合わせ治療は、肌質・症状・季節によっても異なるため、医師の診察を受けながら最適なプランを立てるようにしましょう。
5.施術後の注意点とリスク
ケミカルピーリングは比較的安全な治療ですが、施術直後の肌は一時的に敏感な状態になっています。
適切なアフターケアを行わないと、赤みや乾燥、刺激感などのトラブルが起きることがあります。
ここでは、ピーリング後に特に注意したい3つのポイントを解説します。
当日は強い摩擦や長時間の入浴を避ける
施術後の肌は角質が薄くなり、バリア機能が一時的に低下しています。
当日は、強い摩擦を加える洗顔やクレンジング、マッサージ、長時間の入浴やサウナなどは避け、しっかりと保湿と紫外線ケアを行いましょう。
紫外線対策を徹底する(UVケア・帽子)
ピーリング後の肌は紫外線の影響を受けやすく、色素沈着が起こりやすい状態です。
外出時は日焼け止めを必ず使用し、帽子や日傘で物理的にも紫外線をカットするようにしましょう。
日焼け止めは、日常生活を送るうえで最低SPF30、PA++以上のものがおすすめです。
ただし、強くこすりながら塗ると刺激になるため、指先で軽く押さえるように塗布します。
また、汗や皮脂で落ちやすいため、2時間から3時間おきに塗り直すことで紫外線からしっかり守ることができます。紫外線ケアを怠ると、せっかくピーリングで整えた肌に再び炎症や色素沈着が起こる可能性があるため、日常的にUV対策の習慣づけることが重要です。
保湿を十分に行い、乾燥を防ぐ
ケミカルピーリングの翌日以降は、肌のつっぱり感や乾燥を感じることがあります。
これは、古い角質が除去されたことで一時的に水分を保持しにくい状態になっているためです。
化粧水・乳液・クリームを使って、しっかりと保湿することが回復を早めるポイントになります。
特にセラミド・ヒアルロン酸・グリセリンなどの保湿成分を含むスキンケアがおすすめです。
ピーリング後の肌は美容成分の吸収率が高まっているため、保湿を丁寧に行うことで、バリア機能の回復と肌質の底上げにつながります。また、かさぶたができることがありますが、無理に剥がさず自然に剥がれるのを待つことが大切です。
剥がすと炎症や色素沈着の原因になるため注意しましょう。ケミカルピーリング後の肌は、外部刺激に対してとてもデリケートです。
「触らない・擦らない・紫外線にあたりすぎない」を意識して過ごすことで、より安全に、理想的な効果を得ることができます。
6.ケミカルピーリングに関するよくある質問
ケミカルピーリングは、美容皮膚科の中でも人気の高い治療ですが、「痛み」「ダウンタイム」「効果の出方」などについて不安を感じる方も多いものです。
ここでは、患者様からよく寄せられる質問に医師の立場からお答えします。
Q.施術は痛いですか?
薬剤を塗布した際に、ピリピリ・チリチリとした軽い刺激を感じることがあります。
ただし、多くの場合は数分で落ち着く程度で、我慢できないほどの痛みではありません。
特にサリチル酸マクロゴールや乳酸ピーリングは刺激が少なく、敏感肌の方でも安心して受けやすいように調整ができます。もし痛みや熱感が強い場合は、すぐに薬剤を拭き取ることで症状はおさまります。
医師が肌の状態を確認しながら施術を行うため、無理な刺激を与えることは基本的にありません。
Q.メイクや洗顔はいつから可能ですか?
施術当日は肌が敏感な状態のため、洗顔・メイク・クレンジングは避けるのが基本です。
翌日からは刺激の少ない洗顔料で優しく洗い、メイクも再開できます。ただし、かさぶたができている部分をこすったり、メイクで強く覆うのは避けましょう。
保湿をしっかり行い、肌が落ち着いてから徐々に通常のスキンケアに戻すのが理想です。
Q.どのくらいの期間で効果が出ますか?
赤みや色素沈着など浅いニキビ跡の場合は、3回から5回の施術で少しずつ肌のトーンアップを実感できることが多いです。
1回でもツヤやなめらかさが出る方もいますが、肌のターンオーバーを安定させるためには、2週間から4週間おきに複数回継続することが大切です。凹みや長年の色素沈着がある場合は、半年から1年ほど時間をかけて改善を目指すケースもあります。
継続的なケアを行うことで、肌質そのものが変わり、ニキビの再発予防にもつながります。
Q.どんな人でも受けられますか?
ほとんどの方が受けられますが、炎症中のニキビが多い場合や、皮膚が強く乾燥・敏感な状態のときは一時的に施術を控えていただくことがあります。
また、アトピー性皮膚炎や日焼け直後の肌も、炎症が悪化するリスクがあるため注意が必要です。事前に医師が肌の状態を確認し、薬剤の種類や濃度を調整することで安全に施術可能です。
不安がある場合は、まずテスト施術を行い、肌の反応を見ながら進めると安心です。
Q.クレーターにも効果はありますか?
ケミカルピーリングは、表皮の代謝を促進する治療のため、軽度の凹みやざらつきの改善には有効です。
ただし、真皮層までダメージが及んだ深いクレーターには単独では効果が限定的です。
その場合は、ダーマペンやフラクショナルレーザー、サブシジョンといった再生治療を組み合わせることで、より高い改善効果が得られます。
医師と相談しながら、肌の状態に合わせた併用治療を検討しましょう。
ケミカルピーリングは、正しい頻度とケアを守れば肌質改善からニキビ跡の軽減まで幅広く効果を発揮します。
疑問や不安がある場合は、カウンセリング時に遠慮なく相談し、最適な治療プランを立てることが大切です。
7.まとめ
ケミカルピーリングは、ニキビ跡の赤み・色素沈着・ざらつきなどの浅い肌トラブルに効果的な治療です。
薬剤の力で古い角質を取り除き、肌のターンオーバーを整えることで、新しい皮膚の再生を促しながら透明感のあるなめらかな肌へ導きます。
特に、サリチル酸マクロゴールや乳酸ピーリングは低刺激で、敏感肌でも受けやすい安全性の高い施術として人気があります。
定期的に続けることで、毛穴詰まりの改善や皮脂バランスの正常化、ニキビの再発予防にもつながります。
一方で、真皮層にまでダメージが及んだ深いクレーター状のニキビ跡には、ピーリング単独では十分な効果を得にくいことがあります。
その場合は、ダーマペンやフラクショナルレーザー、リジュランなどの再生治療を組み合わせることで、肌の奥からの再構築をサポートできます。
施術後は、「こすらない・焼かない(紫外線)・乾かさない」を意識し、保湿と紫外線対策を徹底することが最も重要です。
正しいアフターケアを行うことで、ピーリングの効果を最大限に引き出し、トラブルを防ぐことができます。ケミカルピーリングは、医師のもとで肌質に合った薬剤を選び、適切な頻度とケアを守ることで安心して続けられるニキビ跡治療です。
「赤みが引かない」「肌のくすみをどうにかしたい」と感じたら、一度専門の美容皮膚科で相談してみましょう。
肌のターンオーバーを味方につけて、明るく健やかな肌を目指す第一歩になります。
ケミカルピーリングについてのご相談はMiSA CLINIC六本木本院で!カウンセリングのご予約はこちらから
