繰り返すニキビが落ち着いたあとに、「赤みがずっと引かない」、「茶色いシミのような跡が残った」、「皮膚がへこんでしまった」など、ニキビ跡に悩む方は少なくありません。特に、時間が経っても改善しない「ひどいニキビ跡」は、スキンケアや市販薬だけでは改善しにくい場合があります。この記事では、ニキビ跡の種類別の原因と特徴、治療に使われる薬の種類、美容医療で行われる最新の改善法について詳しく解説します。
自分のニキビ跡がどのタイプかを理解し、適切なケアと治療法を選ぶことが、なめらかで明るい肌を取り戻す第一歩です。
1.ニキビ跡とは？どんな状態をいうの？
ニキビ跡とは、ニキビが治ったあとも肌に赤み・色素沈着・凹み・盛り上がりなどの跡が残ってしまった状態を指します。
炎症を起こしたニキビが治る過程で、皮膚の構造が部分的に損傷したり、メラニンが過剰に生成されたりすることで起こります。
軽度のニキビ跡は、肌のターンオーバー（新陳代謝）によって時間とともに薄くなることもありますが、真皮層にまでダメージが及んだ場合は自然治癒が難しく、長期間残ることも少なくありません。
ニキビ跡は、単に見た目の問題だけではなく、肌の質感やキメの乱れ、毛穴の開き、メイクのりの悪さなどにも影響を及ぼします。
また、放置すると色素沈着が濃くなったり、紫外線によって悪化することもあるため、早めのケアと正しい治療選択を心がけましょう。肌の状態やニキビ跡の残り方によって適した治療法が異なるため、まずは「自分のニキビ跡がどのタイプなのか」を知ることが改善への第一歩となります。
2.ニキビ跡の種類とできる原因
一口に「ニキビ跡」といっても、赤み・茶色・凹み・盛り上がりなど、その現れ方はさまざまです。
それぞれのニキビ跡は、皮膚がダメージを受ける層や炎症の度合いによって発生のメカニズムが異なります。
自分のニキビ跡のタイプを知ることで、適切なケア方法や治療法を選びやすくなります。
赤みや炎症が残るタイプ（炎症後紅斑）
ニキビが治ったあとに、赤みだけが長く残るタイプです。
これは、炎症によって毛細血管が拡張したり、肌の内部に炎症物質が残っていることが原因です。
肌の表面ではなく、真皮層に近い部分で血管が拡張しているため、スキンケア単独では改善が難しいことがあります。時間の経過とともに薄くなることもありますが、紫外線や摩擦などの刺激で悪化することがあり、色素レーザー（Vビーム）やIPL（光治療）などでの改善が効果が期待できます。
メラニンが沈着して茶色く見えるタイプ（色素沈着）
ニキビの炎症によってメラノサイト（色素細胞）が刺激され、メラニンが過剰に生成されて沈着した状態です。
シミのように見えるため、ニキビが治ったあとでも色が残って気になるケースが多く見られます。紫外線を浴びることでさらに色素が濃くなりやすいため、日焼け止めを毎日使用することが重要です。
また、美白成分（ビタミンC誘導体・ハイドロキノン・トラネキサム酸など）を含むスキンケアや、レーザートーニング（低出力レーザー照射）によるメラニン排出が有効です。
皮膚がへこんだクレーター状凹みのタイプ（萎縮性瘢跡）
炎症が真皮層まで及び、コラーゲンやエラスチンなどの組織が破壊された結果、皮膚が陥没（かんぼつ）した状態です。
炎症を繰り返したり、ニキビを無理につぶしたりすると、真皮層が損傷し、自然には再生しにくい「クレーター」が形成されます。セルフケアでの改善は限られやすく、サブシジョン・フラクショナルレーザー・ダーマペンなどの組織の再生を促す治療が検討されます。
時間をかけてコラーゲンを再構築することで、肌の凹凸が徐々に滑らかになっていきます。
盛り上がったしこり状・ケロイドタイプ
炎症が強く、治癒の過程で過剰にコラーゲンが生成された結果、皮膚が盛り上がった状態です。
特にあご・背中・胸など皮脂腺が多く、摩擦が起こりやすい部位にできやすい傾向があります。このタイプは放置すると硬くなり、かゆみや痛みを伴うこともあります。
ステロイド注射や外用薬で炎症を抑え、再発を防ぐためには継続的なケアが重要です。
3.ニキビ跡に使われる薬の種類と特徴
ニキビ跡の改善には、肌の状態に合わせた外用薬や内服薬による治療が行われます。
薬の種類によって作用の仕方が異なり、赤み・色素沈着・凹みなど、目的に応じて使い分けられます。
ここでは、代表的な薬剤とその特徴を紹介します。
ビタミンC誘導体やハイドロキノン：色素沈着の改善に
ニキビ跡の茶色い色素沈着には、メラニン生成を抑える美白成分が有効です。
ビタミンC誘導体は、メラニンを還元して肌を明るく整えると同時に、皮脂の分泌を抑え、炎症を防ぐ働きもあります。
ハイドロキノンは強い美白作用があるとされる成分で、皮膚科では濃度や使用期間を医師が調整して処方します。ただし、刺激を感じやすい成分のため、敏感肌や乾燥肌の方はパッチテストを行ってから使用することが推奨されます。
ヘパリン類似物質：赤みや炎症後の乾燥を和らげる
赤みや炎症が残るタイプのニキビ跡には、保湿と血行促進作用を持つヘパリン類似物質が効果的です。
この成分は、乾燥して硬くなった皮膚をやわらげ、肌の修復をサポートする働きがあります。
また、皮膚のターンオーバーを整えることで、赤みや炎症後の肌ダメージの回復を助けます。
トレチノイン・アダパレン：ターンオーバーを促して肌再生をサポート
トレチノインやアダパレンは、ビタミンA（レチノイド）誘導体の外用薬で、皮膚の新陳代謝を促進し、表皮の再生を活発にする作用があります。
古い角質を剥がし、新しい皮膚細胞の生成を促すことで、色素沈着や軽度の凹凸を改善します。また、毛穴詰まりを防ぎ、ニキビの再発予防にも効果があります。
使用初期には一時的に乾燥や皮むけが起こることがありますが、これは「レチノイド反応」と呼ばれる一時的なもので、医師の指導のもとで継続すれば肌の再生力が高まります。
内服薬（ビタミンB群・L-システインなど）：体の内側から肌代謝を整える
外用薬だけでなく、体の内側から肌の再生をサポートする内服薬も効果的です。
ビタミンB群は皮脂の分泌をコントロールし、L-システインやビタミンCはメラニンの生成を抑えて色素沈着を防ぎます。
また、抗酸化作用によって炎症を抑え、肌のターンオーバーを正常化する働きもあります。
サプリメントとして市販されているものもありますが、皮膚科での処方では医療レベルの有効成分が配合されており、より確実な効果が期待できます。
皮膚科で処方される内服薬には以下のようなものがあります。
・シナール配合錠（ビタミンC＋パントテン酸）
色素沈着の改善や炎症抑制を目的とし、ニキビ跡の赤み・茶色い跡のケアに使用されます。
・トラネキサム酸錠
メラニン生成を抑える作用があり、色素沈着や肝斑の改善をサポートします。
・ハイチオール（L-システイン＋ビタミンC）
肌の代謝を促進してターンオーバーを整え、黒ずみやくすみの軽減に効果があります。
・ビフロキシン配合剤・ピドキサールなど（ビタミンB群製剤）
皮脂バランスを整え、ニキビの再発や炎症の悪化を防ぐために用いられます。
医師は患者さんの肌の状態をみて処方するため、よりひとりひとりに合った薬で、ニキビ跡を治しやすくすることができます。
4.ニキビ跡用の市販薬と皮膚科で処方される薬の違い
ニキビ跡の改善を目指す際、「市販薬で治るのか、それとも皮膚科を受診した方がよいのか」と迷う方は多いでしょう。
両者には成分濃度・効果の持続性・安全性の管理体制などに大きな違いがあります。
市販薬は、誰でも購入できるように刺激が少なく、作用が穏やかに作られています。
軽い赤みや色素沈着など、初期のニキビ跡であれば市販薬でも一定の効果が得られることがあります。
ただし、真皮層にまでダメージが及んだクレーター状の凹みや、長期間残る色素沈着に対しては、セルフケアだけでは限界があります。
一方、皮膚科で処方される薬は、医師が肌状態を診断したうえで、有効成分の濃度や使用量を調整できるのが大きなメリットです。
たとえば、ハイドロキノンやトレチノインなどの成分は、効果が高い反面、使い方を誤ると刺激や炎症を起こすおそれがありますが、医師の指導のもとで使用すれば、安全かつ効率的に肌再生を促せます。
また、皮膚科では外用薬と内服薬を組み合わせたり、ビタミン注射・ピーリング・レーザー治療などの医療的アプローチも併用できるため、より根本的な改善を目指すことが可能です。市販薬は「軽度なニキビ跡のホームケア」に、皮膚科治療は「中度から重度の跡を根本改善したい場合」に向いています。
症状が長引いたり、同じ場所に繰り返しニキビができる場合は、早めに医師へ相談することが治りを早める近道です。
5.美容クリニックで行うニキビ跡治療
ひどいニキビ跡は、皮膚の奥である真皮層が損傷している状態のため、外用薬や市販のスキンケアだけでは十分に改善できません。
そのような場合には、再生医療やレーザー治療など、美容皮膚科で行う医療的アプローチが有効です。
ここでは、実際にニキビ跡の改善に用いられる代表的な治療法を紹介します。
サブシジョン
サブシジョンとは、皮膚の下でクレーター状の凹みを引き込んでいる線維（癒着）を、特殊な針で切り離す治療です。
癒着を解除することで皮膚が自然に持ち上がり、肌表面の凹凸を改善します。施術後には軽い内出血や赤みが出ることがありますが、1週間から2週間ほどで落ち着きます。
サブシジョンは「クレータータイプのニキビ跡」に特に効果的で、肌の奥から物理的に修復を促す治療です。
その後にヒアルロン酸注入やリジュランなどの組織の再生を促す治療を組み合わせることで、コラーゲン生成を高め、より滑らかな肌へ導きます。
リジュラン注射
リジュランは、サーモン由来のポリヌクレオチド（PN）を主成分とする再生注射で、皮膚の自己修復力を高める治療法です。
炎症や損傷によって弱った真皮層を再生させ、肌のハリ・弾力を取り戻し、浅い凹みや赤みの改善が期待できます。また、ニキビ跡だけでなく、乾燥や毛穴の開きなどの肌質改善効果もあるため、全体的に肌の質を底上げしたい方にもおすすめです。
施術後は軽い赤みやチクチク感が出ることがありますが、2日から3日で落ち着き、ダウンタイムも比較的短いのが特徴です。
ダーマペン・ピーリング治療
ダーマペンは、極細の針で皮膚に微細な穴を開け、自然治癒力によってコラーゲンの生成を促す治療です。
ニキビ跡の凹みだけでなく、肌全体のキメや毛穴の引き締めにも効果的です。
また、施術時にリジュランやスネコスなどの薬剤を導入すると、肌の再生効果をより高めることができます。
ケミカルピーリングは、酸の力で古い角質を取り除き、肌のターンオーバーを整える施術です。
色素沈着や赤みなど、浅い層のニキビ跡の改善に適しています。
数回の施術を重ねることで、肌のトーンが均一になり、滑らかな質感を取り戻すことができます。
美容クリニックでの治療は、肌の状態に合わせて複数の施術を組み合わせることで最大の効果を発揮します。
外用では届きにくい層へアプローチし、長年悩んできたニキビ跡も少しずつ改善が期待できます。
6.ニキビ跡を治す自宅でできるケアと注意点
ニキビ跡の治療には時間がかかりますが、日常のスキンケアや生活習慣を整えることで、肌の回復力を高め、治療効果を持続させることが可能です。
ここでは、自宅でできる基本的なケアと注意すべきポイントを紹介します。
1.洗顔はやさしく短時間で行う
洗顔時にゴシゴシとこすったり、熱いお湯を使ったりすると、肌のバリア機能が低下し、炎症や乾燥が悪化します。
洗顔料は泡立ててから、やさしく包み込むように洗うのがポイントです。
時間をかけすぎず、30秒から1分程度で洗い流すのが理想的です。
2.化粧水・美容液でしっかり保湿する
ニキビ跡の赤みや色素沈着は、乾燥によってターンオーバーが乱れることで長引くことがあります。
洗顔後はすぐに化粧水で水分を補い、セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分を含む乳液やクリームでしっかりフタをしましょう。
特に治療後の肌は一時的に敏感になりやすいため、低刺激・無香料のスキンケア製品を選ぶことが大切です。
3.紫外線対策を毎日行う
紫外線は、炎症や色素沈着を悪化させる主な原因のひとつです。
季節や天候に関係なく、SPF30以上・PA+++以上の日焼け止めを毎日使用しましょう。
外出時だけでなく、窓から差し込む紫外線も影響するため、室内でもUVケアを習慣化することが重要です。
4.ビタミン・ミネラルを意識的に摂取する
肌の修復には、ビタミンC・ビタミンB群・亜鉛・鉄分などの栄養素が欠かせません。
野菜や果物、魚、豆類などをバランスよく摂取することで、肌の代謝を高め、ニキビ跡の回復をサポートします。
外食やコンビニ食が多い方は、サプリメントを併用するのも効果的です。
・ビタミンCは抗酸化作用が強く、炎症を抑えてニキビやニキビ跡の赤み・色素沈着を防ぎます。コラーゲン生成を促して肌の弾力を保つため、凹凸の目立ちにくいなめらかな肌づくりにも役立ちます。
・ビタミンB群は皮脂の分泌を整え、肌のターンオーバーを正常化する働きがあります。
特にビタミンB2・B6はニキビの再発予防や炎症の鎮静に関与し、肌荒れしにくい状態を保ちます。
・亜鉛は細胞の修復と新陳代謝をサポートし、ニキビ跡の治癒を早める栄養素です。
皮脂分泌をコントロールし、ホルモンバランスを整えることで、繰り返すニキビの抑制にも役立ちます。
・鉄分は血行を促進して肌細胞に酸素を届けることで、くすみや治りにくいニキビ跡を改善します。
特に女性は鉄欠乏になりやすく、慢性的な不足は肌の再生力やハリの低下につながるため注意が必要です。
それぞれ、自分に不足していると感じる栄養素を選び、サプリメントなどで補うとよいでしょう。
5.肌を刺激しない生活習慣を意識する
ニキビをつぶしたり、頻繁に触ったりする行為は炎症を悪化させ、クレーター状の凹み跡につながるリスクがあります。
また、枕カバーやタオルを清潔に保つことも大切です。
寝不足やストレスもホルモンバランスを乱す原因になるため、十分な睡眠とストレスコントロールを心がけましょう。
自宅ケアでは即効性はありませんが、肌の基礎体力を整えることが、治療効果を高める最も重要な土台になります。
日常的な習慣を少しずつ改善することで、肌のターンオーバーが整い、より健康でなめらかな肌へ導かれます。
7.まとめ
ニキビ跡は、炎症の度合いや皮膚のダメージの深さによって、赤み・茶色・凹み・盛り上がりなど、さまざまな形で残ります。
軽度のものであれば外用薬や内服薬によって改善を目指せますが、真皮層まで損傷しているひどいニキビ跡は、美容医療による組織の再生を促す治療が必要です。
サブシジョンやリジュラン注射、ダーマペン、ピーリングなどの治療は、肌の再生力を高めながら凹凸や色ムラを少しずつ改善するアプローチです。
治療を受ける際は、肌の状態をしっかり診断し、医師と相談のうえで複数の施術を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
また、自宅では保湿・紫外線対策・生活習慣の見直しを続けることが、治療効果を持続させ、再発を防ぐための基本です。
薬に頼るだけではなく、外側と内側の両面から肌を整える意識が大切です。ニキビ跡は一朝一夕に治るものではありませんが、適切なケアを積み重ねることで、徐々に変化を感じられるでしょう。
医療の力を上手に取り入れながら、自分の肌に合ったペースで無理なく続けることが、美しい肌を取り戻す近道です。
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